月別アーカイブ: 2013年12月

2013年 今年の振り返り

大窪です。早いもので、今年ものこすところ僅かとなりました。
今年1年の京都アカデメイアの主なイベント・活動をまとめておきます。

<1月>
批評鍋 第1回『ニートの歩き方』(pha,技術評論社)
教養って何だろう/ゲスト:酒井敏氏(京都大学大学院 人間・環境学研究科 教授)
<2月>
批評鍋 第2回『ヒーローを待っていても世界は変わらない』(湯浅誠,朝日新聞出版)
<3月>
批評鍋 第3回『PLANETSvol.8』(宇野常寛,第二次惑星開発委員会)
カピバクさんに聞いてみよう! 第1回 働くことの意味って?
<4月>
カピバクさんに聞いてみよう! 第2回 「就活」をはじめる前に知っておきたいこと
批評鍋 第4回『ヘンな子と言われつづけて』(高橋今日子,明石書店)
<5月>
――――――
<6月>
アカデメイアカフェ 第6回 経済成長Yes or No?
カピバクさんに聞いてみよう! 第3回 文学と社会思想のあいだ ~『多崎つくる』から『なめ敵』まで~
アカデメイア相談室 第1回 くらしの法律相談~消費者 労働問題
<7月>
カピバクさんに聞いてみよう! 第4回 GACCOHのヒミツ
・京都アカデメイア NPO法人設立
<8月>
批評鍋 第5回 『ゆとり京大生の大学論』(ナカニシヤ出版)/ゲスト:安達千李氏(『ゆとり京大生の大学論』編集者)
書評 『大学とは何か』(吉見俊哉,岩波書店)/大窪善人
活動報告論文をHPに掲載
<9月>
カピバクさんに聞いてみよう!第5回 カピバクさんが聞いてみます!~いま就職しない働き方は可能か?~/ゲスト:浅野直樹氏(京都アカデメイア・スタッフ)
書評 『勝手にふるえてろ』(綿矢りさ,文藝春秋)/村田智子
<10月>
アカデメイアカフェ 第7回 経済成長と幸せ
書評 『日本型「教養」の運命――歴史社会学的考察』(筒井清忠,岩波書店)/百木漠
<11月>
アカデメイア相談室 第2回 労働問題総論
批評鍋 第6回『来るべき民主主義』(國分功一郎,幻冬舎)
<12月>
批評鍋 第7回『ゆかいな仏教』(橋爪大三郎,大澤真幸)
書評『「婚活」現象の社会学―日本の配偶者選択のいま』(山田昌弘,東洋経済新報社)/浅野直樹

今年は新たにスタートした企画が目白押しの年でした。1月に始まった「批評鍋」は12月まで計7回開催しました(そのうち半分程をyotubeで公開しています)。大学論から政治、文化・サブカルチャー、宗教まで、硬軟織り交ぜて、多彩なテーマの書籍を扱いました。今年の「アカデメイアカフェ」は、四条の喫茶店のご協力のもと、「経済成長」をテーマにしたディスカッション・イベントを開催しました。今年は「経済」が何かと話題に上る年でもありました。Ustream生放送番組「カピバクさんに聞いてみよう!」では、百木さんと大窪が毎回話題のテーマを取り上げて話をしました。他のイベントでは話しきれない話題も取り上げました。また、今年7月にはNPO法人を設立しました。それに伴って、HPのリニューアル、書評活動の再開、広報活動を行うなど、京都アカデメイアは新しいスタートをきりました。

京都アカデメイアは活動をはじめてからちょうど3年が経ちました。故事に「石の上にも三年」という諺がありますが、地道な活動を続けるのは見かけ以上に大変なことだったと思います。これまでの活動の後ろには、京アカ・スタッフはもちろん、いろいろな方の協力や支援があったことは言うまでもありません。この場を借りてお礼を申し上げます。まだまだ未熟な部分もあるかとは存じますが、今後ともご支援・ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

大窪善人

【まとめ】第7回批評鍋『ゆかいな仏教』

第7回今年最後の批評鍋では、橋爪大三郎,大澤真幸,『ゆかいな仏教』を取り上げました。


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ゲスト
舟木徹男/宗教学
中森弘樹/社会学
レギュラー
浅野直樹
百木 漠/放送コメント担当
大窪善人/司会

話題一覧
10分で本の内容を紹介
・他の仏教本との違い
・仏教への挑発
・本書の主張

参加者からのコメント、論点
・仏教で肉食はOK?
・仏教界への不満(浅野)
・仏教の核心についての物足りなさ(百木)
・悟りの内容がXとして伏せられている(舟木)
・本書の信仰に対する態度について(中森)
・本書の特徴は教義中心に語っているところ(大窪)

信仰と知をめぐって
・社会学者は宗教の信仰の内容に関心を持つのか(中森)
・信仰と知の対立と学問的アプローチ(大窪)
・論理的・合理的に仏教を語ることの功罪(百木、中森、舟木)
・仏教の定義と信仰と知(大窪)

仏教と社会活動との関係
・大澤氏の「まえがき」の前提は半分外れ、だが、半分は当たっている(大窪)
・仏教が現状の日本で積極的な社会的役割を果たしていない?
・仏教の教義に内在する難点(大窪)
・仏教の社会活動はキリスト教など他の宗教の後追い?(舟木)
・仏教と特定秘密保護法問題
・「慈悲」と社会活動との対立(舟木)
・仏教にとって社会活動は逸脱的か?(中森)
・仏教の社会活動のアスペクト 「正法論」(大窪)

