投稿者「京都 アカデメイア」のアーカイブ

映画『天気の子』:世界の不条理をどう受けとめるのか

現在公開中の新海誠監督『天気の子』が大ヒットしているそうです。このブログでは、前作の『君の名は。』(2016年)を取り上げましたが★1、今作も面白かったので、内容について考えてみたいと思います。

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千葉雅也『意味がない無意味』:この世界は無意味なのか?

「現実はなぜこのようなのか」「なぜ世界にはこのような不条理があるのか」

際立って深い悲嘆や喪失を経験したとき、私たちはこのような感情を抱く。この根源的な問いにたいして、人文学は何か手がかりを与えてくれるのだろうか。

現代思想界で注目されている議論、通称「思弁的実在論(SR)」の紹介者である著者は、世界が現にそうであることの理由、”意味”の渇望にたいして、あえて”無意味”、「意味のない無意味」をキーワードに考える。

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名著再見!#02 G・バタイユ『無頭人・アセファル』

「異端の哲学者」、「生と死とエロティシズムの思想家」として語られるバタイユ。その一方で、フランスの哲学者ミシェル・フーコーは、彼をして同時代のもっとも重要な思想家であると評する。

本書は、そんなバタイユが中心となって設立された、秘密結社「アセファル(ACEPHALE)」の同名機関紙の論文をまとめたものだ。雑誌には彼をはじめ、芸術家のアンドレ・マッソンやクロソフスキー、カイヨワらが参加。第1号から5号(1936年〜39年)まで刊行された。

 

アセファルとは何か?

アセファルとは、バタイユが幻視する怪物の名である。 それは両手に短刀と燃えさかる心臓を握りしめ、腹からは腸を露出している。そして最大の特徴は、頭がないこと(無頭=ア・セファル)である。

突如稲妻のように(独断的に?)導入された謎の巨人・アセファル。バタイユは、”これこそ真なる人間のイメージである”と語るのだが、それは一体、どういうことなのだろうか。

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名著再見!#01 G・ジンメル『愛の断想/日々の断想』

いいアイデアが出てこないとき、ふと断片的な文章がヒントになることがあります。

本書は、近代社会学の三巨人ウェーバー、デュルケムと並ぶ、ゲオルグ・ジンメルの遺稿集です。ほかの二人に比べて、ジンメルを一言で語るのはさらに難しいのですが、独特の鋭い感性をもった人だったことはたしかです。

ちなみに、邦題にある「断想」をgoogle翻訳にかけると、なぜか”Delusion”「妄想」と出てくるのですが、でも、あながち間違いでないのかもしれません。しかし、短めの格言調の文章には、独特の力強さがあります。

では、その一部を紹介します。

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話題の本がわかる! Vol.02 『ライフ・シフト』振り返り

6月29日、ゲストハウス・カンノコにて「話題の本がわかる! 」第2回を開催しました。

今回取り上げたのは、L・グラットン&A・スコット『ライフ・シフト』(東洋経済新報社、2016年)です。

本書は2016年の発売ながら、いまだベストセラーとして読まれ続けている話題の本です。先日話題になった、金融庁の「老後資金2000万円不足報告書」問題に象徴されるように、現行の制度は、長寿化の動向にまったく対応できていません。その意味で、わたしたちが「人生100年時代」の将来を考えることは、切実な課題なのだと思います。

本書の特徴は、100年ライフをたんにお金の問題だけで見てはいけないという主張です。たとえば、健康や人間関係、余暇時間といった「無形の資産」の重要性が、今後ますます増してくるといいます。

「無形の資産」とお金を生み出すには、時間の使い方がカギになります。余暇をたんなる暇つぶしとして浪費する(=レクリエーション)のではダメで、これからは人生が”マルチ・ステージ化”するので、リ・クリエーション、つまり、新しいスキルを身につける講座を受けたり、金融リテラシーを磨いたり、身体を鍛えたりする”自己投資”こそが求められるのだと。

イベントでは、ナビゲーターが本の内容を紹介し(ちょっと丁寧にやりすぎたかもしれませんが…)、そのつど参加者から質問やコメントをいただきました。

そのなかで出た意見として、「無形の資産」という見方は面白いが、結局は”いかに経済資産を築くのか”という話でしかないのでは、という手厳しいコメントもありました。

たしかに、現行の経済や社会の仕組みを前提に、もっぱら個人が必死に努力して生き残っていくという見立ては、どこか息苦しさも感じます。リ・クリエーション(再創造)とは、せいぜい所与の環境に働きかけるのであって、世界を一から創造するクリエーションではない、ということなのかもしれません。

