京都アカデメイア塾「論文の読み書き」クラスのために作成した、伊丹敬之、加護野忠男『ゼミナール 経営学入門』第7章演習問題答案例です。
第7章 資本構造のマネジメント
(演習問題)
1.
旧ソ連や中国などの共産主義体制の国々で、市場経済へと移行する際に、株式会社制度の整備がとくに重要となるのは、株式会社制度が市場経済を基礎とした資本主義体制の根幹に関わるからである。株式会社では株式数に応じて議決権が付与されるので、私的所有に基づく決定が行われるという点が決定的である。そのおかげで柔軟かつ活発な企業活動が期待できる。
2.
銀行からの負債など、他人資本を借り入れると、利子を負担しなければならない。損金算入して税制上優遇されるといっても、負担であることには変わりない。また、多額の借り入れをすると、銀行などの貸主から経営を指図される恐れもでてくる。自己資本にはこれらのデメリットがないので、無借金経営が企業の優良度の指標であるという常識があるのである。
3.
出典:JPX「2014年度株式分布状況調査の調査結果について」p.5
http://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/examination/nlsgeu0000010nfj-att/bunpu2014.pdf
第二次世界大戦後の持株会社・財閥の解体により、個人株主の比重が高まった。その後、1964年の日本の OECD 加盟などを経て、資本の自由化が進んだことに伴い、外国人株主の比重が増加してきた。特にこの30年間ほどでは、インターネットの普及などのグローバル化が進展したことがこの外国人株主比率の増加という動きを後押ししたと考えられる。事業法人等は、外国人株主に経営を乗っ取られることを防ぐためなどの理由で、1990年代までは株式の持ち合いを積極的に行っていたが、2000年頃から会計で株式の時価評価をすることを求められるようになり、本業に集中すべく保有株式を放出する傾向になった結果、株主構成に占める比率が低下した。この理由に加えて、都銀・地銀等は、バブル崩壊から2000年前後にかけての再編に伴い保有株式を整理したので、比率を大きく低下させることとなった。そのうちの一部は信託銀行等が保有するようになったと見込まれる。