人環フォーラム・学生講演企画(1)

 京都アカデメイア・スタッフの百木です。昨日の人環フォーラム・学生講演企画の様子をお伝えします。昨日は大学院生3名に、自分の大学院体験をふまえつつ、大学院生活がどのようなものなのか、人環とはどういうところなのか、についてお話をしてもらいました。残念ながら、我々の力不足ゆえにあまり人が集まらず、お客さんは10名程度でした。

正直なところ、最近京都アカデメイアのイベントは集客力が落ちているので、この点は今後の我々の課題です。お忙しいなか、せっかく面白いお話をしてくださった3名の院生の方々には申し訳なかったです。ただ前向きにとらえるとすれば、少人数のイベントゆえに参加者全員に発言をしてもらうことができ、質疑応答の時間は非常に充実していたかと思います。メモを見ながら書いているうちに長くなってしまったので、講演者それぞれに分けてブログ記事をアップします。

最初の講演者は、人環D2の中森弘樹くん。社会学を専攻しており、研究者志望。文系研究者を目指す大学院生のデメリットについて話してくれました(大学院生になるメリットについて聞く機会はあっても、デメリットについて聞く機会はなかなかないから、とのこと)。

1)大学院生(とくに文系、とくに京大、とくに人環)は研究に関して自由すぎるがゆえに、かえって何をしていいか分からなくなってしまうケースがある。

2)将来の見通しが立たない。現在、文系の研究職は就職がかなり厳しい状況にあり、何歳時点で就職できるかという見通しが立てづらく、人生設計が困難。

3)研究者として実績を積むためには、自分がやりたい研究ばかりをやればよいのではなく、学会のお作法にのっとった研究をせねばならない。そのことが苦痛になるかも。

4)大学院生の社会的位置づけがあいまい。実家に帰ったときに親戚などに自分の状況を説明するのに苦労することが多い。「いつまでもフラフラして…」と言われたときに、なんと言葉を返せばよいか。

以上のようなデメリットについて、なんだそんなの全然大したことないじゃん、と思える人はきっと勉強・研究が好きな人なのでしょう、と中森くん。中森くん自身はあまり「勉強が好き!」というタイプではないので、上記のようなデメリットでストレスを抱えたり、悩んだりすることも多い。そのような状況を踏まえたうえで、本当に研究職を目指す(博士課程に進む)かどうかを考えたほうが良いのでは、というアドバイスでした。また、研究職を目指す際には周囲の人々(家族、恋人など)への配慮も必要でしょうとのこと。そのうえで、もし進路に悩んだりする人がいれば、ぜひ先輩である院生に相談をしにきてくださいね、という締めくくりでした。

「今日はどちらかといえば悲観的な話をします」と宣言していた中森くんですが、同じく文系で研究職を目指す自分(百木)としても共感できる部分は多かったです。そのうえで、僕自身は中森くんに比べれば勉強や研究が好きなほうなのかなと思いました(というか、勉強が好きでなければこんなにリスキーで不安定な道は選べないというのが僕自身の考え)。

会場からの質問。

質問1)大学院に進む際にキャパシティが必要、という発言があったが、実際に大学院では学際的な勉強・研究をする余裕(キャパシティ)はあるのか?

→必要な単位などで強制的に他分野の先生のゼミや授業に出ないといけない仕組みになっているので、最低限はそういうことを勉強する機会はあります。あとは個人それぞれの努力次第!

質問2)社会から大学(院)を振り返ったときに、現在の大学がニヒリズムに陥っているように見える。国立大学なら(国民の税金が使われているのだから)、自分の研究にもっと誇りと自覚をもっていて欲しい!

→「社会の役に立つ」ことばかりを考えていると、逆に「社会の役に立つ」研究が困難になってしまうという逆説がある。もちろん「社会の役に立たなくてよい」というつもりはないので、その点で常にせめぎ合っている状態です。

(つづく)

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