ともあれ、経済学からみたライフ・プランとしてはとても面白いと思うので、未読の方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。


これまでのイベント
第1回 新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』

Text:Yoshio Okubo

話題の本がわかる! Vol.02 『ライフ・シフト』

〈話題の本がわかる!〉 Vol.02は、L・グラットン&A・スコット『ライフ・シフト』を取り上げます。

2016年の発売以来大きな反響を呼んでいる本書。「人生100年時代」とも呼ばれる長寿化が進む現代。その一方で、個人や社会もそれに対応する準備ができていないと警鐘を鳴らします。

これからの私たちの仕事や家庭、お金との関係はどうなるのか。新時代を生きるための必読書の一つでしょう。読もうと思って積んだままになっている方も、ぜひこの機会にご参加くださいませ。

日時:2019年6月29日(土)17時30分〜19時30分(予定)

場所:ゲストハウス・カンノコ(地下鉄北大路駅徒歩5分)

※参加無料・予約不要

〈話題の本がわかる!〉

「気になっていたけどまだ読んでいない」「読むの面倒くさいけど概要だけ知りたい」も安心してご参加ください。担当者による書籍内容の要約&ディスカッション形式で構成します。

本企画に関するお問い合わせ等については、お問い合わせフォームまたはkyotoacademeia□gmail.com(□に@を入れてください) までお尋ねください。

イベント「話題の本がわかる! 」振り返り

4月27日、ゲストハウス・カンノコにて「話題の本がわかる! 」第1回を開催しました。

今回取り上げたのは、新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社、2018年)。

イベントでは、舟木徹男(京都アカデメイア)が、図書の内容をまとめたレジュメをもとに解説し、後半、参加者を交えたディスカッション…という予定でしたが、冒頭から次々と疑問や意見が行き交い、会場は大変盛り上がりました。

とくに印象的だった議論に、そもそも「知能」とか「意味を理解する」というのは、どういうことなのかというものがありました。

ナビゲーター:舟木徹男

本書では、AI(人工知能)が苦手とする「読解力(意味の理解)」を鍛えることが、子どもたちの教育には必要だと主張される一方、イベントでは「大人でも読解力が十分あるとどこまで言い切れるのか」、読解力の背景には、「常識」、ある前提の共有(コモンセンス)があるのではないか、じつは「常識」と言われていること自体にも偏りや排除の問題があるのではないか、などの意見が出されました。

ヒトの知能についてはまだまだ未知の部分も多いといいますが、ひょっとすると、そこに、AIにできる仕事、できない仕事を見極めるヒントがあるのかもしれません。

ご参加いただいた皆さまには、ありがとうございました。

守田敏也さん講演「内部被曝からの命の守り方」動画公開

2018年5月12日(土)に左京西部いきいき市民活動センターで行われた守田敏也さん講演「内部被曝からの命の守り方」の動画を公開しました。

参加者が少ないのがもったいないと思うほどわかりやすくお話いただきましたので、よろしければご視聴ください。

それでは今後とも京都アカデメイアをよろしくお願いいたします。

【告知】 第6回 京アカゼミ「今こそ廣松渉を読み返す」開催!

京都アカデメイアの会員が、毎回、自身の研究テーマについて発表するイベント「京アカゼミ」。第6回は、「今こそ廣松渉を読み返す」。昨年『廣松渉の思想』を刊行された、渡辺恭彦さんが担当します。廣松渉の思想について易しくお話いただく予定です。関心ある方はどなたでもご参加ください。

[amazon_asin num=4622086816]

 

日時:2019年2月24日(日)15時〜17時

場所:京都市左京西部いきいき市民活動センター会議室4
※参加無料・予約不要

報告者紹介:渡辺恭彦(わたなべ やすひこ)
1983年生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。現在 奈良女子大学非常勤講師。思想史専攻。

書評:週刊読書人ウェブ(評者:小林 昌人)

本企画に関するお問い合わせ等については、お問い合わせフォームまたはkyotoacademeia□gmail.com(□に@を入れてください) までお尋ねください。

これまでの内容はこちら
第5回 ハンナ・アーレント入門/百木漠
第4回 アジールの現在と未来/舟木徹男
第3回 別れはなぜ在るのか:『別れの社会学』序説(あるいはその構想)/中森弘樹
第2回 精神分析から見る現代の知のあり方/浅野直樹
第1回 瀬木比呂志の裁判学:いわゆる「絶望の裁判所」論をめぐって/岡室悠介