京都アカデメイア

ホーム>>書評>>書評

山田昌弘著、
 『「婚活」現象の社会学―日本の配偶者選択のいま』

書評に戻る 修正 削除


書名:「婚活」現象の社会学―日本の配偶者選択のいま

著者:山田昌弘

出版社:東洋経済新報社

出版年:2010


 

2013年現在で結婚を学問的(社会学的)に考えるなら、山田昌弘『「婚活」現象の社会学―日本の配偶者選択のいま』を押さえておくべきでしょう。学問を別にしても、「婚活」に興味のある人ならおもしろく読めるはずです。

編著者の山田昌弘さんは「パラサイト・シングル」、「希望格差社会」、「婚活」といった言葉を流行させた学者です。そして何より結婚に関しては、1990年代から現在の状況を見通されていました(『結婚の社会学 未婚化・晩婚化はつづくのか』を参照)。その主張は本書に至るまで基本的に変わっていません。

その主張とは以下の通りです。

1.少子化の主たる原因は結婚の減少にある
2.結婚したくてもできないことが未婚化の原因である
3.未婚女性の多くが男性に経済力を求めている

これらのことは著者がデータに基づいて繰り返し主張してきたにもかかわらず、なかなか定着しなかったとのことです。

上記の主張に基づき次の2つのことを伝える意図を込めて『「婚活」時代』を世に出したと著者は言います。

1.待っていても理想的な結婚相手は現れないという現実
2.妻子を養って豊かな生活を送ることができる男性の激減という現実

しかし「婚活」という言葉がこの意図とは離れて、次のような誤解を生むようになったとまとめられます。

1.婚活=合コン、結婚情報サービス産業の勧めという誤解
2.婚活=高収入男性を早くゲットする勧めという誤解

ここまでが本書第1章「婚活」現象の裏側の内容です。

第2章若者の交際と結婚活動の実態―全国調査からの分析では、働き方と婚活との関係が分析されます。その結果は、正社員のほうが非正規雇用の人や無職の人と比べて婚活を多くしており、そして婚活をすれば一定の効果があるというものです。働き方と婚活意欲との関係にはジェンダー差があるようです。

第3章結婚仲人の語りから見た「婚活」では結婚仲人の語りが紹介されます。そこから出された結論は、見合い結婚では条件→恋愛感情、恋愛結婚では恋愛感情→条件という順序の違いこそあれ、条件と恋愛感情との両方が必要とされる点では同じであるという、興味深いものです。

第4章自治体による結婚支援事業の実態―そのメリットとデメリットでは、兵庫県の結婚支援事業を例にして、自治体による結婚支援事業の実態が詳しく記述されます。まず事実関係として、当初は民間結婚支援事業者が排除されていたのであるが、イベント運営を円滑にするために途中から関与するようになったということが挙げられます。その上で自治体による結婚支援事業のメリットは安心感と費用の安さ、デメリットは参加者の動機が様々でありきめ細かなサービスはなされないことであると述べられます。この裏返しが民間結婚支援事業者のメリットとデメリットになります。

第5章婚活ブームの2つの波―ロマンティック・ラブの終焉では、「婚活」の第1の波は適齢期の子どもを持つ親世代から始まり、第2の波は最初のほうで述べた本来の意図とは異なる婚活の普及であると、雑誌の分析から主張されます。

第6章誤解された「婚活」―婚活ブームを検証するでは、婚活ブームがいろいろな角度から検証されます。おもしろいキーワードを紹介するなら、「釣堀」婚より「価格.com」婚、不倫男性が恋愛市場から締め出される、といったところです。

第7章アメリカ社会から見た現代日本の「婚活」とコラム中国の婚活事情では、それぞれアメリカと中国の様子が紹介されます。アメリカでは「恋愛感情」を最優先して、中国では「経済生活」を最優先するとまとめることができます。

このように本書は現状の記述が大半を占めます。社会学の理論につなげるとすれば、ジグムント・バウマン、アンソニー・ギデンズ、ウルリヒ・ベックあたりが想起されます。

よくまとまっていてすらすらと読める反面、深さはあまり感じられませんでした。例えば、多くの人々が結婚したいと思っていることは前提とされてそれ以上考察されることがありませんし、事実婚や別居婚といった結婚のスタイルに焦点が当てられることもありません。
これは「婚活」という言葉そのものの限界だとも言えます。

(評者:浅野直樹)

更新:2013/12/03