イベント」カテゴリーアーカイブ

アカデメイアカフェ活動報告

先月の11月17日(土)に第5回アカデメイアカフェを開催しました。

f:id:kyotoacademeia:20121201064437j:image:w360
サクラカフェ

今回のカフェは下鴨にあるサクラカフェに場所をお借りしました。近所には府立植物園や洛北高校があって、店内も落ち着いた雰囲気の素敵なお店です。当日はあいにくの天気でしたが、それにもかかわらずたくさんの方に参加していただきました。ほぼ初対面同士によるディスカッションということで、いわばインスタント的に議論を広げていくという形式でしたが、結果的に楽しんでいただけたなら幸いです。

f:id:kyotoacademeia:20121117165132j:image:w360

f:id:kyotoacademeia:20121117164814j:image:w360

今回のテーマは「食」にまつわるあれこれについて広く考えてみようという趣旨で、食生活と健康についての身近な疑問から、食育、便利で快適な食品生活の功罪など、話題も多岐に渡って展開しました。(ところで、毎日規則正しく三食摂っているという人が多かったのはちょっとした驚きでした。)

しかし、なぜ「食」なのでしょうか? 人は誰しも食べ物を摂ることなしでは生きていけません。その意味では食は人間生活の基本的条件のひとつです。また、それだけでなく人は食材を煮炊きすることで料理を発明したり、独自のアレンジを加えることで多様な食文化や生活様式を発展させてきました。これらは人間の特徴といってもよいでしょう。

考えてみれば、食は話題には事欠かないくらい身近な存在です。たとえば、日本では毎日数えきれないくらい多くの食品が生産・流通しています。また、街を歩けば料理店が目に入らない場所を探す方が難しいくらいです。しかし、その一方で、食中毒や農薬、遺伝子組み換え食品、BSE、食品偽装、放射能汚染の問題などの食の安全や、肥満やメタボリック・シンドローム、ダイエットなどの健康の問題、そして食料自給や世界中の飢餓、食料危機の問題などとも結びついています。

今回の企画では触れることができなかった論点もたくさんありましたが、当日のディスカッションで気づいたのは、食についての話を周囲の人たちとする機会がこれまであまりなかったということです。もちろん、それには一般的な理由が考えられます。一つには、あまりにも身近な問題であるために、話していても気に留めないということもあるでしょう。しかし、もう一つ重要な理由は、「食」についてのさまざまな問題が、本当は根本的な部分で倫理や道徳的な問題にかかわっているからではないでしょうか。

たとえば、毎日何気なく飲んでいるコーヒーの豆は、じつは過酷な労働を強いられている途上国の労働者によって作られたものかもしれない。私たちがそのコーヒー豆を購入し消費することで、知らず知らずのあいだに悲惨な状況に加担しているかもしれない。あるいは、もっと根本的なことは、そもそも食べるということによって他の生き物の命を奪っているということです。しかし、食品がより安全で快適で早く提供される一方で、その背後でどのような仕組みが作動しているのかが見えにくくなってもいます。

現代の食の問題を包括的に取り上げた『食の終焉』によれば、食は本来、ほかの商品とは根本的に異なっているものであるといいます。にもかかわらず、スニーカーやDVDなどと同じように、食も経済システムに組み込まれていることが、さまざまな問題の原因になっていると指摘しています。けれども、そうした問題がわかったところで、いますぐに根本的な解決が図られるわけでもありません。ある参加者の方が言った印象的な言葉があります。「こうして色々な問題がわかっても明日から自分自身の食生活は変わらない気がする。またこれまでの(不健康な?)生活を続けていくのだろう」、と。しかし、その通りかもしれません。個人でできることには限界があります。あるいは、より良い選択ができるのは限られた余裕のある人だけかもしれません。

今回の企画では、正しい答えを見つけたり、ある特定の考え方を推奨することは意識的に避けました。むしろ、日常の食事や生活が、さまざまな要素や問題とつながっているという複雑さ、あるいは繊細さにお互いに気づき合うというところにポイントをおきました。一見遠回りにもみえますが、このような営みは、ものごとについて深く考えるということにとって、あるいは実践的な観点からみて決して無意味なことではないはずです。なぜなら、それぞれの意識が変わることは、同時に、その行為の意味が変化することでもあるのだから。

f:id:kyotoacademeia:20121117160504j:image:w360
ディスカッション風景

f:id:kyotoacademeia:20121117160447j:image:w360

サクラカフェ・ブログはこちら。
http://ameblo.jp/rarara-sakura-cafe/

大窪善人

第5回アカデメイアカフェのお知らせ

百木です。次回イベントのお知らせです。

<アカデメイアカフェ第5回>
テーマ:「たべるをつくる たべるとくらす ~ダイエットから自給自足まで~」
日程:11月17日(土)14~16時
場所: 京都市左京区下鴨花園町 サクラカフェ

