話題の本がわかる! Vol.02 『ライフ・シフト』振り返り

6月29日、ゲストハウス・カンノコにて「話題の本がわかる! 」第2回を開催しました。

今回取り上げたのは、L・グラットン&A・スコット『ライフ・シフト』(東洋経済新報社、2016年)です。

本書は2016年の発売ながら、いまだベストセラーとして読まれ続けている話題の本です。先日話題になった、金融庁の「老後資金2000万円不足報告書」問題に象徴されるように、現行の制度は、長寿化の動向にまったく対応できていません。その意味で、わたしたちが「人生100年時代」の将来を考えることは、切実な課題なのだと思います。

本書の特徴は、100年ライフをたんにお金の問題だけで見てはいけないという主張です。たとえば、健康や人間関係、余暇時間といった「無形の資産」の重要性が、今後ますます増してくるといいます。

「無形の資産」とお金を生み出すには、時間の使い方がカギになります。余暇をたんなる暇つぶしとして浪費する(=レクリエーション)のではダメで、これからは人生が”マルチ・ステージ化”するので、リ・クリエーション、つまり、新しいスキルを身につける講座を受けたり、金融リテラシーを磨いたり、身体を鍛えたりする”自己投資”こそが求められるのだと。

イベントでは、ナビゲーターが本の内容を紹介し(ちょっと丁寧にやりすぎたかもしれませんが…)、そのつど参加者から質問やコメントをいただきました。

そのなかで出た意見として、「無形の資産」という見方は面白いが、結局は”いかに経済資産を築くのか”という話でしかないのでは、という手厳しいコメントもありました。

たしかに、現行の経済や社会の仕組みを前提に、もっぱら個人が必死に努力して生き残っていくという見立ては、どこか息苦しさも感じます。リ・クリエーション(再創造)とは、せいぜい所与の環境に働きかけるのであって、世界を一から創造するクリエーションではない、ということなのかもしれません。

ともあれ、経済学からみたライフ・プランとしてはとても面白いと思うので、未読の方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。


これまでのイベント
第1回 新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』

Text:Yoshio Okubo

話題の本がわかる! Vol.02 『ライフ・シフト』

〈話題の本がわかる!〉 Vol.02は、L・グラットン&A・スコット『ライフ・シフト』を取り上げます。

2016年の発売以来大きな反響を呼んでいる本書。「人生100年時代」とも呼ばれる長寿化が進む現代。その一方で、個人や社会もそれに対応する準備ができていないと警鐘を鳴らします。

これからの私たちの仕事や家庭、お金との関係はどうなるのか。新時代を生きるための必読書の一つでしょう。読もうと思って積んだままになっている方も、ぜひこの機会にご参加くださいませ。

日時:2019年6月29日(土)17時30分〜19時30分(予定)

場所:ゲストハウス・カンノコ(地下鉄北大路駅徒歩5分)

※参加無料・予約不要

〈話題の本がわかる!〉

「気になっていたけどまだ読んでいない」「読むの面倒くさいけど概要だけ知りたい」も安心してご参加ください。担当者による書籍内容の要約&ディスカッション形式で構成します。

本企画に関するお問い合わせ等については、お問い合わせフォームまたはkyotoacademeia□gmail.com(□に@を入れてください) までお尋ねください。

イベント「話題の本がわかる! 」振り返り

4月27日、ゲストハウス・カンノコにて「話題の本がわかる! 」第1回を開催しました。

今回取り上げたのは、新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社、2018年)。

イベントでは、舟木徹男(京都アカデメイア)が、図書の内容をまとめたレジュメをもとに解説し、後半、参加者を交えたディスカッション…という予定でしたが、冒頭から次々と疑問や意見が行き交い、会場は大変盛り上がりました。

とくに印象的だった議論に、そもそも「知能」とか「意味を理解する」というのは、どういうことなのかというものがありました。

ナビゲーター:舟木徹男

本書では、AI(人工知能)が苦手とする「読解力(意味の理解)」を鍛えることが、子どもたちの教育には必要だと主張される一方、イベントでは「大人でも読解力が十分あるとどこまで言い切れるのか」、読解力の背景には、「常識」、ある前提の共有(コモンセンス)があるのではないか、じつは「常識」と言われていること自体にも偏りや排除の問題があるのではないか、などの意見が出されました。

ヒトの知能についてはまだまだ未知の部分も多いといいますが、ひょっとすると、そこに、AIにできる仕事、できない仕事を見極めるヒントがあるのかもしれません。

ご参加いただいた皆さまには、ありがとうございました。

守田敏也さん講演「内部被曝からの命の守り方」動画公開

2018年5月12日(土)に左京西部いきいき市民活動センターで行われた守田敏也さん講演「内部被曝からの命の守り方」の動画を公開しました。

参加者が少ないのがもったいないと思うほどわかりやすくお話いただきましたので、よろしければご視聴ください。

それでは今後とも京都アカデメイアをよろしくお願いいたします。

【告知】 第6回 京アカゼミ「今こそ廣松渉を読み返す」開催!

