西尾維新『化物語(下)』書評

浅野直樹

西尾維新『化物語(上)』書評 | 京都アカデメイア blogの続きで化物語の下巻の書評です。


化物語

講談社(2007年01月15日)

本書のメインテーマは恋愛ですね。

 

まず、基本的な枠組みがいわゆるギャルゲーと同じです。男の主人公が一人いて、複数のヒロインを一人ずつ攻略していくという枠組みです。p.259の八九寺真宵とのやり取りでこの枠組みが明示的に説明されています。

 

ギャルゲーの枠組みでは、ヒロインたち同士は基本的に切り離されており、相互の交流はあまりありません。しかし本書では戦場ヶ原ひたぎと神原駿河や羽川翼との関係も描かれます。こうした部分は、p.372でブラック羽川が語っているように、少女漫画的です。

 

西尾維新さんが少女漫画をたくさん読み、そこから大きな影響を受けていることは、東浩紀他著『ユリイカ2004年9月臨時増刊号 総特集=西尾維新』(青土社、2004)の2つある対談の両方で語られています。

 

ただ、ここで注目すべきなのは、そうした少女漫画的な内面が、「怪異」として描かれていることです。ブラック羽川もそうですし、千石撫子の話でも恋愛関係のもつれからかけられた呪いが怪異として発動していますから。上巻の神原駿河の左手も同様です。

 

日本近代文学が発見した「内面」の有効性がもはや失効しているのかもしれません。現代において「内面」を描くとすれば、「怪異」にでもしないとリアリティがない、つまり読者が入っていけないのではないでしょうか。少なくとも、そうしないと多くの読者を獲得することは難しいように思われます。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です