月別アーカイブ: 2013年11月

【まとめ】第6回批評鍋 『来るべき民主主義』

第6回目の批評鍋では國分功一郎『来るべき民主主義』を取り上げました。


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参加者:百木漠、浅野直樹、村田智子、大窪善人

話題一覧
○ 10分で本の紹介を紹介
・テーマは学問と社会的実践の架橋

○ 参加者からのコメント、論点
・論壇情報。『社会の抜け道』について(百木)
・参加型民主主義と新しい社会運動(百木)
・行政の肥大化の弊害

○ 社会運動の現在
・SNS、ネットメディアの有効性と限界(浅野)
・「敵をつらない運動」、しかし、旧来の社会運動には批判的?(浅野)
・現状批判/理想像追求タイプの社会運動(大窪)
・現状批判の社会運動は昔からそんなに多かったのか?(浅野)
・社会参加の敷居は下がってきたのか?(浅野)
・中間集団と社会参加の関係(浅野、百木)
・階級闘争的運動から生活形式をめぐる運動への歴史的展開(大窪)
・住民投票のハードルの高さと行政の拒絶性(百木)
・住民投票とは何か(浅野)

○ 政治哲学的な論点
・行政の肥大化問題(浅野)
・伝統的な政治哲学の問題点。行政を適切に扱えない(百木)
・行政の肥大化の日本特有の問題点。許認可行政など(大窪)
・制度と法(by G.ドゥルーズ)の議論(大窪)
・近親相姦と禁止のアナロジー(浅野)
・制度は、いろいろな居場所があること(浅野)
・運動を具体的な成果に結びつけるのは(百木)
・パブリック・コメント制度をより有効にするには

○ ポピュリズム問題と知識人の役割
・ポピュリズムをどう防ぐのか(大窪)
・なぜ民主主義を推すのか(浅野)
・熟議を通じた学びがポピュリズムを抑止する(百木)
・知識人の役割について(大窪)
・知、真理の擁護と自己決定の手助け(浅野)
・政治の専門家が実践に参加する意義(百木)
・國分さん、古市さんのスタンスの違い(浅野)
・京大問題。自治に対するアレルギーがある(百木)
・ある特定の実践への参加の公共的意義はどう評価するのか(大窪)
・それぞれの人が得意分野で働けばいいのでは(百木)
・当事者性とコミュニケーション(浅野)
・偶発的な出会いがきっかけになる(浅野)

今回は3ヶ月ぶりの批評鍋でした。本のテーマである小平市都道の問題は京都からははるか遠い話のようにもみえますが、ある普遍的な問題が含まれているようにも感じました。本書のなかで「政治文化」という言葉が出てきます。政治は、国会や役所や裁判所などの国家機関がきちんと働いてさえいれば問題がない、というわけではありません。政治を支える文化の充実が政治の成熟度合いを条件づける、ということです。著者がかかわった小平市の運動は、まさにこの点を重視した運動でもありました。ところで、政治や民主主義といえば、たびたび、どこかとても縁遠く、日常の暮らしとは関係がないことのように考えられています。たしかに、政治参加の機会は基本的には議会や首長の選挙のときに限られています(人びとが自由なのは投票のときだけで、それ以外は奴隷である、と看破したのはルソーでした)。しかし、政治文化の涵養ということまで視野を広げるなら、さまざまな社会運動や市民的な議論への参加もひとつの政治的参加であると呼ぶことができるでしょう。民主主義について考えるということは、べつに、なにか見たこともないような遠い問題について考えるというのではなく、日常の中にあるごく身近な問題について考えることでもあるのです。今回の読書会を通じてそんなふうに感じました。

【おまけ】

今回の鍋はアンコウ鍋でした。

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批評鍋で取り上げてほしい本があれば、kyotoacademeia@gmail.com までご連絡ください。
次回もお楽しみに。

大窪善人

【関連書籍】

暇と退屈の倫理学

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社会の抜け道

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熟議が壊れるとき: 民主政と憲法解釈の統治理論

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【告知】今週批評鍋を開催します

大窪です。今月はもう1本イベントを開催します。第6回 批評鍋を開催します。

批評鍋は毎回一冊の本を決めて、その本についての感想を実際に鍋をつつきながら、京アカ・メンバーが話し合い、それをust放送するというものです。

今回の課題本は國分功一郎さんの『来るべき民主主義』を取り上げます。
小平市都道328号線をめぐって2013年5月に行なわれた東京都初の住民直接請求による住民投票。著者は住民運動の参加を通して、現在の日本の民主主義の根本的な問題に直面しました。住民の声はなぜ政治に届かないのか。これまでの政治の考え方には決定的な欠陥があったのか。これからの新しい民主主義はどのようにあるべきなのか。いまもっとも注目される若手哲学者の提言です。
批評鍋では論壇の最新事情から、民主主義、哲学・思想と実践の架橋、社会運動のあり方、知識人の役割などについて自由に話し合います。いつもどおり京アカ・アカウントのust、twitterにてコメントも受付けます。

<第6回批評鍋>
日時:11月17日(日)19時~20時半
課題本:『来るべき民主主義』、國分功一郎、幻冬舎新書
ustアドレス: http://www.ustream.tv/channel/kyoaca

アカデメイア相談室第2回「労働問題総論」の報告

アカデメイア相談室第2回「労働問題総論」の報告をします。

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うまく見られないときはこちらから。

発表資料

第1部 法律に関する資格、法律の基礎

    • 登記や供託とは何か
    • 労働法は特別法であって一般法である民法よりも優先される
    • 民事訴訟の証拠上は署名も押印も同等である
    • 逮捕されてから起訴されるかどうかが決まるまでは最大23日間である
    • 行政に形式の整った書類を提出すると正式な返事がなされなければならない(受理しないということはできない)
    • 労働組合の正当な活動は刑事上も民事上も免責される
    • 試用期間中の人や失業中の人でも労働組合に加入(結成)できる

 

第2部 労働問題の実践的な知識

    • 正社員、アルバイト、パートの違い
    • 社会保険完備とは
    • 労働組合とユニオン
    • ストライキの意外な使い方
    • アルバイトやパートでも有給休暇を取得できる
    • (職場の)健康保険では病気やケガで働けない時に賃金の3分の2が補償される(傷病手当金)
    • 不注意で事故を起こしたりしても会社が損害賠償をしなければならず、その負担を従業員がしなくてもよい場合がある
    • 解雇と雇い止め
    • 労働者からの退職のしかた
    • 雇用によらない生き方

 

第3部 学問的な考察

    • 家族賃金モデル(賃金は能力や仕事ぶりの反映ではない)
    • メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用
    • 労働と承認
    • 史的唯物論

 

それぞれ専門家からしたら当たり前のことばかりですが、そうした当たり前のことを幅広く知ってもらうのがこのイベントの趣旨です。

「ためになった」、「おかしいと思っていたことにこれからは反論できるようになった」といった感想が聞かれました。そしてここから次回のテーマも見えてきたので、これからもよろしくお願いいたします。