特別企画」カテゴリーアーカイブ

次回イベントのお知らせです。

今月は、京都大学図書館の職員の方に声をかけていただき、
京都大学の図書系職員の勉強会ku-librariansさんとのコラボ企画を行うことになりました。
「図書館はどこまで開かれるべきか?」をテーマにディスカッション勉強会をおこなう予定です。

<京都アカデメイア×ku-librarians勉強会 図書館ディスカッション>
日時: 10月12日(金)18時半~20時半
場所: 京都大学附属図書館3F 共同研究室5
テーマ: 図書館はどこまで開かれるべきか?―学外者向けサービスについて考える
※身分・所属を問わず誰でも参加可。

※ku-librariansさんについての紹介文です↓
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ku-librarians勉強会
京都大学の図書系職員(若手中心)が有志で行っている勉強会。
1999年スタート。
内容は日常業務についてや海外図書館の動向調査などさまざま。
最近は他職種、他団体とのコラボ企画も積極的に行っている。

http://kulibrarians.g.hatena.ne.jp/
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<趣旨説明>
ご存知のとおり、京都アカデメイアには、大学生・院生だけでなく、
社会人・一般人の方も参加していただいています。そこで時々耳に
するのが、「大学の卒業者や学外者でも大学図書館を利用できれば
いいのに」という声です。
とくに京都大学の図書館は蔵書量も多く、一般書から専門書まで
幅広い図書が揃っています。大学外で勉強している人にとっては、
大学図書館が利用できるのとできないのでは大きな差があるでしょう。

最近は大阪大学や神戸大学、慶応義塾大学の湘南藤沢キャンパスなど、
学外者・一般者に図書の貸出をおこなう大学図書館も少しずつ増えてきて
いるようです。
もちろん大学側や学内者としては、事務手続きの手間、貴重書紛失の
恐れ、図書利用の不便化などのデメリットも考えられ、学外者への貸出を
行なっていない図書館のほうが大半であるのが現状です。

「大学外での学びを活性化しよう」というのは京都アカデメイアが掲げて
いるテーマのひとつでもありあす。今回せっかくku-librarians勉強会さんから
声をかけていただいたので、大学図書館が開かれるべき範囲について、
図書館職員の方と自由にディスカッションできればと考えています。

注:ku-librarians勉強会は公務ではなく、図書館職員の方が有志で行なって
おられるものですので、今回の結論が大学図書館の公式見解になるという
わけではありません。予めご承知ください。
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今回のイベントは、所属・身分を問わずどなたでも参加可能です。
当日、直接会場にお越しください。
学外者の方でも、今回の勉強会に参加する旨を入り口でお伝えいただければ、
附属図書館への入室は可能です。(図書閲覧も可。図書貸出は不可)
もし分かりにくければご連絡をいただければ対応いたします。

人数把握のため、参加希望の方は事前にkyotoacademeia@gmail.comまで
ご連絡いただければ幸いです。(当日飛び入りも歓迎です。)
勉強会終了後は、ku-librariansさんとの懇親会も予定されています。

長くなりましたが以上です。関心ある方はぜひご参加くださいませ。

2012年8月16日(木)、「京アカ夏まつり2012」を開催しました。

<京都アカデメイア・夏休み特別ustream企画 京アカ夏まつり2012>
会場:アカデメイアハウス(出町柳)

学生をはじめ、社会人の方にも来ていただき充実した会になりました。
当日の様子をまとめておきます。

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第一部 ビブリオ・バトル

京アカ初のビブリオバトル。今回は公式ルールに若干アレンジを加えて行いました。

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発表の順番を決めています。

1人目:大窪
サティピアノ作品集 第1巻』,全音楽譜出版社。
2人目:種村
さようなら、ギャングたち』,�高橋源一郎。
3人目:岡本
音楽する社会』,小川博司。
4人目:百木
暇と退屈の倫理学』,國分功一郎。

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毎発表ごとに5分間のディスカッション、さらに全体ディスカッション5分でチャンプ本を決定!

