研究者、大学院生必見! 京大の異分野融合パンフレットがすごい

大窪善人

CPIER(京都大学 学際融合教育研究推進センター)が素敵なパンフレットを発行されています。

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大学の刊行物というと、”地味で面白みに欠く”というイメージがありますが、こちらの冊子は一味違います。
オール・フルカラーでとてもポップな仕様になっていて、パラパラとページをめくっているだけでも楽しくなってきます。カフェの本棚なんかに置いてあっても全然違和感ないです。

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本書は、推進センター設立5年目にあたるということで、装丁やデザインだけではなく内容も充実したものになっています。

このセンターのおもしろい特徴は、自身では研究も教育も行わないということです。それぞれの学問分野を横断的に融合して結びつけることに特化していて、「ユニット」と呼ばれる30以上のさまざまなプロジェクトの支援を行っています。

各ユニットは、例えるなら「大学のサークルのようなもの」だといいます。有志で立ち上げたサークルに対して、大学が公式の活動としてさまざまな支援をする。それが、新たな研究や教育の土壌になるといいます。

この本は2部構成になっていて、第1部が実践編、第2部が思想編です(どうして実践が先で思想が後なのか? その理由は、ぜひ実際に読んで確かめてみてください。じつはここにも仕掛けがあります)。実践編では、毎月開催される「分野横断交流会」や、より深く議論したい人同士が集う「学際研究着想コンテスト」などが紹介されています。

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このコンテストの受賞者には研究資金が送られるということで、活発な参加へと誘導します。
でもそれはあくまでも工夫のひとつで、目的は研究者の育成にあるといいます。

コンテスト立ち上げへの熱い想いが綴られています。

今、研究者同士が研鑽しあう機会はぐっと減っているように感じる。たとえば、セッションが細切れになって満足な議論時間がとれない学会は十分に研鑽の場となっていると言えるだろうか? 現在の論文の査読システムは、研究者が学問を深めるシステムに足るだろうか?
残念ながら心からYESとは言いがたい状況を感じている。

「分野と制度、そして目先の成果も超えて、根源的な研究者としての想いを重視したい。現状からはみ出そうとする研究者を刺激し、つなぎたい」。

ちなみに、このコンテストは、チームに京都大学の研究者がいれば学外の人も参加できるようです。募集期間は5月〜6月のあいだ。挑戦してみるのもおもしろそうです。

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他にも具体的な工夫やアイデアが散りばめられていて、たとえばワークショップ支援では、あえて「先着順」にして参加を促したり、「芸」としてのファシリテーション(進行役)の洗練など、異分野融合の方法論もまとめられていて勉強になります。

“アミューズメント”だけではない”インタレスティッド”な面白さ楽しさをどう作り出すのか。そんなビジョンが見えてきます。

社会全体が貨幣資本主義に染まり、大学もまた成果的、商業的な考えに飲み込まれようとしているなか、学問こそが本来論や歴史を語らなければならないと思うのである。

パンフレットは「非売品」ですが、センターのHPから問い合わせると手に入れることができます。
ほしい方はお早めに。
 

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