『渋江抽斎』輪読会も残すところあと2回

森鷗外著『渋江抽斎』(岩波文庫、青空文庫)の輪読会も先週土曜日で9回目、119話中98話まで読み終え、残すところあと2回。意外に(?)楽しめています。
鷗外が『武鑑』という古書を収集していると、鷗外も気づいた『武鑑』の誤りを指摘していた渋江抽斎を知ります(その4)。医者で官吏で哲学文芸にも秀でているという自分と同じ道を歩いた人だと知り(その6)、抽斎について調べたこと子孫から聞き書きしたことを書いていくスタイル(史伝もの)です。ただ、抽斎のまわりにいる人の記述がとても多く、半分もいかない53話で抽斎は没します。
それ以降は、残された妻・賢母で泥棒に裸体で熱湯をかけた武勇伝(その61)をもつ五百(いお)、先妻との間の子でやんちゃで座敷牢(その46)に閉じ込められそうになった青年時代を送る優善(やすよし)=優(ゆたか)、美形ではないが美声で長唄の師匠になる陸(くが)、水木(みき)などの娘、専六=侑(おさむ)、英語が堪能で高等師範学校の学業がつまらず(その97)教師を辞めて慶應義塾に編入する(その100)成善(しげよし)=保(たもつ)をはじめとする周辺人物の記述にますますページが割かれます。家族に限らず、津軽藩関連、医師仲間、学者仲間、芝居系、近所の人などのエピソード満載。
多くの登場人物を楽しめるうえに、人物紹介ではその人の別名をたくさんあげ、転居も多く、一人の人のさまざまな顔も楽しめます。ちなみに、私は森枳園という人のエピソードに惹かれました(その28・95)。
参加者の谷村さんが整理してくれた関係図は参考になります。

森鷗外による渋江家のまとめは東大デジタルアーカイブにあり。鷗外以外に今まで登場人物全員を一覧図にした人はいるのだろうか。きっとどこかにそんな余裕のある人がいるんだろうな、そういう遊び心のある人になりたいのような気持ちになれる幕末明治の多彩な人々の生き方を味わえる輪読会です。
ご関心のある方は、京都アカデメイア kyotoacademeia@gmail.com まで。(紹介:古藤隆浩)

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です