(詳しくはリンク先参照 http://ameblo.jp/rarara-sakura-cafe/ )

今回のアカデメイアカフェは今までとは少し趣向を変え、実際のカフェをお借りして開催することとなりました。場所は洛北高校のすぐ近く、閑静な住宅街で営業されているサクラカフェさんです。
アットホームな店内でお茶会を楽しみながら、ざっくばらんなディスカッションをして頂こうと考えています。

テーマはズバリ、「食」。
私たちの日常生活を考える上で、食べ物についての関心や悩みは欠かすことができません。
おいしいものが食べたい、健康的な食事を心がけたい、はたまたダイエットで悩んでいる、といった個人的なことから、食の安全をどう確保したらいいか、世界的な食糧危機が叫ばれる中で私たちの生活はどのような変化を被るか、といった社会的なことまで、テーマは多岐に渡ると思います。
今回はこうした「たべる」をめぐる様々なことについて語り合います。いつも以上に間口の広いテーマですので、あまり難しく考えず、お気軽にご参加下さい。

なお、参加費という形ではありませんが、今回はサクラカフェさんでの開催ということで1ドリンク制とさせて頂きたいと思います。ご了承のほど、よろしくお願い致します。

参加を希望される方は京アカのメールアドレスkyotoacademeia[at]gmail.comまでご連絡よろしくお願い致します。
皆さま、ふるってご参加下さい。

f:id:kyotoacademeia:20121107233135j:image

次回イベントのお知らせです。

今月は、京都大学図書館の職員の方に声をかけていただき、
京都大学の図書系職員の勉強会ku-librariansさんとのコラボ企画を行うことになりました。
「図書館はどこまで開かれるべきか?」をテーマにディスカッション勉強会をおこなう予定です。

<京都アカデメイア×ku-librarians勉強会 図書館ディスカッション>
日時: 10月12日(金)18時半~20時半
場所: 京都大学附属図書館3F 共同研究室5
テーマ: 図書館はどこまで開かれるべきか?―学外者向けサービスについて考える
※身分・所属を問わず誰でも参加可。

※ku-librariansさんについての紹介文です↓
——————————————————————
ku-librarians勉強会
京都大学の図書系職員(若手中心)が有志で行っている勉強会。
1999年スタート。
内容は日常業務についてや海外図書館の動向調査などさまざま。
最近は他職種、他団体とのコラボ企画も積極的に行っている。

http://kulibrarians.g.hatena.ne.jp/
——————————————————————

<趣旨説明>
ご存知のとおり、京都アカデメイアには、大学生・院生だけでなく、
社会人・一般人の方も参加していただいています。そこで時々耳に
するのが、「大学の卒業者や学外者でも大学図書館を利用できれば
いいのに」という声です。
とくに京都大学の図書館は蔵書量も多く、一般書から専門書まで
幅広い図書が揃っています。大学外で勉強している人にとっては、
大学図書館が利用できるのとできないのでは大きな差があるでしょう。

最近は大阪大学や神戸大学、慶応義塾大学の湘南藤沢キャンパスなど、
学外者・一般者に図書の貸出をおこなう大学図書館も少しずつ増えてきて
いるようです。
もちろん大学側や学内者としては、事務手続きの手間、貴重書紛失の
恐れ、図書利用の不便化などのデメリットも考えられ、学外者への貸出を
行なっていない図書館のほうが大半であるのが現状です。

「大学外での学びを活性化しよう」というのは京都アカデメイアが掲げて
いるテーマのひとつでもありあす。今回せっかくku-librarians勉強会さんから
声をかけていただいたので、大学図書館が開かれるべき範囲について、
図書館職員の方と自由にディスカッションできればと考えています。

注:ku-librarians勉強会は公務ではなく、図書館職員の方が有志で行なって
おられるものですので、今回の結論が大学図書館の公式見解になるという
わけではありません。予めご承知ください。
——————————————————————

今回のイベントは、所属・身分を問わずどなたでも参加可能です。
当日、直接会場にお越しください。
学外者の方でも、今回の勉強会に参加する旨を入り口でお伝えいただければ、
附属図書館への入室は可能です。(図書閲覧も可。図書貸出は不可)
もし分かりにくければご連絡をいただければ対応いたします。

