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宮本輝『灯台からの響き』のなかの森鷗外『渋江抽斎』

6月1日(土)20時からのオンライン輪読会で読み始める森鷗外『渋江抽斎』が、
宮本輝『灯台からの響き』(集英社)という小説に出てくると知り読んでみました。

主人公(康平)が友人から薦められて読み始めるくだりでは、
「実在した渋江抽斎という江戸時代の学者の周りにいた人々の履歴や、どうでもよさそうなエピソードや、その係累のそれぞれの個性や特技などが事細かく描かれていて」
「退屈で、……何回その文庫本を放り出そうとしたかしれない」
「だが、最後の数ページにさしかかったときき、康平は、ひとりの人間が生まれてから死ぬまでには、これほど多くの他者の無償の愛情や労苦や運命までもが関わっているのかと……」
という紹介でした。

その他の箇所でも
「自分が知り得たものをありのままに書いたればこそ、優れて史伝文学となった」
「『渋江抽斎』のように調べに調べて書いたら……」
「『渋江抽斎』は、夥しい死というものの羅列と言ってもいいくらいだ。……しかし、死んでも消えないものを残していく」
などの記述があります。

渋江抽斎やそのまわりの人々への森鷗外の関心を、輪読会で一緒に読む人たちや自分の関心と重ね合わせれば読み進められる!?
予習不要な輪読会ですので、『渋江抽斎』じたいはその場で味わおうと思います。
お気軽参加者募集中。ご関心のある方は京都アカデメイア kyotoacademeia@gmail.com まで。

6月1日(土)20:00より、森鴎外『渋江抽斎』の輪読会を始めます

京アカオンライン輪読会では6月1日(土)20:00より、森鴎外の史伝『渋江抽斎』の輪読会を始めます。どなたでも参加できます(無料)。
予備知識も予習も不要、一回だけの参加も歓迎です。本は各自でご用意下さい。お問い合せはkyotoacademeia@gmail.comまで!

森鴎外の史伝『渋江抽斎』

 

『昭和史 新版』読み終わりました

京アカオンライン輪読会は昨年12月からの 遠山茂樹・今井清一・藤原彰『昭和史 新版』(岩波新書、1959年)が5月18日で読み終わりました。「新しい戦前」というコトバも使われ出しているこの時期に京アカのメンバーと読め、考えを深める楽しい時間を過ごせました。個人的にいまとくに印象に残っている内容は下記の6点です。

・明治維新以来の「帝国主義」~国外の植民地・領土を増やしていくことが豊かになる道という価値観(満州の夢!)が、農村の凶作、世界大恐慌などでリアルに感じられていたのか。

・自由民権運動の流れを汲んだ大正デモクラシーの時期はいまと遜色ない進歩的・民主的思想や軍縮思想も生まれていたが、政府側がコソコソと少しずつ進めてきた団体活動の取締や新聞雑誌や個人の思想への統制のために、開戦、国家総動員体制に公然と異を唱えることができなくなった。

・張作霖爆殺、盧溝橋事件、五一五事件など軍部の「やったもの勝ち」を許してしまう、だらしない政党政府・藩閥政府内部のパワーバランス。二二六事件で鮮明になる陸軍の皇道派と統制派の争い。ノモンハン事件、ミッドウエー海戦、ガダルカナル敗退などの敗戦が現場からきちんと伝えられず失敗をかくす風土など、組織のあり方。

・陸軍内部の教育、北一輝などの右翼思想、吉野作造の民本主義、大杉栄のアナーキズム、京都学派の哲学など当時の思想を原典で読んでみたくなった。

・戦争に負けてアメリカの占領を歓迎したのもつかの間、中華人民共和国建国、朝鮮戦争の時代から、アメリカの要求をどうかわすか呑むかの国際政治のかけひきをしていたが、近年どういう外交政策を日本政府がとろうとしているのだろうか。

・総じて、現代の政府や組織のあり方は、当時を思い起こさせるものが多い。

「新しい戦前」というコトバが予言の自己実現機能を果たさないように、失敗を知り、失敗から学ぶことが必要ではないかとあらためて感じさせられました。昭和史に思いをめぐらす時間をいただき、ありがとうございました。(文責・古藤隆浩)

