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伊丹敬之、加護野忠男『ゼミナール 経営学入門』第2章演習問題答案例

京都アカデメイア塾の授業の一環で、伊丹敬之、加護野忠男『ゼミナール 経営学入門』(日本経済新聞社、第3版、2003)の第2章「競争のための差別化」の演習問題の答案例を作ったので、公表します。

第2章 競争のための差別化

(演習問題)

1.
CDの使用そのものでの取り合いの相手としてMDやiPodなどの新しい技術産業が、顧客のCDへの支出を取り合う相手として携帯電話産業やアニメ産業などが登場してきた。音質面ではMDやiPodなどのデータはCDとほぼ同等であるので、歌い手との握手券をCDに付けるといった戦略を取るべきである。アニメ産業などとは排他的に競争するのではなくメディアミックスの一環として主題歌やキャラクターソングのCDを積極的に売り出すべきである。

2.
既存の企業が製品の個性化を推し進める場合は、既存の製品とうまくマッチした個性を抽出するという条件が必要である。選んだ個性に応じて製品を変化させるのは組織として難しいだろうし、仮にそれができたとしても顧客は前の製品のイメージを持ち続けることになる。新規参入をする企業が一点豪華主義的に製品の個性化を目指すのであれば、企業名や商品名がその個性に適合し、適切な広告戦略によりそれが顧客に届くという条件が必要である。微妙な差別化の集積をする場合は、集積をすることができるほどの領域をその企業がカバーしていなければならない。

3.
塾産業を例に考える。市場が生まれるときには学校よりもわかりやすく教えるという製品が武器の中心になることが多い。そのあと競争の推移とともに、進路指導などのサービスに、さらには価格へと中心的武器が変わって行く。ブランドはどの段階においても中心的な武器になり得る。塾に通うことが一般的になると顧客が進路指導などのさらなるサービスを求めるようになり、そうしたサービスもおよそ出尽くして塾が均一化すると価格でしか差別化できなくなるからである。

【イベント】7月11日 美味しく学べる♪ 鉄板 classe(テッパン・クラッセ)in おっとう vol.1 『あさりが教えるボクらの未来』

7月11日(土)、美味しく学べる♪ 鉄板 classe(テッパン・クラッセ)in おっとう vol.1 『あさりが教えるボクらの未来』 を開催します。

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~鉄板 classe (テッパン・クラッセ)って?~

ふだん、本は読んだりしてるけれど、なかなか講演などを聴きに行く時間が取れない!そんな社会人の皆さまを対象に『夜ごはんの”ついでに”学べる時間をつくろう』を目的にしたイベントです。
今回のテーマは、私たちの身近な食材ーあさり。あさりのことを調べていく内に、わたしたちの未来に影響する(かもしれない)重大なことが分かってきましたのでレポートします。
レポーターからの話のあとは、おっとうの美味しい料理も召し上がっていただき、頭もお腹も、いっぱいになって帰っていただければ幸いです。
*プチ大喜利も開催しますので、ご興味ある方はご参加ください。

レポーター: 中島啓勝 (京都文教大学・京都造形芸術大学 非常勤講師)

日時・プログラム:
2015年 7月11日(土)夜
18:30~受付開始
19:00~レポート
20:00~ごはん&プチ大喜利

会場:
鉄板焼おっとう(大阪市北区中崎2-2-27、大阪市営地下鉄 谷町線「中崎町」駅から徒歩1分)
https://www.facebook.com/teppanyakiottou

参加費: ごはん(コース)付き 3500円 ドリンク代別

予約・お問い合わせ先: 鉄板焼おっとう
TEL 06-6371-5560
*事前予約制ですので、お電話でご予約ください。

主催:京都アカデメイア

6月27日 京都アカデメイア塾 体験授業を開催します。

 
6月27日(土)、京都アカデメイア塾 体験授業を開催します。

講座名:世界に触れる社会学
テーマ:UFO現象の社会学
 
京アカポスター UFOの社会学MINI

20世紀最大のミステリーのひとつ、「UFO現象」について社会学的に考えます。

<この講座はこんな方におすすめです>
・社会学に興味がある、どうやって学んだらいいのか悩んでいる。
・社会の出来事について深く考えたい。
・社会について自分なりの考え方を身につけたい。