人数把握のため、参加希望の方は事前にkyotoacademeia@gmail.comまで
ご連絡いただければ幸いです。(当日飛び入りも歓迎です。)
勉強会終了後は、ku-librariansさんとの懇親会も予定されています。

長くなりましたが以上です。関心ある方はぜひご参加くださいませ。

2012年8月16日(木)、「京アカ夏まつり2012」を開催しました。

<京都アカデメイア・夏休み特別ustream企画 京アカ夏まつり2012>
会場:アカデメイアハウス(出町柳)

学生をはじめ、社会人の方にも来ていただき充実した会になりました。
当日の様子をまとめておきます。

f:id:kyotoacademeia:20120816113944j:image:w640

第一部 ビブリオ・バトル

京アカ初のビブリオバトル。今回は公式ルールに若干アレンジを加えて行いました。

f:id:kyotoacademeia:20120816120442j:image:w360
発表の順番を決めています。

1人目:大窪
サティピアノ作品集 第1巻』,全音楽譜出版社。
2人目:種村
さようなら、ギャングたち』,�高橋源一郎。
3人目:岡本
音楽する社会』,小川博司。
4人目:百木
暇と退屈の倫理学』,國分功一郎。

f:id:kyotoacademeia:20120816131819j:image:w360

f:id:kyotoacademeia:20120816134206j:image:w360

毎発表ごとに5分間のディスカッション、さらに全体ディスカッション5分でチャンプ本を決定!

投票結果は、
1位『さようなら、ギャングたち』,高橋源一郎。3票
2位『暇と退屈の倫理学』,國分功一郎。2票
3位『サティピアノ作品集 第1巻』,全音楽譜出版社。1票
4位『音楽する社会』,小川博司。0票

f:id:kyotoacademeia:20120816210400j:image:w360

優勝者の種村さんには賞品として図書券を差し上げました。

参加していただいたみささん、ありがとうございました。

第二部 アカデメイア・セミナー

・テーマ:「体癖と思考」
・講師:小林哲也先生,(京都大学非常勤講師)

「体癖」とは、整体指導者・野口晴哉氏が大成したもので、体の癖の違いが人の行動や思考の違いをもたらしているという考え方です。

この考え方に従うと、たとえば靴底のどの部分が減っているか、何気ない日常の仕草、体型などをもとに、その人の性格の類型化ができるといいます。

セミナーではそれぞれの参加者の性格を体癖にもとづいて「診断」していただきました。

f:id:kyotoacademeia:20120816154707j:image:w360
小林先生

f:id:kyotoacademeia:20120816154655j:image:w360
興味津々。

後半では体癖に基づいた「体癖運動」の実演もあり、少しユニークなセミナーとなりました。

 食事会&五山観覧

f:id:kyotoacademeia:20120816205634j:image:w360
リラックスした雰囲気で食事&歓談中。

f:id:kyotoacademeia:20120816202235j:image:w360
大文字が見れました。終わりゆく夏を感じる。

 第三部 真夏の夜の討論会――もう一つの”ユニヴァーシティー”をめざして

2010年に京都アカデメイアがスタートして今年で3年目になりました。この討論会では、模擬授業、講演会、読書会、カフェなどのこれまでの活動を振り返ることでその意義を再確認すると同時に、これからの京都アカデメイアの進むべきビジョンを展望しました。また、それを通じて、大学や学生、社会人にとっての学びのあり方、さらには、そもそも学問的に、知的に思考するとは何かという問いについても考えました。

パネリスト
百木 漠
浅野 直樹
池畑 索季
板垣 遼
岡本 竜樹
大窪 善人(司会)

開始直後、これまで京アカを牽引してきた百木氏から重大発表!?

f:id:kyotoacademeia:20120816222801j:image:w360

突然の、百木引退宣言!? 一同騒然!

f:id:kyotoacademeia:20120816220352j:image:w360

ともあれ、討論は進行。浅野氏からこれからの京アカの展望を報告。3年間で、成功した試み、上手くいかなかったことを総括。

f:id:kyotoacademeia:20120816222412j:image:w360

社会人にとっての京アカの可能性とは?