バトラー『触発する言葉』~哲学思想系読書会始まりました

京アカ隔週水曜夜の読書会は、新年度から、ジュディス・バトラー『触発する言葉』の序章「言葉で人を傷つけること」を読み始めました。
初回は6名参加、互いの知識がバラバラで、一人での読書と違い、とても深い読みができました。
言語・呼び名・抽象そのものの暴力性・被傷性、そこからの対抗の起動の可能性は、竹村和子さんも取り上げていました。バトラーの問題意識は何処にあるのでしょうか?
本書の今回の部分では、中傷・侮辱の言語と「時間」の関係が私としては印象に残りました。
たとえば、「発話内行為」の力=そう呼ばれた瞬間にどこかに(orどこにもないところへ)置かれる=と、「発話媒介行為」の力=その後効いてくる結果;過去の歴史性も関係する結果=を分けて考えてみること。
承認・非承認後に名指される・存在するのではなく、承認と名指し・存在が同時=「承認可能な回路のなかに存在を構築する」という点から、言語上の傷、身体上の傷の関係も考えてみる甲斐がありそうなこと。
初回は7ページ進みました。次回は文庫版p.9~ 5月8日(水)19;:30~Zoom。関心のある方は京都アカデメイア kyotoacademeia@gmail.com までお問合せください。

哲学思想系読書会、次のテキストに進みます

正会員の酒井です。隔週の水曜19:30-21:00にオンラインで行っている哲学思想系の読書会についてのご案内です。
約一年間かけて竹村和子の『愛について』の序論、第4、5章を読み終えました。『愛について』の残りの章は各自が読むことにして、読書会は次のテキストに進もうと思います。

これまでは一段落ずつ輪読をしていましたが、読みたいものがたくさんあるので、次回からは、ある程度まとまった範囲を読んで予習してきて、当日は議論をする、という形式を取ってみようかと思います。
参加者が一人ずつ順番に読みたいテキスト(本の一章程度)を選定して、色々な哲学者のテキストを読んでみる予定です。
分量の多いものや難易度の高いものは数回に跨ります。
現在出ている書籍の案は、傾向としてフェミニズム、政治哲学、ポストコロニアリズムなどです。

次回4月24日水曜19:30-21:00からは、しばらくジュディス・バトラー『触発する言葉』の序章「言葉で人を傷つけること」を読みます。

参加を希望される方や質問のある方、興味のある方は京都アカデメイア  kyotoacademeia@gmail.com にご連絡ください。
京都アカデメイア正会員でなくても参加できます。

 

『昭和史 新版』輪読会~なぜ防げなかったのか

京アカオンライン輪読会 遠山茂樹・今井清一・藤原彰『昭和史 新版』(岩波新書、1959年)をゆっくり読んでいます。4/6(土)に読んだ箇所では、
・お上の命令に従っておればよい、表向き戦争協力の形を示せばよいに国民が陥る
・議会は東条首相の演説に拍手をおくり、政府案を無条件に通過させる機関となる
・緒戦の勝利に目が奪われ、米軍の反攻態勢が整う情勢を正しくつかめず、ミッドウェー海戦で致命的な失敗
など開戦後の軍部、東条英機一派の独裁が招いた泥沼への道が描かれていました。
ナチスのような全体主義は、清潔なもの、ある種の精神性や美意識とともにやってくる、という話題でも盛り上がりました。
次回=4/13(土)20時~「戦争経済の行きづまり」から。どなたでも参加できます(無料)!  お問合せは kyotoacademeia@gmail.com まで!

3/29「アカデメイア・カフェ 第15回 本が読める?読めない?」楽しかったです

こんにちは。村田です。

3月29日はイベント「アカデメイア・カフェ 第15回 本が読める?読めない?」に参加しました。
会員・古藤さんの来洛に合わせたこの企画、昨今もっぱらオンラインで集っている一同のオフ会的面もあり、お昼から始めて(私は途中参加でしたが)予定をややオーバーし、暗くなるまでお喋りは続いたのでした。
後半はイベントの主旨通り、それぞれ持ち寄った本を紹介し合ったり、本の内容だけでなくその周辺のことを語り合ったりできました。

会場となった時忘舎(https://www.jibohsha.com/)は、大正時代の精麦所跡に作られた建物。お庭も室内も飲食物も素敵。白川沿いの落ち着いた空間で文字通り時を忘れるようでもあり、「忘れ物を見つける」(※)ようでもあり(※今回のフライヤーにあったキャッチフレーズ、時忘舎ブログ「読書の秋」より借用)。オーナー・竹中さんによる、慌ただしく観光地化している京都の中でゆっくりものを考えられる場所を作りたい、土地の人のための場所を作りたい、という話も印象的でありました。「居場所作り」はこの日の隠れテーマだったかもしれません。

それぞれ旧交を温めたり新たな縁を結んだりできてよかったです。個人的にも、初対面の方とお会いできた一方で約20年ぶり(!)の友人と再会できたり。ぜんぜん変わってなかった! 京都は前日まで冬のような寒さでして「今年は桜の気配がまったくないなあ」と言っていたのが、この日突然温暖になり白川沿いのソメイヨシノも見ることができたのでした。

3月29日に京アカ・カフェ@時忘舎(左京区岡崎)開催します

アカデメイア・カフェ  「第15回 本が読める? 読めない?」久々にやってみます!