投票結果は、
1位『さようなら、ギャングたち』,高橋源一郎。3票
2位『暇と退屈の倫理学』,國分功一郎。2票
3位『サティピアノ作品集 第1巻』,全音楽譜出版社。1票
4位『音楽する社会』,小川博司。0票

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優勝者の種村さんには賞品として図書券を差し上げました。

参加していただいたみささん、ありがとうございました。

第二部 アカデメイア・セミナー

・テーマ:「体癖と思考」
・講師:小林哲也先生,(京都大学非常勤講師)

「体癖」とは、整体指導者・野口晴哉氏が大成したもので、体の癖の違いが人の行動や思考の違いをもたらしているという考え方です。

この考え方に従うと、たとえば靴底のどの部分が減っているか、何気ない日常の仕草、体型などをもとに、その人の性格の類型化ができるといいます。

セミナーではそれぞれの参加者の性格を体癖にもとづいて「診断」していただきました。

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小林先生

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興味津々。

後半では体癖に基づいた「体癖運動」の実演もあり、少しユニークなセミナーとなりました。

 食事会&五山観覧

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リラックスした雰囲気で食事&歓談中。

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大文字が見れました。終わりゆく夏を感じる。

 第三部 真夏の夜の討論会――もう一つの”ユニヴァーシティー”をめざして

2010年に京都アカデメイアがスタートして今年で3年目になりました。この討論会では、模擬授業、講演会、読書会、カフェなどのこれまでの活動を振り返ることでその意義を再確認すると同時に、これからの京都アカデメイアの進むべきビジョンを展望しました。また、それを通じて、大学や学生、社会人にとっての学びのあり方、さらには、そもそも学問的に、知的に思考するとは何かという問いについても考えました。

パネリスト
百木 漠
浅野 直樹
池畑 索季
板垣 遼
岡本 竜樹
大窪 善人(司会)

開始直後、これまで京アカを牽引してきた百木氏から重大発表!?

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突然の、百木引退宣言!? 一同騒然!

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ともあれ、討論は進行。浅野氏からこれからの京アカの展望を報告。3年間で、成功した試み、上手くいかなかったことを総括。

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社会人にとっての京アカの可能性とは?

後半は、「学問」とは何か、大学を成り立たせる社会とはなど、根本的な問題に立ち入って議論がなされました。

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議論は深夜まで白熱し、終了したのは予定の終了時刻を2時間近く超えた時でした。

ふだんの生活では、あるいはこれまでの京アカのイベントでも触れられなかった深い議論ができました。

イベントにご参加いただいた方、ustreamで視聴してくださった方、そしてスタッフのみなさまにあらためて感謝を申し上げておきたいと思います。みなさまの参加、協力なしに、あるいは京アカのこれまでの活動の実績・経験がなければ、短期間にこれだけの企画を準備し開催することは到底不可能だったでしょう。

もちろん、これで京アカの活動が終わってしまったわけではありません。今後も、ますます活発に活動は続けられていくはずです。
これからも京都アカデメイアにたいするご理解、ご参加をよろしくお願い申しあげます。

文責:大窪善人(モデレーター)

第2回アカデメイア・ラジオ <京大J地下の夜間閉鎖問題を考える>

百木です。
次回イベントのお知らせです。

<第2回 アカデメイア・ラジオ(ust中継)>
テーマ:京大J地下の夜間閉鎖問題を考える
日時:7月7日(土)20~22時

ustreamアドレス:http://www.ustream.tv/channel/kyoaca
内容:
先日、大学側から突然に発表された京都大学法学部棟地下の夜間閉鎖問題について、京大法学部自治会の方をゲストに招いて議論します。この問題について、賛成・反対という議論で終わらせるだけではなく、1月のアカデメイア・カフェで議論した「最近の大学ってどーなん?」の続編として、最近の京大正門閉鎖問題同志社の交番導入問題など、「大学の管理化・クリーン化」が進んでいることの問題点について広くお喋りできればいいなと考えております。

お時間ある方はust中継をご覧頂ければ幸いです。コメントでの参加も歓迎です。
(動画アーカイブするかどうかは終わってから判断します)
また前回同様、ust中継前に18時頃からシェアハウスで内輪の食事会を行う予定です。
こちらにももし関心ある方がいらっしゃればご連絡ください。
よろしくお願いします。

<京都アカデメイア×玉置沙由里 ustream中継> ノマドと知のこれから~ブロガー玉置沙由里に聞く

百木です。
前回の玉置沙由里さんとのust中継動画はこちらです。

<京都アカデメイア×玉置沙由里 ustream中継> ノマドと知のこれから~ブロガー玉置沙由里に聞く
http://www.ustream.tv/recorded/23024032

まとまった文章を書こうとしていたのですが、うまくまとめてきれませんでした。すいません>
代わりにOくんが熱心に取ってくれたノートのデータをアップしておきますので、関心ある方はご参照下さい。
https://docs.google.com/file/d/0Bx7L-njNF6cJYzNvZkhibWR5Nm8/edit?pli=1

