レビュー」カテゴリーアーカイブ

映画『天気の子』:世界の不条理をどう受けとめるのか

現在公開中の新海誠監督『天気の子』が大ヒットしているそうです。このブログでは、前作の『君の名は。』(2016年)を取り上げましたが★1、今作も面白かったので、内容について考えてみたいと思います。

続きを読む

今日はあの哲学者の誕生日

大窪善人

「いかに感嘆しても感嘆しきれぬものは、天上の星の輝きと我が心の内なる道徳律」

4月22日は、偉大な哲学者イマヌエル・カントの誕生日。
1724年、プロイセンはケーニヒスベルクで馬具職人の四男として生まれました。
続きを読む

嘘は恥だが役に立つ:思考のトレーニング

大窪善人

 
まずはこちらの絵をご覧ください。

中央に描かれているのは若い男女。テーブルには瓶や果物。男性の右手は女性の顎に添えられ、彼女の手には花束のようなものが見える。なんとなく色っぽいシーンです。
続きを読む

永遠平和のために ⑨:海賊は人類の友か敵か?

大窪善人


 

約二世紀前にカントが夢見た永遠平和。それがたんなる夢想ではなく、いかにして実現可能かを考えるのが、この連載の目的です。

前回(第8回)では、アニメ『けものフレンズ』を通して、”絶対に調和できない敵(絶対的な敵)をも受容する秩序”をつくり上げることこそが永遠平和である、という見通しを得たのでした。

だが、それはいかにして可能なのでしょうか。
続きを読む

「シルバー民主主義時代のポスト福祉国家」読書会の感想:12頭目のラクダの返還をめぐって

大窪善人

 
昨日は、大阪で「シルバー民主主義時代のポスト福祉国家」読書会に参加しました。
読書会では、以前、京アカの読書会にお呼びしたこともある 吉良貴之さん(法哲学)が話題提供者となり、お互いほぼ初対面の10名の方々と、充実した議論を交わしました。
続きを読む

なぜ若者はインスタグラムに夢中なのか?

大窪善人

インスタグラムとは、スマートフォンで撮影した写真をSNSで共有するアプリ。若者を中心に人気が爆発し、「フォトジェニック」や「インスタ映え」なるワードも生まれました。
どちらも見栄えの美しさを表現する言葉ですが、たんに”上手く撮れた”というのとは、少し事情が違うようです。
続きを読む

なぜ暴力はいけないのか:ウェーバーから考える

大窪善人


 
ジャズ・トランペット奏者 日野皓正氏の体罰事件が連日話題です。

体罰は是か非か。
事件については詳細がわからないので確たることは言えませんが、近年も学校での体罰を苦にした生徒の自殺は後を絶ちません。
その背景には、世間の根強い「体罰容認」の風潮があるように思います。 続きを読む

映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』:なずなと典道はどこへ行ったのか?

大窪善人

本作は、映画監督 岩井俊二の出世作となった同名の実写作品をもとにしたアニメ―ションです。じつは私は、今回のアニメ化の話を知ってから、鑑賞を楽しみにしていました。

優れた原作とはいえ、放映されたのは今から20年以上前。そんなに古い作品をわざわざ引っ張り出してくるからには、たんに原作をなぞるだけではない、きっと大きな驚きがあるはずだ、と。結果は、期待以上でした。
続きを読む