河合雅司『未来の年表』:見たくない現実を見る

大窪善人


 

戦争や災害による破局が、突然降りかかる突発事だとすれば、もう一つは、静かにじわじわと忍びよるタイプの破局です。

本書は、人口の減少傾向を原因として、近い将来生じる社会的影響のシミュレーションで、20XX年に何が起こるのか、データにもとづいて論じられています。

たとえば、水道管や橋、道路などの多くは高度経済成長時代につくられたもので、老朽化が進んでいるものも多くあります。
ところが、人口減で利用者が減ってくると、リニューアルのためのコストがかかりすぎて財政を圧迫。試算によると、水道管の更新は年間1%にも満たず、すべて新しくするまでには130年もかかるといいます。さらに、技術者の減少も問題で、すでに職員不足が生じている事業者もあるといいます。

オリンピックが開かれる2020年には、女性の2人に1人が50歳以上となり、翌年には、団塊ジュニア世代の介護離職が大量発生するといいます。そうなれば、勤労人口の減少による企業活動へのダメージも避けられず、その間、介護費用を誰がどう負担するのかも問題となってきます。

また、子どもの数も減り続けており、その背景には婚姻件数の減少があります。2035年には3人に1人の男性、5人に1人の女性が生涯独身の「未婚大国」が誕生するといいます。
そうなると、いよいよ地方の存続も厳しくなり、2040年にはおよそ半分の自治体が消滅の危機に陥るといいます。

高齢化、少子化、労働人口の退場によって、社会のいたるところに綻びが生じていく・・・。読み進めるにつれ、暗々たる気分になってきますが、では、何か対策はないのでしょうか。

第2部「日本を救う10の処方箋」では、現在、政府が進める政策(外国人労働者、AI,女性・高齢者の活躍)が検討されますが、いずれも根本的な解決にはならないといいます。

ではどうするのか。著者は、「縮小」を前提とした、大胆な発想の転換が必要だと訴えます。たとえば、少子化対策として、第3子以降には1000万円規模の大型給付を行う。もはや、そのくらい思い切った手を打たないとダメだということでしょう。

少子高齢化や社会保障の話題では、何かと世代間対立がクローズアップされがちです。先日参加した読書会でも「シルバー民主主義」がテーマでした。
たしかに、政治学者の齋藤純一氏も言うように、”政治的に平等な市民による民主政治”はとても大切なことで、そのために経済的な平等が要請される側面もあります。

しかし、いまや、そうした”民主主義のゲーム”を成り立たせる前提自体が危機に瀕しつつあるというのが、人口減少社会の根本的な問題でしょう。
ではどうすればよいのか。問いはまだ、未解決のままです。

 

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