後半は、「学問」とは何か、大学を成り立たせる社会とはなど、根本的な問題に立ち入って議論がなされました。

f:id:kyotoacademeia:20120816214430j:image:w360

議論は深夜まで白熱し、終了したのは予定の終了時刻を2時間近く超えた時でした。

ふだんの生活では、あるいはこれまでの京アカのイベントでも触れられなかった深い議論ができました。

イベントにご参加いただいた方、ustreamで視聴してくださった方、そしてスタッフのみなさまにあらためて感謝を申し上げておきたいと思います。みなさまの参加、協力なしに、あるいは京アカのこれまでの活動の実績・経験がなければ、短期間にこれだけの企画を準備し開催することは到底不可能だったでしょう。

もちろん、これで京アカの活動が終わってしまったわけではありません。今後も、ますます活発に活動は続けられていくはずです。
これからも京都アカデメイアにたいするご理解、ご参加をよろしくお願い申しあげます。

文責:大窪善人(モデレーター)

京アカ夏まつり!

夏休み企画のお知らせです!

f:id:kyotoacademeia:20120808202700j:image

<京都アカデメイア・夏休み特別ustream企画 京アカ夏まつり2012>

来週の8月16日のお昼から、アカデメイアハウス(出町柳) で「京アカ夏まつり」を開催します!
ビブリオバトルやセミナー、ディスカッションなど盛りだくさんの内容です!!

■日程:8月16日(木),正午~午前0時。

第1部:ビブリオバトル(12時~14時)

1人10分で好きな本1冊を紹介。ジャンル問わず。
ただ今、参加者を募集中です。参加希望の方は当日までに kyotoacademeia@gmail.com へご連絡ください。
定員5~6名。優勝者には素敵なプレゼントを差し上げます。

第2部:アカデメイアセミナー(15時~18時)
大学院生・社会人等が発表者となり、多彩なテーマで講演します!

・夕食会&五山観覧(19時~)

第3部:真夏の夜の討論会:もう一つの”ユニヴァーシティー”をめざして(21時~0時)

2010年に京都アカデメイアがスタートして今年で3年目になりました。この討論会では、模擬授業、講演会、読書会、カフェなどのこれまでの活動を振り返ることでその意義を再確認すると同時に、これからの京都アカデメイアの進むべきビジョンを展望します。また、それを通じて、大学や学生、社会人にとっての学びのあり方、さらには、そもそも知的に思考するとは何かという問いについても考えます。

■会場様子はustreamで配信。リアルタイムで参加できます!
京アカustはこちらです。 http://www.ustream.tv/channel/kyoaca

今年の夏は一日ずっと”京アカ”!

大窪善人

第2回アカデメイア・ラジオ <京大J地下の夜間閉鎖問題を考える>

百木です。
次回イベントのお知らせです。

<第2回 アカデメイア・ラジオ(ust中継)>
テーマ:京大J地下の夜間閉鎖問題を考える
日時:7月7日(土)20~22時

ustreamアドレス:http://www.ustream.tv/channel/kyoaca
内容:
先日、大学側から突然に発表された京都大学法学部棟地下の夜間閉鎖問題について、京大法学部自治会の方をゲストに招いて議論します。この問題について、賛成・反対という議論で終わらせるだけではなく、1月のアカデメイア・カフェで議論した「最近の大学ってどーなん?」の続編として、最近の京大正門閉鎖問題同志社の交番導入問題など、「大学の管理化・クリーン化」が進んでいることの問題点について広くお喋りできればいいなと考えております。

お時間ある方はust中継をご覧頂ければ幸いです。コメントでの参加も歓迎です。
(動画アーカイブするかどうかは終わってから判断します)
また前回同様、ust中継前に18時頃からシェアハウスで内輪の食事会を行う予定です。
こちらにももし関心ある方がいらっしゃればご連絡ください。
よろしくお願いします。

<京都アカデメイア×玉置沙由里 ustream中継> ノマドと知のこれから~ブロガー玉置沙由里に聞く

百木です。
前回の玉置沙由里さんとのust中継動画はこちらです。

<京都アカデメイア×玉置沙由里 ustream中継> ノマドと知のこれから~ブロガー玉置沙由里に聞く
http://www.ustream.tv/recorded/23024032

まとまった文章を書こうとしていたのですが、うまくまとめてきれませんでした。すいません>
代わりにOくんが熱心に取ってくれたノートのデータをアップしておきますので、関心ある方はご参照下さい。
https://docs.google.com/file/d/0Bx7L-njNF6cJYzNvZkhibWR5Nm8/edit?pli=1

いちおう、箇条書きで当日に出た論点をまとめておきます。

・最近のノマドブームでは、ノマドワーキングという狭い意味でのみノマドが理解されているのが残念。ノマドにはミクロな意味(ノマドワーキング)だけでなく、人類史的なマクロの意味があり、そちらが見落とされている。たとえば、ジャック・アタリというフランスの哲学者は『21世紀の歴史』という本の中で、21世紀には人類全体がハイパーノマド、ヴァーチャルノマド、下層ノマドという三つのノマド層にわかれていくと予想した。このように「ノマド化」は一時的なブームに解消されるものではなく、人類史的な意義をもつ現象であるととらえるべき。(玉置さん)

