書名:本当は結婚したくないのだ症候群 著者:北条かや 出版社:青春出版社 出版年:2016 |
著者の北条かやさんには、過去に京都アカデメイアのイベントで『キャバ嬢の社会学』と『整形した女は幸せになっているのか』を取り上げたときにご出演いただきました。この度新しく『本当は結婚したくないのだ症候群』が出版されたので紹介させていただきます。
28〜34歳までの東京在住の独身女性へのインタビューがメインです。職業などをできるだけバランスよく集めたかったとのことですが、比較的社会的地位の高い人たちが集まっている印象があります。
そして著者がインタビューをした結論は、一言で言うと、次の通りです。
ただ、独身女性たちを取材していて気づいたことがある。
彼女たちは、本当は結婚したくないのでは、ということだ。
本当の本当に、心から結婚したいのであれば、今すぐ動いているはず。
なのに、それをしない、できない。だったら、無理に結婚しなくてもいい、と言いたいのだ。
(p.203)
結婚したほうがよいと思う理由も、しないほうがよいと思う理由も、いろいろあるということです。そうだとすると、一人ひとりができることは、自分の中で大事なことをはっきりさせ、また相手の大事なことも把握して、よい関係を築くことです。本書はそのヒントになるかもしれません。
私にとって新鮮だったのは、東京オリンピックと結婚とが関連付けられていたことや、結婚していないことが女性のキャリアに悪影響を及ぼすと語られていたことです。結婚したくない理由のほうは、自分の時間を楽しみたいなど、想像の範囲内でした。
自分と相手の願望を把握できない結果としてのミスマッチは避けたいところです。本書にもミスマッチと思える例がいくつか見られます。
「バツイチNG、年収1000万円以上、身長180cm以上」という条件でフィルタリングした結果、一緒には暮らしたくないなという男性ばかりから申し込まれた松本さんや、自分は熱烈に結婚したいのに年下の医師である彼氏は逃げ腰だという温度差の激しい小林さんなどは、読んでいて少しつらくなります。
本当に結婚したいのであれば、年収や身長などの条件でフィルタリングしたり、医師で若くてかっこいい彼氏にこだわったりするのではなく、もっと別の人を探すべきでしょう(実際、松本さんは結婚相談書からただの飲み会にシフトして、普通の彼氏と出会えたそうです)。
本書の随所に登場する統計やキーワード説明、社会学的な理論、上野千鶴子さんや酒井順子さんがこれまでに主張してきたことなどもコンパクトにまとまっています。
評者は年齢こそインタビュー対象と同じであっても、関西在住の男性なので、共感するというよりもそういう価値観があるのかという目線で読みました。
(評者:浅野直樹)
更新:2016/02/19