京都アカデメイアの会員が、毎回、自身の研究テーマについて発表するイベント「京アカゼミ」。第6回は、「今こそ廣松渉を読み返す」。昨年『廣松渉の思想』を刊行された、渡辺恭彦さんが担当します。廣松渉の思想について易しくお話いただく予定です。関心ある方はどなたでもご参加ください。


廣松渉の思想 : 内在のダイナミズム

みすず書房(2018年03月01日)

 

日時:2019年2月24日(日)15時〜17時

場所:京都市左京西部いきいき市民活動センター会議室4
※参加無料・予約不要

報告者紹介:渡辺恭彦(わたなべ やすひこ)
1983年生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。現在 奈良女子大学非常勤講師。思想史専攻。

書評:週刊読書人ウェブ(評者:小林 昌人)

本企画に関するお問い合わせ等については、お問い合わせフォームまたはkyotoacademeia□gmail.com(□に@を入れてください) までお尋ねください。

これまでの内容はこちら
第5回 ハンナ・アーレント入門/百木漠
第4回 アジールの現在と未来/舟木徹男
第3回 別れはなぜ在るのか:『別れの社会学』序説(あるいはその構想)/中森弘樹
第2回 精神分析から見る現代の知のあり方/浅野直樹
第1回 瀬木比呂志の裁判学:いわゆる「絶望の裁判所」論をめぐって/岡室悠介

ユヴァル・ノア・ハラリ『21世紀のための21のレッスン』

大窪善人




(1970年01月01日)

 

あけまして おめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
 
一年のはじめには、少し大きな視点で捉えてみるのもいいかもしれません。

本書は『サピエンス全史』『ホモデウス』に続く、ハラリの最新作です。

前作までで人類誕生の歴史〜未来の歴史が描かれましたが、前作まで読んだ方は、「じゃあ、結局どうすればいいの?」と感じたのでしょうか? 今回はいよいよ現在の出来事が語られます。

現代を特徴づける要素、まず挙げられるのはテクノロジーの発展です。最近よく話題になる人工知能(AI)や情報技術、あるいは脳研究や生命工学の発達は、私たちの生活を大きく変えつつあります。
では、その変化は、社会全体や私たち一人ひとりの人生にとって、どのような”意味”があるのか? それはほんとうに幸福なことなのか? というのが著者の問いです。 続きを読む

憲法読書会のお知らせ

こんにちは、京都アカデメイアの大窪です。
今週28日の読書会イベントを開催します。

政府が現憲法の改正に意欲を見せる昨今。
憲法は変えるべきか、変えるべきでないのか…。
問題の肝を捉えるには、「そもそも憲法って何なの?」という根本的な理解が重要です。そこで読書会では、憲法にかんする書籍を輪読することで、理解を深めたいと思います。

今回のテキスト:篠田英朗『ほんとうの憲法』(ちくま新書)

日時:12月28日(金)13時~
場所:JR二条駅改札前集合(13時)
参加費:無料

当日は私(大窪)がテキストの内容をレジュメにまとめてきますので、それを下敷きにディスカッションします。

参加希望の方は、
kyotoacademeia@gmail.com までご連絡ください。

『インスタグラムと現代視覚文化論』:インスタグラムに崇高はあるか?

大窪善人




(1970年01月01日)

 

おそらく本邦初となる、インスタグラムについての本格的な研究書が出ました。
本書は、ロシア出身のメディア理論家であるレフ・マノヴィッチの論文パート(左開き・横書き)と、それを踏まえた日本の書き手による論集パート(右開き、縦書き)からなるユニークな構成になっています。
 

インスタグラムの魅力とは

2010年に登場したインスタグラムは、いまや世界中で4億人以上のユーザー数に達し、毎日8000枚の写真がシェアされているといいます。それほどの人気を集めている理由とは、何なのでしょうか。 続きを読む