・私は「第八大陸」という概念を提唱してきた。それは現実の七大陸に加えて、ネット上に新しい大陸=第八大陸が出現している、という意味。それは単に架空の空間ではなく、現実空間とリンクしたバーチャル空間。私たちは自分の意志でこの世界に生まれてきたわけではないし、自分の名前も親から与えられたもの。しかし、第八大陸には自分の意志で参入することができ、名前も新しく自分でつけ直すことができる。(玉置さん)

・しかし、玉置さんがいう「ノマド的な生き方」は一部の特殊な能力や性格(コミュニケーション能力、人間的魅力、社交性、露出耐久力など)をもつ人にだけ実践可能なものではないのか?(京アカ)

→たしかにそういう側面はあるが、もしノマド的な生き方が嫌ならば自分はそれを他人に強制するつもりは全くない。非ノマド的な生き方をしたい人はそのままでいいのでは。(玉置さん)

→それを単純に「人それぞれ」の問題で終わらせてよいのか。もしアタリが言うように、人類や社会全体が「ノマド化」の方向にむかっているのであれば、「ノマド的な生き方が嫌なら、それ以外の生き方をすすればいい」というだけでは済まないのではないか。むしろ、皆が好むと好まざるとにかかわらず、ノマド的な生き方・働き方にある程度は巻き込まれざるをえない状況が出現しているのでは?(京アカ)

→それは難しい問題。自分が「第八大陸」と呼ぶネット上の空間では、これまでの社会とは違った基準の価値観が生まれるようになるだろう。そこで新しい格差のような問題は生じてくるかもしれない。でも、「第八大陸」から生まれる新しい可能性や面白みもあるはずで、自分としてはそれを追求していきたい。(玉置さん)

・玉置さんは、第八大陸には自分の意志で生まれることができる、自分で新しく名前をつけることもできる、と言っているが、ソーシャルメディアなどに疎い人間からすれば、第八大陸においても自由意志で生まれるという感覚はない。むしろ第八大陸に強制的に参加させられているという印象すらある。そのような感覚をもってしまっている自分のような人間はこれからどうやって生きていけばよいのか?何かコツやノウハウがあれば教えてほしい。(京アカ)

→その感覚はとても面白い!とくにコツやノウハウなどというものはない。自分がやりたいことを追求し、自分に合ったライフスタイルを追求していたら、こういう生き方になった。何か努力して身に付けるという感覚ではない。自然に振る舞えばよいのでは?無意識なキャラ化。(玉置さん)

→努力して能力を身につけるのではなく、自然にあるがままに振る舞えば理想の自分が実現できる、という言い方は興味深い。それは例えば、就活問題に引きつけていえば、本田由紀さんの提唱する「ハイパー・メリトクラシー」問題に近い。努力によって身につけることができない、天性的な能力・性格だとしたら、それはなかなか残酷な問題なのでは。(京アカ)

・自分がMG(X)などで実践している活動は、「ビジネス」ではない新しい経済圏の創出というイメージ。同じ意志を共有する人たちが集まってきて、いろいろ新しいこと・興味あることを試してみる空間。いまや企業に頼らず、個々人がそれぞれの経済圏を創出できる時代になった。(参考:岡田斗司夫さんの「評価経済社会」)(玉置さん)

→それに関しても、自分独自の経済圏を創出できる人とできない人との間で新しく格差が生まれるのでは?また、そのような新しい経済圏が、最終的には資本主義に回収されていくものなのか、あるいは資本主義とは異なる新しい経済空間/コミュニティ空間を生み出すものなのかが気になる。(京アカ)

→その二つを区別する必要はあるのか?あまりそういった意識はしていない。ただし、単純に既存の資本主義経済に飲み込まれて一時的なブームで終わらせるつもりはない。(玉置さん)

いまの社会は「カネ余り」状態なのでは。これだけ物質的に豊かな社会で、ソーシャルメディアも発達していれば、そもそも暮らしていくのにあまりお金がかからない。お金を稼ぐために嫌な思いをしてまで働く必要はなく、もっとささやかな収入で豊かに暮らしていくこともできるのでは。京都アカデメイアもあまり「ビジネス化」することを意識しすぎないほうがいいかもしれない。お金に還元されない、物や知識の交換という道もあるのでは?(玉置さん)

