カテゴリー別アーカイブ: 書評・レビュー

アニメ『けものフレンズ』:動物から人間へ?

大窪善人

1月に放送がスタートしたアニメ『けものフレンズ』が話題です。

このアニメは、動物がヒトの姿(萌えキャラ)になって暮らしている巨大動物園「ジャパリパーク」を舞台にした作品です。

巷では「IQが下がるアニメ」「すごーい!」「たのしー!」「 おもしろーい!」などのワードが飛び交っていますが、しかし「人間」とは何なのかという哲学的な問いを考える上で啓発的です。
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映画『パシフィック・リム』:グローバル資本主義という怪獣

大窪善人


パシフィック・リム [Blu-ray]

ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント(2014-07-09)

 

トランプ新大統領がTPP「永久離脱」の命令書にサインしました。

報道によれば、これにより米国は二国間の自由貿易協定(FTA)に軸足を移すということです。貿易交渉は従来の枠組みに戻るということで、TPP(環太平洋パートナーシップ)の構想が大きく後退するのはまちがいないでしょう。

ところで先日、映画『パシフィック・リム』(2013年公開)をDVDで観たのですが、現在の状況に即して考えると色々と予見的な内容でした。
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要塞戦とパルチザン:大学をめぐる状況

大窪善人


 

ラテン語のintra muros(イントラ・ムロス=城壁の内側)という単語にはもうひとつ「大学の構内」という意味もあります。しかし、大学の由来を考えると「大学」と「城壁」とが結びつくのは少し不思議です。
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反知性主義、啓蒙、真理

浅野です。

 

お正月にどうにか時間をやりくりして書評を書きました。開かれた社会とその敵|書評|京都アカデメイア

 


開かれた社会とその敵 第1部 プラトンの呪文
カール・ライムント・ポパー
未来社(1980-01)

 

この本の観点から大窪さんによる一連の記事にコメントさせていただきます。

 

「現代思想」2月号 反知性主義と向き合う:知性と戦略との対立へ | 京都アカデメイア blogによると、「『反知性主義』の問題は、まず知性と感性との対立ではなく、知性の内側の問題だということ。そして、その知性が、戦略の名の下で、ご都合主義的に利用されてしまうということ」だそうです。知性を戦略の名の下でご都合主義的に利用するのはソクラテス的な真の合理主義者の態度ではないです。そのような戦略の議論には巻き込まれたくないです。

 

カント『啓蒙とは何か』:上から目線ではない、もう一つの「啓蒙」へ | 京都アカデメイア blogにもありますように、本来のカントはポパーの言う真の合理主義者に近く、日本語的な解釈は擬似合理主義者に近いです。もしもソクラテスが携帯ショップの店員だったとしたら、自社の商品を勧めるという縛りなど設けず自由に議論するはずです(客がそもそも携帯電話なんて必要じゃなかったとソクラテスに説得されて帰る場面が目に浮かびます)。

 

鷲田清一『パラレルな知性』:本当に信頼される専門家とは? | 京都アカデメイア blogの内容には少し反論させていただきます。この記事の図式では専門家と素人とがはっきり分かれていて、素人は専門家を信じるべきだとされているように読めます。これはポパーが批判するプラトン的な考え方です。ポパー的な火山学者なら自らの誤謬可能性を意識しつつ、誰でも追試できるようにデータを公開して、また内容をわかりやすく説明することでしょう。

 

今年のまとめ:真理以後の時代? | 京都アカデメイア blogニーチェ『喜ばしき知恵』:ポスト・トゥルー時代の「真理」とは? | 京都アカデメイア blogの内容をポパー的に解釈してみます。ニーチェ的な「フィクションをフィクションと了解しつつ、その中に飛び込んで行って楽しむ」態度とポパー的な「自らの誤謬可能性を意識しつつ、真理へより近づこうとする」態度は、絶対的な真理を押し付けるのでもなくかといって相対主義に陥るのではないという点で共通しています。

 

他方で太田省一『芸人最強社会ニッポン』:面白ければ何でもOK? | 京都アカデメイア blogで紹介されているような芸人的コミュニケーションは、どのような内容であっても言い方がうまければ許容されるという点で、ヘーゲル的弁証法と同じ批判が当てはまります。

 

私としては擬似合理主義者に惑わされず真理を追求していきたいです。

ニーチェ『喜ばしき知恵』:ポスト・トゥルー時代の「真理」とは?

大窪善人


喜ばしき知恵 (河出文庫)
フリードリヒ・ニーチェ
河出書房新社(2012-10-04)

 

知性が厖大な時間を費やして生み出したのは、誤謬以外の何ものでもない。[…]そうしたものに思い至った者、あるいはそれを遺産として継承した者は、生存競争において有利となり、首尾よく後継者を育てることができた。

ニーチェ『喜ばしき知恵』

去年は、アメリカ大統領選やブレグジットでの虚偽ニュース問題に見られるように、人々の感情的な訴えが世界を席巻し、「ポスト・トゥルー」が時代の言葉となりました。
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今年のまとめ:真理以後の時代?

大窪善人

AFP 2016/ JIM WATSON

今年は重大ニュースが目白押しの一年でした。アメリカ・トランプ大統領の選出やイギリスのEU離脱などは世界を驚かせました。

イギリス・オックスフォード辞書は今年一年を表す言葉として「ポスト真理(post-truth)」というものを選びました。

要は、客観的事実にもとづく理性的な議論はどうでもよく、ウソでもいいから人々の感情に訴えた者が勝利すると。その背景にはテレビ・新聞などの旧来のマスメディアが衰退する中で、SNS上でのワンフレーズ的コミュニケーションの広がりもあるのでしょう。

ところで、だとするとなぜ真理を擁護しなければならないのでしょう。なぜ感情よりも真理にこだわる必要があるのでしょう。「ポスト真理」ではいけない理由は何なのでしょうか。
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