いちおう、箇条書きで当日に出た論点をまとめておきます。

・最近のノマドブームでは、ノマドワーキングという狭い意味でのみノマドが理解されているのが残念。ノマドにはミクロな意味(ノマドワーキング)だけでなく、人類史的なマクロの意味があり、そちらが見落とされている。たとえば、ジャック・アタリというフランスの哲学者は『21世紀の歴史』という本の中で、21世紀には人類全体がハイパーノマド、ヴァーチャルノマド、下層ノマドという三つのノマド層にわかれていくと予想した。このように「ノマド化」は一時的なブームに解消されるものではなく、人類史的な意義をもつ現象であるととらえるべき。(玉置さん)

・私は「第八大陸」という概念を提唱してきた。それは現実の七大陸に加えて、ネット上に新しい大陸=第八大陸が出現している、という意味。それは単に架空の空間ではなく、現実空間とリンクしたバーチャル空間。私たちは自分の意志でこの世界に生まれてきたわけではないし、自分の名前も親から与えられたもの。しかし、第八大陸には自分の意志で参入することができ、名前も新しく自分でつけ直すことができる。(玉置さん)

・しかし、玉置さんがいう「ノマド的な生き方」は一部の特殊な能力や性格(コミュニケーション能力、人間的魅力、社交性、露出耐久力など)をもつ人にだけ実践可能なものではないのか?(京アカ)

→たしかにそういう側面はあるが、もしノマド的な生き方が嫌ならば自分はそれを他人に強制するつもりは全くない。非ノマド的な生き方をしたい人はそのままでいいのでは。(玉置さん)

→それを単純に「人それぞれ」の問題で終わらせてよいのか。もしアタリが言うように、人類や社会全体が「ノマド化」の方向にむかっているのであれば、「ノマド的な生き方が嫌なら、それ以外の生き方をすすればいい」というだけでは済まないのではないか。むしろ、皆が好むと好まざるとにかかわらず、ノマド的な生き方・働き方にある程度は巻き込まれざるをえない状況が出現しているのでは?(京アカ)

→それは難しい問題。自分が「第八大陸」と呼ぶネット上の空間では、これまでの社会とは違った基準の価値観が生まれるようになるだろう。そこで新しい格差のような問題は生じてくるかもしれない。でも、「第八大陸」から生まれる新しい可能性や面白みもあるはずで、自分としてはそれを追求していきたい。(玉置さん)

・玉置さんは、第八大陸には自分の意志で生まれることができる、自分で新しく名前をつけることもできる、と言っているが、ソーシャルメディアなどに疎い人間からすれば、第八大陸においても自由意志で生まれるという感覚はない。むしろ第八大陸に強制的に参加させられているという印象すらある。そのような感覚をもってしまっている自分のような人間はこれからどうやって生きていけばよいのか?何かコツやノウハウがあれば教えてほしい。(京アカ)

→その感覚はとても面白い!とくにコツやノウハウなどというものはない。自分がやりたいことを追求し、自分に合ったライフスタイルを追求していたら、こういう生き方になった。何か努力して身に付けるという感覚ではない。自然に振る舞えばよいのでは?無意識なキャラ化。(玉置さん)

→努力して能力を身につけるのではなく、自然にあるがままに振る舞えば理想の自分が実現できる、という言い方は興味深い。それは例えば、就活問題に引きつけていえば、本田由紀さんの提唱する「ハイパー・メリトクラシー」問題に近い。努力によって身につけることができない、天性的な能力・性格だとしたら、それはなかなか残酷な問題なのでは。(京アカ)

・自分がMG(X)などで実践している活動は、「ビジネス」ではない新しい経済圏の創出というイメージ。同じ意志を共有する人たちが集まってきて、いろいろ新しいこと・興味あることを試してみる空間。いまや企業に頼らず、個々人がそれぞれの経済圏を創出できる時代になった。(参考:岡田斗司夫さんの「評価経済社会」)(玉置さん)

→それに関しても、自分独自の経済圏を創出できる人とできない人との間で新しく格差が生まれるのでは?また、そのような新しい経済圏が、最終的には資本主義に回収されていくものなのか、あるいは資本主義とは異なる新しい経済空間/コミュニティ空間を生み出すものなのかが気になる。(京アカ)

→その二つを区別する必要はあるのか?あまりそういった意識はしていない。ただし、単純に既存の資本主義経済に飲み込まれて一時的なブームで終わらせるつもりはない。(玉置さん)