他にももっと面白い話題がたくさんあったのですが、とりあえず思い出せる範囲で書いてみました!
余裕があればまた後日更新するかもしれません。

京都アカデメイア×玉置沙由里 ust中継 「ノマドと知のこれから~ブロガー玉置沙由里に聞く」

 

百木です。
今月はスタッフがそれぞれに忙しく、イベントを開催することができずに終わってしまいました。すいません。

その代わりに、6月2日(土)の夜にブロガーの玉置沙由里さんとustream中継をすることになりました。
玉置さんは僕たちの学部の後輩にあたり、「プロブロガー」としてネット上で活躍しておられます。
最近ネット上で話題の「ノマド」という言葉を広めるのに貢献した一人でもあります。
そんな玉置さんに「ノマドと知のこれから~ブロガー玉置沙由里に聞く」というテーマで、
いろいろ質問をしてみたいと考えています。
今回はシェアハウスからust中継をおこなうので、公開参加というかたちは取らない予定ですが、
関心ある方はust上でコメント・質問など頂ければ幸いです。お時間ある方はぜひご視聴ください。
(もし玉置さんに聞いて欲しいことなどあれば事前に受け付けますのでメールください)

<京都アカデメイア×玉置沙由里 ustream中継>
テーマ:ノマドと知のこれから~ブロガー玉置沙由里に聞く
日時:6月2日(土)20時~
URL:http://www.ustream.tv/channel/kyoaca
参考:玉置さんのブログtwitterfaceboook現代ビジネスでの連載プロフィール

また、ust中継が始まる前の時間帯にアカデメイアのシェアハウスで食事会をやります。
ごく私的な食事会ですが、毎月一回ほど有志で集まって情報交換や異分野交流をすることができればと考えておりますので、もし関心ある方いらっしゃればご連絡ください。
よろしくお願いします。

第4回アカデメイアカフェ「ハシズムを考える」まとめ

百木です。先日の第4回アカデメイアカフェ「ハシズムを考える。」の簡単なまとめです。論点が多岐にわたったので、とてもすべての議論を網羅することはできませんが、大まかにでも当日の雰囲気が伝わればと思います。

当日の参加者は15名程度でした。大学生と社会人が半々程度で、アカデメイアカフェに初参加の人と以前参加したことがある人も半々程度だったと記憶しています。いわゆる「ハシズム」に対して強く言いたいことがある!という人と、正直に言ってこれまで橋下徹市長に強い関心を持っていなかったがなんとく興味をもって参加してみたという人も両方いて、(結果的に)バランスの良い構成になったかなと感じています。

◆橋下改革の政策内容について(前半)

議論の始まりは、橋下市長の文化政策についてでした。橋下市長は、財政改革の一環として、交響楽団や文楽協会や児童図書館への補助金を大幅カットor廃止するなどの政策を進めてきました。この文化政策にたいして、「橋下さんは自分の価値観で理解できないオーケストラや文楽などの伝統文化をすべて切り捨てようとしているのではないか」という意見が出ました。橋下市長個人の価値観を大阪全体の政策に反映しようとしているのはけしからん、という意見です。この意見にたいしては、しかし大阪市・府の財政状況が厳しいことは事実で、市民・府民の税金を使ってそういった文化を補助し続けることは果たして適切といえるのか、なぜオーケストラや文楽などのハイ・カルチャーだけが特権的に保護されるべきといえるのか、といった反論が出ました。

この件に関して、橋下市長がよく言っているのは「伝統文化も大衆娯楽も、同じ土俵で競争するべき」ということです。自分は別に文楽などの伝統文化が悪いと言っているのではない、ただそれらが伝統文化であるというだけで無条件に補助金を受けていることが問題なのであって、補助金なしに市場競争で勝ち残るなら何の問題もない、と。いわば橋下市長は、これまで特権的に保護されてきた伝統文化に市場的な「競争原理」を持ち込もうとしているわけですが、これはなかなか難しい問題だと思います。文化や芸術に愛着のある人にとっては、そういった文化や芸術は市場競争の中では生き残っていくのが難しいので、補助金をつかって保護されるべきだし、そのことが大阪(あるいは関西)にとってもプラスになるはずだ、と主張します。他方でそういった文化や芸術にさほど思い入れのない人にとっては、それらの文化も吉本のお笑いや他のエンターテイメントと同様に市場競争の枠組みで切磋琢磨すべきではないか?という意見になるでしょう。

