西尾維新『猫物語(黒)』書評

浅野直樹

西尾維新『猫物語(黒)』の書評です。


猫物語

講談社(2010年09月10日)

同一人物の矛盾した面をいかに受け入れるかということがテーマになっています。忍野メメの以下の発言からそのことが窺えます。

「本当は真実とは違うけれど、あんまり身も蓋もないことをいうと救いが無さ過ぎるから、妖怪の所為ってことにしておこう――って感じの、責任転嫁さ。委員長ちゃんが、家庭のストレスに押し潰されて奇行に走った――なんて結論を出すよりは、怪異とか、障り猫とか、ブラック羽川とか、二重人格とか、そういう結論を出して、そういうことにしておく・・・・・・・・・・・のが一番、救われるだろう」(p.300)

阿良々木暦のHさんへの感情が欲求不満なのか恋愛なのかという問題も、阿良々木月火がツンなのかデレなのかという問題も、同一人物の矛盾した面だと考えることができます。

ツンデレということに関しては、小森健太朗『探偵小説の様相論理学』(南雲堂、2012)の225ページ以降の「モナドロギーからみた〈鈴宮ハルヒの消失〉――谷川流論」が興味深い考察を提供しています。「ツンデレ」をツン→デレという時間的変化だと捉える考え方と、ツン/デレが同居していると捉える考え方があり、前者は還元公理的であって、後者は様相論理的であると整理できます。

 

 

 

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