西尾維新『猫物語(白)』の書評です。
本作では語り部が羽川翼に変わり、方向性も大きく変わったように感じられます。阿良々木暦が語り部だったときのようなギャグパートがほとんどなく、シリアスな純文学テイストになっています。
語り部=主人公であり、その主人公の内面が描写されます。その点で、内面が怪異として描かれる『化物語(下)』とは異なっています。
また、別人格(ブラック羽川)を一つの人格に統合しようとするので、同一人物の矛盾した面をそのまま受け入れようとする『猫物語(黒)』とも異なります。
p.290のあとがきにある「どこまでが自分なのか」という問いや、p.10の冒頭部にある「私とは何なのか」という問に正面から答えようとした作品に仕上がっています。