議論はここから発展して、伝統文化・芸術は公的に保護されてでも伝承されるべきという「京都のお公家さん」的志向と、伝統文化も大衆娯楽も同じ土俵で戦えば良いのでは?という「大阪の庶民」的志向の違い、などにも話が及びました。さらに、大阪には地域の文化や伝統を担っていく「町衆」的存在があまり残っていないのではないか(そういった人々は阪神神戸あたりに移住してしまった?)といった意見も出て、どこまで信憑性があるのか僕自身は判断できないのですが、議論は盛り上がって興味深かったです。

これまで公的に保障されていた分野に「競争原理」を持ち込もうとする橋下市長の態度は、文化政策に限ったものではなく、教育や地域自治、社会保障、公共サービスなどに関しても共通して見られるものです。4年間の「橋下改革」をまとめた記事がしんぶん赤旗に載っていますが、中小企業予算の大幅カット、敬老パスの有料化、学童保育の補助金廃止、区民センターの統廃合、公共交通機関の民営化促進などが「改革」の内容として挙げられています。やまもといちろうさんがブログで「しんぶん赤旗の橋下徹批判が、読む人にとっては絶賛にしかなっていない件」という記事をあげてらっしゃいましたが、これらの改革内容を肯定的に捉えるか否定的に捉えるかで橋下市長への評価が別れるところでしょう。

また、「大阪の財政は苦しいと言っているが、他地域から見ればとてもそんな風には見えない。大阪の中心部はあんなに栄えているし、裕福な人もたくさん住んでいるではないか、大阪が貧しいなんていうのは嘘ではないか」という意見もありました。これに対しては、大阪出身の方などから「それは大阪の一面的な部分しか見ていない、中小企業や自営業などで働いている大阪庶民の暮らしはかなり苦しい」という声があがりました。この点についても、人によってまったく見え方が違うところなので難しい問題です(この点に関して、明確な答えは出ませんでした)。

さらに、どういった層が橋下市長を支持しているのか?という疑問も出ました。比較的に裕福な層が支持しているか、それとも意外に低所得層が支持しているのか(小泉純一郎フィーバーの際には、結果的に自分の首を絞めることになるであろうに、低所得者層が小泉氏を支持したことが話題なりました)。後日、社会学者の櫻田和也さんが分析しておられる橋下支持率と区分析を見ると(平均世帯年収老齢人口率失業率転入率)、基本的には平均年収が高く老齢人口率が低い区ほど支持率が高いようなので、少なくとも一口に「低所得若年層が橋下を支持している」とは言えなさそうな気がします。この点については、他に分析した論文などもあるようで、検討が必要なところでしょう。

◆橋下改革の政策手法について(後半)

カフェの後半は、橋下市長の「政治手法」をめぐってでした。橋下市長の政治手法の特徴としては、1)メディアパフォーマンスが上手い、2)世論の支持を味方につける、3)トップダウン式に強引にでも改革を進める、などが挙げられるでしょう。これらを一言でまとめれば「ポピュリズム」的手法だと言うことができるかもしれません。ときには嘘をついたり、違法スレスレの手段を使ってでも、「スピーディーな改革」を実現しようとする姿勢には「独裁的」との批判もありますが、橋下市長本人も「改革のためにはある種の「独裁」が必要だ」と開き直った発言をしています。
その背景には、多くの国民が民主党政権にたいして感じている「決定できない民主主義」への不満・苛立ちがあると考えられます。消費税を上げる・上げないをめぐっても延々と議論がもめていて重要な決定が何もなされない、311後の対応も後手後手に回っていて復興がなかなか進まない、など。そういった閉塞感を打ち破る存在として、橋下市長の「決断主義」「独裁主義」が支持を集めているのではないか。

このような橋下市長の改革手法は本当に「強引」と言えるのか?という疑問も出ました。これに対しては、4年に1度の選挙で代表者を選び、その人に対して「白紙委任」をするという現在の間接民主制じたいに問題があるのではないか?という大きな問いが出されて議論が広がりました。つまり、選挙時点ではすべての細かい政策方針について同意したうえで立候補者に投票するわけではなく、その立候補者の全体的なイメージや大きな政治方針に賛同して投票したにすぎないところが、実際にその立候補者が当選して政策を実施する段になると、様々な面で有権者と政治家の間で意見の食い違いが起こってきてしまい、当初の期待が裏切れてしまう結果になる、ということです。こうした間接民主主義の限界をどのようにして乗り越えればよいのか?という所までは答えが出ませんでしたが、ハシズム・橋下現象をきっかけにして、こうした大きな政治論点にまで議論が及んだのは良かったのではないかと思っています。

