百木です。今日はちょっと宣伝をさせてください。
僕たちの友人の櫻井拓くんが編集・発行している雑誌『ART CRITIQUE』の第2号が発売になりました。『ART CRITIQUE』は美術批評を中心としたインディーズ雑誌で、美術批評の他にも経済、文芸、社会思想、哲学など多彩なコンテンツが掲載されています。
この雑誌はあくまで櫻井くん個人が編集・発行している雑誌なのですが、コンテンツの一部には京都アカデメイア周辺の人たちも対談に参加したり、論考を寄せたり、取材に協力したりしています(櫻井くんは数年前まで京大の大学院で一緒に勉強をしていました)。僕(百木)も柴山桂太先生(滋賀大学准教授)へのインタビューに協力させていただきました。
雑誌の内容について詳しくはこちらのサイトを見て頂ければと思うのですが、アートレビューをはじめ、詩人とアーティストの対談(ともに櫻井編集長の注目株だそうです)、経済学についてのインタビュー、「アジール」についての座談会、芸術・社会思想に関する論考など、実に興味深く刺激的なコンテンツばかりです。
僕も先日、現物をもらったばかりでまだ全てに目を通せてはいないのですが、ひとまずチェックした詩人×アーティスト対談とアジール座談会と社会思想の論考はどれも面白いものばかりでした。とくに「アジール」対談は、僕の所属している人間・環境学研究科の先輩にあたる舟木徹男さん、信友建志さん、小林哲也さんなどが参加しておられ、いろんな意味で大変楽しめました。グローバル資本主義のもとで社会が流動化し、インターネットやソーシャルメディアが発達した現代社会では、「アジール」は従来とはまた違った意味合いを帯びて再構築されてくるのかもしれませんね。網野善彦が『無縁・公界・楽』などで行なっていた議論が、現代日本で文脈を変えて再登場してくるのは大変興味深いことです。
また、インタビュアーの自画自賛のようになりますが、柴山桂太先生へのインタビュー「経済学は“ストック”を思考できるか?」も大変面白い内容になっていると思います。「成長主義か脱成長主義か?」という質問から始まり、そもそも経済学のなかで成長理論が登場してきたのがここ数十年のことであること、一口に経済成長といっても様々な種類があること、現在の経済学は「フローの成長」ばかりに注目して「ストックの重要性」への視点が欠如していることなど、様々に重要な指摘がなされています。柴山桂太先生は、『TPP亡国論』で有名になった中野剛志さんとの対談本を出されるなど、最近注目を集めておられる経済学者(という枠に当てはまらない方だと思いますが)です。興味ある方はぜひチェックを。
また今回の第2号は表紙の装丁も大変かっこいい!アーティストの魚住剛さんによるものとのことですが、デザインが美しくスマートな印象で素敵です。そして中身を開いてみると、多様で濃い内容のコンテンツがぎっしりという(笑)身内贔屓を自覚しつつ、「アート×学問」というテーマでこれだけの強度とセンスをもった雑誌は現在なかなかないのでは…と本心から思っております。
関心を持たれた方はぜひご購入を。こういった意欲的な試みをもつ若者を支援するつもりで手にとってもらえると、僕としても嬉しいです。