〈ヘブライズムからの政治哲学〉
政治哲学というとJ.ロールズとその後の諸論争が有名ですが、それに先立ってヨーロッパからの亡命知識人たちが展開した政治哲学も注目されています。H.アーレントやL.シュトラウスがその代表です。ただ、社会契約論などをもちいてモデル化されたロールズらの理論とくらべると、そうした議論には特有の理解しにくさがあります。ヨーロッパ世界に培われてきた分厚い歴史や伝統をバックグラウンドとしながらさまざまな哲学的論議が繰り広げられるため、読み手の側にも教養(culture, humanities)が求められるのです。したがって、テクストの精読にくわえて、その背景にある歴史的コンテクストへの感覚をも養い、それに裏打ちされた読解が必要となります。一朝一夕に身につくものではありませんが、まずはおおよその見取り図を確認しておくことが有益です。本ゼミでは、ヨーロッパ文明の二本柱というべきユダヤ・キリスト教の聖書的伝統(ヘブライズム)と古代ギリシア・ローマの伝統(ヘレニズム)に注目し、非専門書を輪読しながら特に前者についてその概観を試みます(後者については「社会思想史」「社会思想」「社会倫理学」「アーレントからの政治哲学入門」(市民講座)などで概説した内容の繰り返しとなります)。
参加者は、かならず輪読文献を購入するか借りるかして事前に該当範囲を読んできたうえで、自分なりに問いや批判的意見を用意してきてください。読みながら何か引っかかった部分、よくわからなかったが大切だと感じた部分などについて、考えたり調べたりして自分なりの理解や見解をしめすことが重要です。
※ 本講座は、京都アカデメイアHPの書評コーナーと連動した企画です。
輪読対象文献
・合田正人『入門 ユダヤ思想』(ちくま新書、2017年)、第1~4章。
・菊池章太『ユダヤ教 キリスト教 イスラーム』(ちくま新書、2013年)、第1~4章。
参考文献
・佐藤貴史『ドイツ・ユダヤ思想の光芒』(岩波現代全書、2015年)。
・田上雅憲『入門講義 キリスト教と政治』(慶応義塾大学出版会、2015年)。
・橋爪大三郎・大澤真幸『ふしぎなキリスト教』(講談社現代新書、2011年)。
・田島正樹『正義の哲学』(河出書房新社、2011年)。
・ジョン・グレイ(松野訳)『ユートピア政治の終焉』(岩波書店、2011年)。
・マルセル・ゴーシェ(伊達・藤田訳)『民主主義と宗教』(トランスビュー、2010年)。
日時: 2018年3月3日(土)17時30分~19時30分
場所: 京都大学東京オフィス(東京駅・新丸ビル10階)
定員: 8名
参加費: 1,000円程度を予定(軽食・場所代や資料コピー代のみ)
* 参加希望の方は、3月1日までにseizitetugakuseminar*gmail.com までご連絡ください(*を@に置き換える)。先着順となります。