【まとめ】第8回批評鍋『学力幻想』


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2014年最初の批評鍋では小玉重夫,『学力幻想』を取り上げました。
世間は入試シーズン真っ只中。教育にかかわるニュースや議論も多く聞かれます。他方、教育制度に関しては、グローバル化に対応することをめざして小学校での外国語教育が必修化されました。また、近年のいじめ問題を契機として、道徳や日本史の必修化が政府の方で議論されるなど、教育制度の改革の動きが高まっています。
ところで、教育とはそもそも何のために行なわれるのでしょうか。この疑問に対する最も単純な答えは「子どものため」というものでしょう。たしかに、学校教育は、読み書き計算など、社会生活で必要なの能力を学習する場です。しかし、それだけではなく、教育には社会の再生産や社会の革新などの複数の重要な機能があります。
では、なぜそこには光が当たりにくいのでしょう。著者は、いまの教育がある種の幻想(学力幻想)に包まれていると主張します。教育が子どものためにあるという発想もその一つだといいます。本書では学力幻想が作り出された歴史的な過程と思想的な背景を踏まえながら、その問題点と解決策を探っています。今回は、教育や教育支援の実践に関わっている船越と百木、浅野、大窪の4人で議論しました。

出演者:
船越克真
浅野直樹
百木 漠
大窪善人

話題一覧:
◯「ゆとり教育」とは何だったのか?
・戦後の教育論争。上から派(題解決型学習)vs下から派(体系型学習)
・そもそも「ゆとり教育」って何?
・ゆとり教育の狙いと誤解
・週休2日制は子どものためではなかった
・学力低下論背後には役所間の縄張り争いがあった
・脱ゆとり教育へ
・ゆとり/脱ゆとり教育に共通する前提
・ゆとり教育と教育格差
・教育における左翼的な傾向へのアレルギー
・教育にある複数の機能。社会の再生産と革新

◯幻想1 教育は子どものためにある
・教育の目的とは何か
・子供中心主義教育vs社会中心主義教育
・公教育の起源
・アーレントの教育論
・複数性と権威。アーレント思想の両義性
・日本社会での公教育の位置づけ―教育の公的支出の国際比較

◯幻想2 みんな頑張ればできる
・親が頑張れば子どもが育つ?
・メリトクラシーからペアレントクラシーへ
・教育格差論。文化資本論
・フランスや北欧で学校の宿題が出ない理由

◯教育と政治との関係
・学校に対する親や社会の過剰な期待とその背景
・公教育が直面する困難な問題
・学校外での社会の中での教育の可能性
・教育における「権威」の衰退と必要性
・「公共性」の意味の日本/西洋での捉え方の違い

【今回の鍋】
鱈と鰆の味噌鍋
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【参考資料】
公財政教育支出の対GDP比
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/siryo/__icsFiles/afieldfile/2012/11/07/1327455_5.pdf
(文部科学省,2012年)

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