 
講師:大窪善人
NPO法人京都アカデメイア・スタッフ。佛教大学大学院 社会学研究科博士後期課程在学。専攻は社会学。京都府医師会看護専門学校 非常勤講師。研究会 佛大・社会学研究ゼミ/SISBU 主宰。研究会誌「SOCIOLOGICAL SEMINAR」(佛大・社会学研究ゼミ発行)企画・編集。Twitter:@yoshio_ok 
 

2015年6月27日(土曜日)、18:00-20:00
場所:GACCOH(京阪電車「出町柳駅」2番出口より徒歩5分)
事前申し込み不要。参加費500円。当日会場までお越しください。

お問い合わせ:kyotoacademeia+juku@gmail.com

 

ウェーバー『職業としての学問』『職業としての政治』読書会のお知らせ

下記のとおり、読書会を開催することになりました。
専門知識がある方もない方も、 ご関心ある方はどなたでもご参加ください。

日時:6月20日(土)16〜19時
場所:GACCOH (京阪出町柳駅から徒歩5分)
課題図書:マックス・ウェーバー『職業としての学問』『職業としての政治』

※参加費は無料ですが、場所代としてひとり数百円程度のカンパを頂きます。

テキストは岩波文庫版が最も入手しやすいかと思いますが、 それ以外の出版社のものでも構いません。
日経BPクラッシクから出ている中山元訳のものも、二つの講演がひとつにまとまっていて便利かもしれません。
飛び入り参加も可能ですが、事前にある程度参加人数を把握したいので、 参加希望の方はkyotoacademeia□gmail.com(□に@を入れてください)までメールいただけると助かります。 どうぞよろしくお願いします。

職業としての学問 職業としての政治 nikkeibp

伊丹敬之、加護野忠男『ゼミナール 経営学入門』第1章演習問題答案例

京都アカデメイア塾の授業の一環で、伊丹敬之、加護野忠男『ゼミナール 経営学入門』(日本経済新聞社、第3版、2003)の第1章「戦略とは何か」の演習問題の答案例を作ったので、公表します。

 

第1章 戦略とは何か

(演習問題)

1.
 戦略が失敗した例としてY塾を取り上げる。同社は第一の戦略の定義に関しては、市場の中の長期的基本設計図という点に問題があったと考えられる。市場は長期的に少子化傾向、大学現役入学志向であるにもかかわらず、浪人生を主な対象とした集団授業を提供するという設計図に問題があったと言えるのである。第二の戦略の定義に関しては、多くの生徒から求められる企業というあるべき姿を設定したとして、そこに至るシナリオに問題があったと考えられる。同社は多くの生徒を集めるために主要都市に教室を開くというシナリオを採用したが、地域に密着するようにもっと広範囲に教室を開くシナリオのほうが適切であると言えそうである。

2.
 ポジショニングスクールに偏った場合には、現実的に組織としての活動が可能であるかどうかが見落とされがちになる。市場の中で需要を見出しても、そこで求められる商品を現実的に提供できなければ意味がない。経営資源スクールに偏った場合には、市場の動向に無頓着になりがちになる。自社にふさわしい商品を提供したとしても、それが市場で求められなければ売れるはずがない。

3.
 マーケットシェアが高いということは生産の絶対量が多いということなので、その生産経験を通して得られる技術情報などが蓄積されやすくなる。また、顧客との接触も多くなるので、顧客そのものについての情報が蓄積されるとともに、顧客のフィードバックから商品の質を向上させるヒントも得やすくなる。このようにして見えざる資産の蓄積につながる。

 

経営学というよりは国語(小論文)的に答案を作っているような感じがしました。

 

 

5月17日『nyx』エコノミー特集読書会レポート

去る5月17日に雑誌『nyx(ニュクス)』エコノミー特集の読書会を開催しました。この読書会は、編集者さんの希望で一般告知は行わず、京都アカデメイアのメーリングリストのみで告知をさせていただきました。(こういうケースもあるので、ぜひ京都アカデメイアのメーリングリストにご登録を!今後のイベント情報などお伝えします)

