リポート: 「やっぱり知りたい!京都学派」 第2回「京都学派と哲学」を開催しました

 
大好評の「やっぱり知りたい!京都学派」/中島啓勝 (京都アカデメイア塾×GACCOH)の第2回を開催しました。

告知エントリ

第2回のテーマは”京都学派と哲学”。西田幾多郎や「京都学派」のメンバーが、現実政治の変容とどのように関わって行ってしまうのか、というのが今回の話です。

講師は中島啓勝さん。西田の難解な哲学も、ユーモアを交えながら解説します。

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ナビゲーター:中島啓勝 氏

 

西田幾多郎の主著は『善の研究』ではない!

大正期の自由な雰囲気の中で読まれ、戦後直後には物資不足にもかかわらず、苦しみからの救いを求めて多くの人の注目を集めた書物、『善の研究』(1911年)。一般には西田の主著とされますが、その常識をひっくり返してしまうのが今回の講座のポイントです。

まずは西田哲学の解説からスタートします。

『善の研究』のテーマは、「真の実在」、つまり、「”ほんとう”とはどういうことか?」 であると言います。デカルト以来の西洋の哲学の伝統では、認識する”主体”と認識される”客体”との区別にこだわります。

しかし、たとえば、「パンッ!」と手を叩いて驚いた瞬間に、”認識する私”はほんとうにあるのか? むしろ、「私」という主体が認識する以前に「純粋な経験」があるのではないか。西田はそれを「主客同一の瞬間」と呼び、これこそが「真の実在」だと考えました。

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哲学的な独我論? 「場所」の概念へ

しかし、こうした西田の哲学は、客観的にはどう確かめられるのかという反論がおこされます。つまり、「主客同一の瞬間=真の実在」と言うが、それこそ西田の主観的な認識に過ぎないのではないか、と。

この批判を受けて西田は説明を転換します。

西田は、「場所」(1926年)という論文で、あらゆる実在は「何かに於いてある」という構造をもつと主張します。たとえば、「私は日本人だ」という文は、「私」が「日本人」という、より一般的なカテゴリーに含まれている、ということを表します。

さらに、この述語の「日本人」の部分には、「人類」や「生物」など、より一般的な言葉を入れることができます。さらにもっとも一般的なカテゴリーを突き詰めていくと、ついには、この「何かに於いてある」という構造自体を基礎づける、究極的に一般的なカテゴリーに行き着きつくはずです。西田はそれを「絶対無の場所」と呼びました。

西洋哲学では、究極的な根拠は、絶対的な存在者である「神」、つまり、”ある”ということに求められます。しかし、西田の哲学では究極的な根拠は「無」、つまり、”ない”ということへと行き着く、という違いがあります。

一見正反対にみえる西洋哲学と西田哲学ですが、じつは同じことを違う角度から表現しているだけではないのか。中島さんはそれを、加減混色の例えを使って説明しました。

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集めると白い光になる”加法混色”と黒色になる”減法混色”。それぞれを西洋/西田哲学に対応させて考える。

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田辺元の「種の論理」と全体主義

授業の後半では、戦間期に、「京都学派」のメンバーが、ナショナリズムや戦争、全体主義に関わっていったのかということが語られます。

西田哲学の弱点を突いた田辺元の「種の論理」や文学界の「近代の超克」、西田の弟子・高山岩男らが参加した「世界史の哲学」は、深遠な哲学である一方で、結果として戦争に加担していってしまいました。

田辺は、西田の「絶対無の場所」を批判して、そのかわりに「種の論理」を持ち出します。田辺は、個別的なカテゴリーである「個」と普遍的な「類」は直接示すことができないので、間接的な「媒介」が必要であると主張します。

だから、普遍的な世界秩序のようなものを導くには、いったんその中間にある「国家」を媒介しなければならない。しかし、こうした論理は、容易に、素朴な自己滅却と大日本帝国への同一化を導いてしまった事実を無視することはできません。

最後に、中島さんは、戦後永らくタブー視されてきた「京都学派」を見直す動きがあると指摘します。
しかし、西田や「京都学派」をポジティブに、あるいは、ネガティブに評価するにせよ、彼らの哲学的な試みのどこに問題があって、どこが救出できるのかを考えることは、「危機の時代」においては非常に重要なことでしょう。

いよいよ次回は最終回、「京都学派と現在」9月26日(土) です。
申込みはこちらから。

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文・写真:大窪善人

 
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