イベント報告・4月 京アカ「批評鍋」

発達障害 ヘンな子と言われつづけて

発達障害 ヘンな子と言われつづけて

4月の京アカ「批評鍋」の課題本は、高橋今日子『発達障害 ヘンな子と言われつづけて』(明石書店)。著者の高橋今日子さんは25歳のときに発達障害であると診断を受け、現在は発達障害者を支援する団体を立ち上げ活動を行なっている。本書は発達障害と診断されるまでの幼稚園、小・中・高時代、社会人時代に感じた受難、苦痛が一人称で語られている伝記的な本だ。

今回は京都アカデメイアのメンバーで、引きこもりや問題行動・非行などの相談室を開設している船越克真さんに参加していただき、発達障害の種類・特徴や診断方法についての解説をしていただいた。

後半の議論パートでは、発達障害から、障害と社会の関係について話し合った。発達障害がいつの時代にもある病気なら、昔はどのように処遇されてきたのか。また、近年の日本で発達障害への注目が高まってきているのはなぜなのか…。その背景として、職場や社会におけるコミュニケーション能力の要求の上昇や産業構造の転換があるということにまで話が及んだ。

本書を読んだ人には、著者の経験との不思議な近さを感じた方も少なくないのではないだろうか。たとえば自分を「ドジ」とか「ノロマ」だと感じる人は普通にいる。もちろん、発達障害者と普通の人とでは一定以上の格差があるわけだが、見方を変えれば、程度問題だと言えないこともない。病と聞くと、まずは治療すべき対象だというふうに思いがちだ。しかし、社会や時代によって何が病であるのかはじつは自明ではない。かつては正常だとみなされた振舞いが時代や社会が変われば診断の対象になることは珍しいことではない。病とはひとつの社会現象であると言うことができるかもしれない。その意味では、病は、社会の自画像を映し出す反響板になっているのである。

大窪善人

参考文献:

やさしい発達障害論 (サイコ・クリティーク)

やさしい発達障害論 (サイコ・クリティーク)

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