『nyx』は2015年1月に創刊されたばかりの新しい思想雑誌です。若い力で現状の閉塞したアカデミズムに風穴を開けようという意志と気概が感じられる創刊号になっています。第一特集は「〈エコノミー〉概念の思想史 アリストテレスからピケティへ」、第二特集は「現代ラカン派の理論展開」。若手の俊英研究者たちの論考とともに、ピケティ・アガンベン・ナンシーなど海外の著名な研究者の翻訳論文も掲載されていて、非常に充実した内容です。
(参考)堀之内出版blog記事:新思想誌『nyx(ニュクス)』創刊
産経ニュース:実学偏重、業績主義の傾向強まる中、若手研究者が思想誌「nyx」創刊

nyx

当日は『nyx』エコノミー特集の主幹をつとめられた佐々木雄大さんと編集者の小林えみさんをお招きしてのイベント開催となりました。
まず私(百木)から『nyx』についての全体的な感想や疑問、そこから発展させた私なりの問題関心などをお話しさせていただきました。次に佐々木さんからそれに対するレスポンスをいただき、さらに参加者全員でディスカッション&質疑応答タイム、という段取りでした。

最後は会場全体で佐々木さんを質問攻め&リクエスト攻め、のようなかたちになってしまって少し申し訳なかったのですが、全体的に議論は盛り上がり、参加者の方の満足度も高かったように感じています。個人的には、図らずも「東京vs京都」の価値観や思考方法の違いが浮き彫りになって面白い化学反応が起こったのではないかなと思ったりもしています。

大きな論点になったひとつのポイントは、「そもそも今『エコノミー概念の思想史』を特集することの意義はどこにあったのか」ということでした。この特集では、古代から現代に至るまで「エコノミー」概念がどのような思想的変遷をたどり、それぞれの時代・社会でどのような役割を果たしてきたかということが詳細に検討されています。「エコノミー」と聞いてわれわれが真っ先に思い浮かべるのはもちろん「経済」(とりわけ市場経済・貨幣経済)という意味ですが、実はこの「エコノミー」という概念はそれだけに収まらない多様で豊潤な意味(役割)を持っていたことが示されます。

例えば、古代ギリシアでは「エコノミー」の語源になった「オイコノミア」は「家政術」を意味する言葉でしたし、中世社会では「オイコノミア」は「神による統治」「神が定めた配置・配剤・秩序」といった意味合いをもっていました。さらに近世社会では「自然のエコノミー」「動物のエコノミー」といったかたちで、自然・生物に与えられた秩序を意味するものでもありました。われわれに馴染み深い「(市場)経済」という意味での「エコノミー」という語が用いられるようになるのは、あくまで18世紀後半以降の傾向にすぎません。

このような「エコノミー」概念の多様性・豊潤さを知るうえではこの特集はとても有用です。しかしそのような概念史的変遷を踏まえたうえで、ではその知見をさらにどのように発展させていくことができるのか、そもそも何のためにこの特集が組まれたのか?というところにまで多くの読者の思考は及ぶことでしょう。その部分に対する明快な答え(方向性)が見えないことが、この特集に対するひとつの物足りなさに繋がるかもしれない、ということを(僭越ながら)述べさせていただきました。

個人的には、現代の「エコノミーの過剰」に対する問題意識がこの特集の背景にあるのではないか、という勝手な推測をしています。ここでいう「エコノミーの過剰」とは、ひとつには「政治」に対する「経済」の過剰の問題であり、もうひとつには「主権」に対する「統治」の過剰という問題です。例えば、前者は1970年代以降の新自由主義の展開として名指されているものであり、後者は大竹弘二さんと國分功一郎さんの対談本『統治新論』などで問題視されているものです。

これらの「エコノミーの過剰」問題に立ち向かうためのヒントを「エコノミー」概念の思想史を辿ることによって掴むことができるかもしれない。あるいは、そのことによって現在の「エコノミー」とは異なる、別の「エコノミー」の可能性(オルタナティブ)を探ることができるかもしれない。この点に「エコノミーの概念史」特集を行う意義があったのではないか、というのが私なりの解釈でした。