そもそも「仏教」とは何なのか
・「仏教にはドグマがない」という主張について
・「輪廻」は仏教のオリジナルではない(大窪)
・何十億年も先に一人程度しか覚れない、と言われて仏教徒は絶望しないのか?
「慈悲」「回向」はオマケ?
・3章以降は仏教の「オタク道」(舟木)
・日本人は仏教を拒絶的に受容してきた(大窪)

仏教は人間を救うか?
・本書は信仰、実存についての要素が弱い(百木)
・人間には「スイッチの切れない欲望」がある(中森)
・「悟り」に魅力を感じるか?(舟木)
・他宗教でも社会学でも悟りは開ける!?(大窪)
・僧伽(サンガ)と大学とのメタフォリカルな類縁性(大窪)
・現代の日本仏教への批判(浅野)
・仏教徒は自己チュー? 利他の問題について
・資本主義と仏教、仏閣ライトアップ問題
・日本仏教の不幸な歴史的経緯

まとめと告知
・課題としての日本仏教論(舟木)
・悟りのアウトソースという発想はできないか(中森)
・対称性の宗教としての仏教(百木)
・やはり仏教界に対する不満はある(浅野)
・幹と枝葉を見分けて原理に立ち戻ることが大事(大窪)

放送では言いきれなかったこと

宗教の話題はタブー?

先月に引き続き、批評鍋を開催しました。今回は批評鍋初の宗教ジャンルの本ということで、私にとっても、とても楽しい回でした。日本では「政治」、「野球」、「宗教」についての話題を公的な場に持ち出すことはタブーだと言われることがあります。その理由は、これらの話題には意見や信条の対立がつきものだからでしょう。もちろん、誰でも対立よりも調和や宥和が成り立つ状態の方がいいにきまっています。しかし、たとえ対立を引き起こしてでも、対話や議論を行なわなければならない場面があることも確かです(たとえば年金制度、遺伝子工学技術の導入の是非、憲法の問題)。また、日常的なコミュニケーションと公共的なコミュニケーションとがその結びつきを見失うとしたら、それは問題だと言われるかもしれません。以前京アカで、普段はなかなかできない、道徳、倫理、宗教について話せる場所を作れたらいいね、という話をしたことがあります。今回はそのはじめの一歩になったかなと思います。

■『ゆかいな仏教』に対する激烈な批判の理由

日本に仏教が伝わったのは今から千数百年も昔だといいます。今日、仏教は日本社会や日本人の精神に広く深く染みわたっているようにみえます。たとえば「縁起」、「四苦八苦」、「挨拶」のように仏教由来の日常語がたくさんあります。また、仏教についての本で広い支持を受けている作家も数多くいます。それから、NHKの「ゆく年くる年」は年末年始の風物詩になっています。その意味では、日本人の多くは仏教についてよく知っている、少なくとも仏教的な考え方に親しんでいると感じているようにみえます。
『ゆかいな仏教』は、出版されるやいなやインターネットに批判まとめサイトが立ち上がるなど激烈な批判に曝されています。これほど批判が集中する書籍も稀でしょう。そうした反応を引き起こした理由のひとつは、そこで語られている仏教観や解釈が、私たちの常識とあまりに違っていたからではないでしょうか。

■「思想の不法侵入」

大澤氏はある誌上で「思想の不法侵入」ということについて書いています。「不法侵入」とは何か? この言葉はもともと思想家 G.ドゥルーズから引かれたもので、人間は、通常の状態では物事を深く考えたりすることを欲しないという直感を前提としています。人間がほんとうに思想的に深く思考するのは、どうしても考えざるを得なくなるような、外的なショックが与えられたときだけだといいます。それを「不法侵入」という言葉で表しています。「不法侵入」は、より深い思考を(拒絶反応を引き起こしながら?)インスパイアする、いわば媒体なのです。
『ゆかいな仏教』は社会学の立場から、基本的な仏教の歴史

【告知】批評鍋12月号

今月もやります、第7回 批評鍋。
批評鍋は毎回一冊の本を決めて、その本についての感想を実際に鍋をつつきながら、京アカ・メンバーが話し合い、それをust放送するというものです。

今回の課題本は橋爪大三郎さん、大澤真幸さんの『ゆかいな仏教』を取り上げます。

ゆかいな仏教 (サンガ新書)

ゆかいな仏教 (サンガ新書)

<仏教よ、お前は何者なのか? […] 葬式仏教と揶揄されたり、「禅問答」のように、やたら難解なイメージがつきまとったりの、日本の仏教。もともとの仏教はでも、自分の頭で考え、行動し、道を切り拓いていく、合理的で、前向きで、とても自由な宗教だった! 日本を代表する二人の社会学者が、ジャズさながらに、 抜群のコンビネーションで縦横に論じ合う、仏教の真実の姿。日本人の精神に多大な影響を与えてきた仏教を知れば、混迷のいまを生きるわれわれの、有力な道しるべが手に入る!>(Amazon.com 内容紹介より)

仏教とは? 宗教とは? 市民社会と宗教との関係とは? 京アカ批評鍋初の宗教本に挑戦します!

<第7回批評鍋>
日時:12月22日(日)20時~21時半
課題本:『ゆかいな仏教』、橋爪大三郎、大澤真幸、サンガ新書
ustアドレス: http://www.ustream.tv/channel/kyoaca
(今回からustreamチャットでもコメントを受付けます。ぜひご参加ください。)