また、個々人の思想信条にまで介入し、憲法に違反するような政策を実施する(君が代条例問題、職員への思想調査アンケートなど)ような橋下市長の政策は絶対に許すことができない、という「全否定」派と、全面的には賛同できないけれども個々の政策によっては支持できる部分もあるのではないか、市民の側がうまく橋下市長をコントロールしていくことも可能ではないか、という「是々非々」派との間でも意見が別れました(橋下市長全面賛成派はいなかったように思います)。これについてもどちらの意見が正しい、という明確な答えは出ませんでしたが、アカデメイアカフェは明確に一つの結論を出すことを目的としているわけではなく、様々な立場の人が集まって様々な意見を交換しあい、ひとつの社会問題に対していろんな意見をもった人がいるのだ、ということを理解してもらえれば良いと考えているので、これで良かったのではないかと考えています。

以上、長文でとりとめない内容となりましたが、おおまかにでも当日の議論の雰囲気が伝われば幸いです。今回のアカデメイアカ フェは参加者も多めで、年齢層や属性も幅広く、議論も白熱して大変良い会になったのではないかと自負しています。最後に一言ずつ感想をもらったのですが、 今回の議論をきっかけにして橋下改革に関心が湧いた、普段は聞けないような話が聞けてよかった、自分とは異なる立場の人の意見が聞けて思考の幅が広がっ た、などと言っていただき大変ありがたかったです。また今後も定期的にこのようなイベントを開催していければと考えていますので、みなさんどうぞよろしく お願いします。機会があればいつでもお気軽にご参加ください。

第4回アカデメイアカフェ 「ハシズムを考える」 のお知らせ

新年度となりました。第4回、アカデメイアカフェのお知らせです。
どなたもお気軽にご参加ください。

当日はUSTREAM:kyoacaで生中継をします(予定)

テーマ:「ハシズムを考える」
紹介文:
 第4回アカデメイアカフェのテーマは、「ハシズムを考える」です。「ハシズム」は「橋下徹氏の強硬な政治スタイルを揶揄するための批判用語、ファシズム(一党独裁)にかけた造語」(出典:はてなキーワード)の意味です。大阪府知事に就任して以来、橋下徹氏は地元の大阪府民(市民)を中心に大きな支持を集めており、メディア等でも何かと話題を振りまいています。橋下氏が打ち出す大胆な政策や強引とも思える政治手法は、熱狂的な支持を集めるいっぽうで、強い批判も絶えることがありません。

 次回のアカデメイアカフェでは、このような橋下氏の政策や政治手法について、自由な立場から議論をすることができればと考えています。橋下支持/不支持という単純な二分法だけで結論を出すのではなくて、橋下氏のどういった部分には共感ができて、どういった部分には問題があると感じるのか、といった議論をしたいという意図です。おもに前半では橋下氏の政策内容、後半では橋下氏の政治手法についてディスカッションをする予定です。

 橋下氏に対する政治的批判/支持を展開するというよりは、「橋下現象」を通して日本の政治のあり方や、民主主義のあり方などについて幅広く考えることができれば嬉しいです。とくに予備知識や専門知識のない方でも、橋下政治について話し合ってみたい、という方であればどなたでも参加歓迎です。お時間ある方はぜひお気軽にご連絡ください。

<第4回アカデメイアカフェ>
テーマ:ハシズムを考える。
日時:4月28日(土)15時~18時
場所:京都大学附属図書館共同研究室
集合場所:当日14時50分に附属図書館前集合

※おおよその人数を把握したいため、参加希望の方は事前にkyotoacademeia@gmail.comまでご連絡いただければ幸いです。
USTREAM:kyoacaでUstream中継予定です。(ただし動画保存はしない)
※当日連絡先(百木携帯:080-3813-5362)

(注意)
当日、読売新聞の記者が取材に来られる予定です。いわゆる「橋下現象」について、識者の意見を聞くのではなく、一般の人が橋下政治をどのように捉えているのか、できる限り中立的な立場から特集記事にまとめたいとのことでした。京都アカデメイアとしては、今回事前に担当記者の方ともお会いしたうえで、取材に来て頂くことになりました。当日の議論内容の一部が記事に使われたり、写真撮影も行われる予定ですが、そのような対象となりたくない方には十分配慮しますし、個人情報にも配慮させて頂きます。また記者の方から、可能であれば後日さらに詳しく参加者に話を聞きたいと依頼されていますが、これについても望まないのであれば断っていただいて一向に構いません。
もしご不明な点がありましたら、事前にお問い合わせください。よろしくお願いします。