いまの社会は「カネ余り」状態なのでは。これだけ物質的に豊かな社会で、ソーシャルメディアも発達していれば、そもそも暮らしていくのにあまりお金がかからない。お金を稼ぐために嫌な思いをしてまで働く必要はなく、もっとささやかな収入で豊かに暮らしていくこともできるのでは。京都アカデメイアもあまり「ビジネス化」することを意識しすぎないほうがいいかもしれない。お金に還元されない、物や知識の交換という道もあるのでは?(玉置さん)

他にももっと面白い話題がたくさんあったのですが、とりあえず思い出せる範囲で書いてみました!
余裕があればまた後日更新するかもしれません。

京都アカデメイア×玉置沙由里 ust中継 「ノマドと知のこれから~ブロガー玉置沙由里に聞く」

 

百木です。
今月はスタッフがそれぞれに忙しく、イベントを開催することができずに終わってしまいました。すいません。

その代わりに、6月2日(土)の夜にブロガーの玉置沙由里さんとustream中継をすることになりました。
玉置さんは僕たちの学部の後輩にあたり、「プロブロガー」としてネット上で活躍しておられます。
最近ネット上で話題の「ノマド」という言葉を広めるのに貢献した一人でもあります。
そんな玉置さんに「ノマドと知のこれから~ブロガー玉置沙由里に聞く」というテーマで、
いろいろ質問をしてみたいと考えています。
今回はシェアハウスからust中継をおこなうので、公開参加というかたちは取らない予定ですが、
関心ある方はust上でコメント・質問など頂ければ幸いです。お時間ある方はぜひご視聴ください。
(もし玉置さんに聞いて欲しいことなどあれば事前に受け付けますのでメールください)

<京都アカデメイア×玉置沙由里 ustream中継>
テーマ:ノマドと知のこれから~ブロガー玉置沙由里に聞く
日時:6月2日(土)20時~
URL:http://www.ustream.tv/channel/kyoaca
参考:玉置さんのブログtwitterfaceboook現代ビジネスでの連載プロフィール

また、ust中継が始まる前の時間帯にアカデメイアのシェアハウスで食事会をやります。
ごく私的な食事会ですが、毎月一回ほど有志で集まって情報交換や異分野交流をすることができればと考えておりますので、もし関心ある方いらっしゃればご連絡ください。
よろしくお願いします。

真山仁講演会報告(2)

 

(承前)
以下は、僕(百木)の個人的な感想ですので、そのつもりでお読みください。

まず、具体的な代替エネルギーが見つからない限りは安易に脱原発を唱えるべきではない、という真山さんの主張について、確かにそれは一理ある考え方だけれども、その主張が必ずしも正しいとは限らないだろう、と感じました。多くの地震研究者によって、現在の日本が地震活発期に入ったことが指摘されておりこの30年のうちに東海大地震が87%の確率で、東京直下型地震が70%の確率で起こると予測されている状況のなかで「代替エネルギーが見つかるまでは原発存続せざるをえない」という消極的な選択は果たして合理的なのでしょうか。代替エネルギーが見つかる前にもう一度、東日本大震災なみの大地震が起き、福島のような原発事故が起こる可能性は決して低くないように思われます。そのようなリスクを考慮すれば、真山さんが仰るような消極的原発存続という選択が決して唯一の解答ではないし、すべての原発を一日も早く止めよという要請も、「原発が怖い」という非合理的な不安に基づくというよりは、現実的なリスク算定に基づくものだと考えることができるのではないか。

また、真山さんは「もし代替エネルギーが見つからないままに原発を止めるとしたら、我々は毎日階段を何十段も登るような生活をしなければならない、それでいいのか」という言い方をされていましたが、すべての原発を止めることになった際に、本当に真山さんが想定するような過酷な生活が待っているのかという点についても疑問を感じました。確かに代替エネルギーが見つからないまま今すぐ原発をすべて止めれば、今までのように使いたいときに使いたいだけ電気を使う、という生活は諦めなければならないのかもしれません。しかしそのことが直ちに、悲惨な貧しい生活状況をもたらすという強迫観念的な予測には「本当にそうなのかなぁ」と思ってしまいます。

今年の夏はたしかに例年よりは涼しい日が多かったものの、結局、事前に電力会社に脅されていたように強制的な大規模停電が起こるということはありませんでした。もちろん多くの場面での節電努力あってこその結果なのでしょうが、とはいえ日本人は(多少の不便さはあったものの)先進国レベルで見ても相当に豊かな経済レベルの生活を維持できたというのが実際のところではないのか。むしろ原発推進を今後も続けていきたい電力会社によって、事前の電力不足予想が高めに見積もられていたのではないか、という疑念も払拭しきれません。実際に先日、東電は来年夏の電力供給を原発ゼロで賄いきれるという試算を出していますし、それなら一体あの計画停電騒ぎは何だったのか、と感じてしまいます。