【日時】 2024年3月29日(金)13:30~18:00
※時間内お好きな時間にご来場ください。
※偶然その時間を共にした人と知り合うようなゆるい感じで。
【会場】   時忘舎(左京区岡崎)  https://www.jibohsha.com/ 
※詳細アクセスは下記
【趣旨】   好きな本の紹介をいただきながら自己紹介を。最近あまり本が読めないという方は読めない理由などを。久しぶりの方、初めての方、オンライン上でしか会っていない方のオフ会をかねて。
【企画】   時忘舎 元オーナー竹中さん + 古藤隆浩(仙台在住)
舟木徹男さんもいてくださいます。
【費用】 時忘舎さんでドリンクなどの注文をお願いいたします。
(竹中さんより)
オーガニックランチ+コーヒー 2110円(税込)
オーガニックケーキ類 600~700円(税込)
コーヒー単品 680円(税込)の範囲ぐらいです。
※今回は、竹中さんのご配慮でビジター料金などは不要です。
【申込】   人数把握のため、前日までお名前と参加予定時間をお知らせください。
(申込アドレス)    kyotoacademeia@gmail.com
(問合せ先) 古藤隆浩 koto@tfu.ac.jp
【会場アクセス 】  606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町56-1 時忘舎
(最寄駅)  ①京都市営地下鉄「東西線」東山駅出口①より徒歩約3分
➁京都市営バス「岡崎公園 美術館・平安神宮前」より徒歩約3分
(地図) https://www.jibohsha.com/access-contact
【アカデメイア・カフェとは】
テーマをひとつ決めて、皆で自由に語り合う集まりです。あまり堅苦しい雰囲気にするつもりはなく、集まったメンバーでざっくばらんにわいわい話せれば、と思っています。
はじめて参加される方大歓迎。京都アカデメイア メール会員(会費は無料です)として登録してください。

京アカスーパー銭湯積読解消会と解消した積読

おひさしぶりです。京アカ会員の村田です。
昔はときどきブログを書いていましたが、数年ログインしていませんでした。
またときどき書こうと思います。

先日京アカメンバーの、
「スーパー銭湯に行って積読を解消する」
という企画に参加してきました。
といっても、めいめい好きなタイミングで風呂に入り、専用スペースでそれぞれ持参した本を読んだり勉強をしたりあるいは備え付けの漫画を読んだり昼寝したりする、というだけのイベントです。
しかし、皆がいると思うだけで諸々捗り大変よかったです。「対面」のイベントも久々でありました。

皆、好きなときに来て好きなときに帰ります。私は昼過ぎに来て深夜までいました。
持参した本は以下の通り。積読解消状況を紹介してみます。

・新日本古典文学大系『中世日記紀行集』(岩波書店)から「中務内侍日記」:
一年くらい積んでいた本。昔に古文の入試問題で一部読んで長年気になっていたのがやっと読めました。

・『テーマで読み解く中国の文化』(ミネルヴァ書房):
仕事で読む必要があった本。2章分読めました。

・『巨人出口王仁三郎』(現代教養文庫):
数か月積んでいる本。現地では読めませんでしたが行き帰りの電車で少し読みました。

・『これが現象学だ』(講談社現代新書):
数か月積んでいる本。持ってきたものの読めませんでした。
しかし、「積読の中からどれを持ってこようか選ぶのが楽しかったからOK」「家から移動させたことに意義がある!」と皆と話しました。(その後無事読み始めることができました)

・番外)『ママレード・ボーイLittle』
スーパー銭湯においてあった漫画。3巻くらい読みました。
90年代の少女漫画『ママレード・ボーイ』の続編ですが前作の登場人物が大人になっていました。

途中、食事やデザートを皆でとりながらお喋りしました(これも自由参加)。皆の積読本も紹介してもらいました。普段読まないテーマの学術書や気になる小説を教えてもらい、「積読解消会に行ってまた積まれる本が増える」事態となりました。風呂もよかったです。

【京アカオンライン輪読会】 次に読む本は 『昭和史 新版』(岩波新書)です。初回は12月23日(土)20:00~

【京アカ輪読会 12月23日(土)20:00~】
京アカオンライン輪読会ではつぎに遠山茂樹・今井清一・藤原彰『昭和史 新版』(岩波新書、1959年)を読むことにしました。アジア太平洋戦争をじかに経験した若き歴史家たちが、「なぜ私たち国民は戦争に巻き込まれ、押し流されたのか、なぜ自らの力で防ぐことができなかったのか」という切実な問題意識のもと、第一次世界大戦期にまで溯って分析したロングセラーです。資料的には古くても、戦中派世代にしか書けない熱量をもった現代の古典と言えるかと思います。「新しい戦前」と呼ばれる現在、いまいちどこの本を読みなおしてみましょう。どなたでも参加できます!お問合せは kyotoacademeia@gmail.com まで!

今井清一・藤原彰『昭和史 新版』(岩波新書、1959年)