大窪善人
このゴールデン・ウィークを利用して、滋賀県守山市 佐川美術館で開催中の山下清展に行ってきました。
美術館は琵琶湖のほとりにあります。
山下清といえば、小さい頃に「裸の大将」というドラマをよく見ていました。旅先でいろいろな人と出会って、トラブルの解決に活躍して、最後に貼絵をそっと置いて去っていくというお馴染みのストーリーです。
さて、今回の展示では、ドラマで描かれたような、多分に戯画化された「山下清」ではなく、「画家 山下清」を全面に出す内容でした。
清は、ドラマとは違って旅先ではほとんど絵を描くことはしなかったそうです。旅に飽きたら、ときどき地元の学園(救護施設)に帰って、それから頭のなかにあるイメージを思い出して描いていたそうです。一種の特殊能力ですね。
実際に作品を見ると、情報量の多さに圧倒されます。たとえば、「ロンドンのタワー・ブリッジ」という作品では、紙をこより(?)にして貼ってあったりするのですが、間近で見るとかなり立体感があるのがわかります。写真や画集ではディテールの再現が追いつかないです。
展示作品の中でも一際目を引くのは、やはり「長岡の花火」ではないでしょうか。夜空をバックにして、打ち上げ花火が輝きます。
放射状に伸びる一本一本の火花は、1ミリ以下の極細の線です。私ははじめ、こより糸かなと思っていたのですが違いました。この細い線は、紙を破いた時に出てくる断面のわずかな明るい繊維で表現されていました。非常に細かい仕事です。
ところで、展示全体を見ていて、あることに気づきました。絵のモチーフは、風景や建物、動植物がほとんどで、人物画がほとんどないんです(もしかしたらそうした作品も描いているのかもしれませんが)。人が出てくる作品でも、引いた絵だったり、みんな同じような顔・形でほとんど個性はありません。しかし、一方、静物や動植物の方は、圧倒的な密度と迫力があるんです。なんとなく、山下清の人となりが垣間見えるようでした。
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展覧会は来月中旬まで開催されています。
佐川美術館HP
http://www.sagawa-artmuseum.or.jp/plan/2015/02/post-53.html
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