そのような「別のエコノミー」の可能性を探るヒントとして、私が個人的に最も関心を持っているのは、佐々木雄大さんの論考の最後に触れられている、バタイユの一般エコノミー論(普遍経済学)です。バタイユは、近代における「市場経済」あるいは「貨幣経済」としてのエコノミーを「限定エコノミー」と呼び、それよりもより包括的で普遍的なエコノミーのあり方を「一般エコノミー」として構想します。ここでいう「一般エコノミー」とは何か。私はバタイユに関しては素人なので精確な説明を与えることはできないのですが、例えばそれは、太陽から降り注ぐ熱エネルギーや、自然・生物がもつ生命エネルギーや、人間社会に内包される諸々の「力」の存在などをも対象とした、〈生産に限定されない消尽・贈与をも考慮に入れた〉より広範囲な「エコノミー」のあり方を構想するものです。

このようなバタイユの「一般エコノミー」論は、現代の「限定エコノミー」がもつ限界(あるいは「限定エコノミー」の過剰化問題)を突破するためのひとつの重要な参照点になるのではないか、というのが私から佐々木さんに投げかけた問いでした。この問いに対して、佐々木さんはひとつひとつ丁寧に答えてくださったのですが、そのなかでも個人的に印象に残っているのは、「しかし、太陽から降り注ぐ熱エネルギーを『純粋な贈与』として捉えるバタイユの視点は、実は、オイコノミア神学の捉え方にほとんどそのまま重なるものでもありうる」というご指摘でした。バタイユの一般エコノミー論に従来の「エコノミー」概念を突破する契機を見出そうとしたところが、実はその試み自体もまた伝統的な神学枠組みのひとつのバリエーションにしか過ぎないのかもしれない。あるいは近代的な「統治パラダイム」(生政治)に対抗して「無為と栄光」の意義を換骨奪胎(脱構築)しようとするアガンベンの試みにも同じようなことが言えるかもしれません。

最後の方はやや専門的な議論かつ説明不足で分かりにくいところがあったかもしれませんが(あるいはより専門的に見れば不正確な記述もあるかもしれませんが)、あくまで実際に行われたディスカッションへのメモということでご容赦ください(もし記述に不正確な部分があればそれはすべて私・百木の責任です)。ひとまずこうした雰囲気で濃密な議論が参加者のあいだで交わされたということが伝われば十分です。

こうした濃密な議論ができたのも、何より若手研究者の方々が中心になって『nyx』という思想誌を創ってくださったからですし、またゲストの佐々木雄大さんがどんな質問やツッコミにもひとつひとつ真摯にお答え頂いたからだと感謝しております。またときどき、こういったかたちで「東京vs京都」の交流イベントができればお互いにとって刺激的な場になるのではないかと考えています。はるばる東京から京都までお越しいただいて、快く議論に参加してくださった佐々木雄大さんと小林えみさんに感謝しつつ、また今後の『nyx』の展開にも期待をしております。また京都アカデメイアでもそれに負けないようにいろいろなイベントを企画していければと考えていますので、今後ともよろしくお願いします。

 

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当日は20名ほどの方に参加いただきました。

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東京vs京都(?)の構図。

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読書会を終えて佐々木さん&百木で記念撮影。

5月23日 会員出版記念イベント番組を放送しました

 
5月23日(土)、ニコニコ生放送にて京都アカデメイア会員の著書出版を記念してイベント番組を放送しました。

出演:
船越克真氏(ゲスト)
大窪善人(司会)

船越克真: 1966年京都市生まれ。京都教育大学大学院を経て少年院の法務教官・小中高特別支援­学校の講師を経験、現在非行・不登校・自傷行為などの相談を受け付ける船越教育相談室­を開設。親御さんやお子さんの相談を受けている。教育学修士。思春期男女2人を含む3­児の父。

船越克真,『少年院の先生が教える~思春期の子育て お悩み解決本~』
アマゾンにて販売中! http://www.amazon.co.jp/%E5%85%83%E5%…

船越教育相談室 http://funakoshikyouiku.jp/policy.html