ユヴァル・ノア・ハラリ『21世紀のための21のレッスン』

大窪善人

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あけまして おめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
 
一年のはじめには、少し大きな視点で捉えてみるのもいいかもしれません。

本書は『サピエンス全史』『ホモデウス』に続く、ハラリの最新作です。

前作までで人類誕生の歴史〜未来の歴史が描かれましたが、前作まで読んだ方は、「じゃあ、結局どうすればいいの?」と感じたのでしょうか? 今回はいよいよ現在の出来事が語られます。

現代を特徴づける要素、まず挙げられるのはテクノロジーの発展です。最近よく話題になる人工知能(AI)や情報技術、あるいは脳研究や生命工学の発達は、私たちの生活を大きく変えつつあります。
では、その変化は、社会全体や私たち一人ひとりの人生にとって、どのような”意味”があるのか? それはほんとうに幸福なことなのか? というのが著者の問いです。

 
21世紀の宗教

16世紀のイギリスの哲学者 フランシス・ベーコンは「知は力なり」という格言を残していますが、近代を特徴づけるのは、なんといっても科学・技術の発展でしょう。
それによって人類は、飛躍的な知識の拡大、富の生産、寿命の伸長を達成しました。

しかし、それは本当に人類を幸福にしたのでしょうか? むしろ、豊かな自然の中で精霊と対話していた原始人類、あるいは教会で祈りをささげる中世の人々の方が、一人ひとりの幸福感は高かったのではないか―。

近・現代の人類は、豊かな「意味」を放棄する代わりに「力」を手に入れました。これをハラリは「現代の契約」と呼びます。

かつて人類に「意味」を与えてくれるものは宗教でした。しかし、現代の問題(たとえば病気や老い)は、いまや技術的に解決可能な問題になりつつあります。
世俗化した社会では、神が人を作り出したのではなく、逆に、人が神を作り出したことが自覚されます(ちなみに、本書で挙げられる歴史的な例は、なんと日本の「国家神道」です(!))

ともあれ、今日では、神に問いかけるよりも、集計したビッグ・データを参照する方が役に立ちそうです。

 
MEDITATION

私たちの人生には意味はない、あるのは技術的な問題だけだ。そう言われると身も蓋もない気がします。
ところで、本書の最後が”MEDITATION”、つまり「瞑想」で締めくくられているのは、おもしろいことです。

著者は、学生時代に友人の紹介がきっかけで、ヴィパッサナー瞑想を始めたといいます。

これは、鼻腔を使った呼吸のコントロールを通じて、物事をあるがままに観察する訓練で、自己と世界との一体感を得るものです。
瞑想の効果については、すでに多くの研究蓄積がありますが、ハラリは、この訓練なしには『サピエンス全史』も『ホモ・デウス』も書かれなかっただろうと言います。

 
では、そこで彼が得た境地とは何だったのでしょうか。

彼は、最先端の自然科学の参照・利用が重要であると言います。しかし、その一方で、自然科学では解けない問題があることも見逃しません。

たとえば、私たちの傷みや愛情の感情は、科学的には、何十億もの神経細胞を、電流がどのような経路で流れるのかのパターンによって記述できます。

しかし、私たちが求めているのは、おそらくもっと別のことでしょう。つまり、自分自身の、この体験や行動が何なのかについて、もっと深く知りたいとも思っているはずです。

私たち自身をよりよく理解するのは、自然科学と、人類学や哲学などの”人文知”、両方のアプローチが同時に必要なのです。それは、ハラリの3冊の本すべてに貫かれたテーマでしょう。

翻訳はまだですが、非常におもしろい内容なので、ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。

 
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