10月の原発稼働率が20%を切ったというニュースもありましたが、過ごしやすい季節とはいえ、原発がその程度の稼働率でもほとんど以前と変わらないレベルの経済生活ができてしまっているという現実をどう考えるのか。原発なしでも、日本の電力需給はきちんと賄っていけるという専門家の意見もいろんな所で耳にします。その他に、原発は他の電力供給よりもコストが安いから経済効率的には原発存続しかありえない、という意見についても、それは地元への莫大な補助金や放射性廃棄物の処理にかかる費用を入れていない金額だし、万が一事故が起きた際のコスト計算も含められていない。最大で10万年かかると言われている放射性廃棄物の処理方法についてもいまだに解決策や廃棄場所が見つかっていないし、もんじゅなどの再処理施設についてはまともな稼働の見込みが立たないまま無駄な研究開発費を垂れ流している。などなど、最近次々と問題点が指摘され、議論が活発化している原発存続のリスクを鑑みれば、「代替エネルギーが見つかるまでは原発存続」という選択を行うほうが日本の政治経済、国民の安全保障にとって損害を招きうる、ゆえに一日でも早く脱原発を進めよ、という主張にも十分に理はあるのではないか。

ただし、以上のような脱原発派からの反論・主張が絶対に正しい、と言い切る自信も素人の僕にはありません。どちらかといえば、個人的には上記のような脱原発派の主張のほうに理があるように感じますが、当然その主張に対する再反論もあるでしょうし、原発存続の主張にも一理あることを認めるにはやぶさかではありません。それにそもそも、真山さん自身がいわゆる「原発推進派」なのではなく、地熱発電の利用可能性を含めた「長期的には脱原発依存、短中期的には原発依存やむなし」という考え(現在の野田首相の方針と同じですが)であることも理解しています。そのような状況をふまえた上で、今後はさらに原発存続派と脱原発派のあいだをつなぐ議論を深めていく必要があるし、真山さんにももっとそのような疑問をぶつけてみたかったなぁ、ということを感じました。本当は質疑応答の時間内にそのような議論を深められればよかったのですが、その場ではうまく考えをまとめることができず、筋道を立てて反論をするまでには至りませんでした。

また講演が終わってからお聞きしたお話ですが、京大ではいたる所で脱原発に関するイベントや展示会が行われていたのに対し、真山さんが関わっておられる東大の勉強会では、圧倒的に原発推進派の意見が強いそうです。東大と京大ではそれほど原発にたいする雰囲気が異なるのだなぁということにもびっくりしましたし、機会があればいちど東大の学生さんたちと原発についての討論会などを企画してみるのも面白いかもしれないなぁと思いました。原発にせよ震災復興にせよ日本の政治状況にせよ、絶対的にこれが正しい、という満場一致の答えを導き出すのが難しい問題については、とにかく前提となる情報や知識を共有し、それをベースとして議論を戦わせていくしか方法がないし、そのような学びと議論の場を今後も京都アカデメイアが作っていきたいな、というのが今後に向けた抱負です。学生や一般人の側から、そのような機会を作っていくことこそが、真山さんのいう「新しい政治への道筋」ではないかと個人的には考えていますし、そのような機会を経てさらに政治についての関心を深めていくことができれば少しずつ社会を良い方向へ変えていくことも可能ではないか、という楽観的展望をもっています。

素人ながら、いろいろと勝手な疑問や反論も述べさせていただきましたが、いずれにせよ、このような思考のきっかけを与えてくださった真山さんの講演に改めて感謝をしたいですし、今後もこのような思考や議論を次に繋げていくことが我々の課題だと考えています。長々と書きましたが、このブログを読んでくださった方にも、これらの問題についてさらに思考を深めるきっかけとさせて頂ければ幸いですし、もし思うところがあればコメント欄で意見・反論などいただければありがたいです

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生け花男子の積田くん。素敵ですな。

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積田くんが生けた花。オレンジの薔薇がきれい。講演中もいい味出してました。

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当日は暖かいくらいの良い天気で、紅葉もきれいでした。

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真山仁講演会報告(1) 

 

百木です。
先週の土曜日に開催したNF特別企画・真山仁講演会にはたくさんの方にご来場いただき、ありがとうございました。立ち見がでるほどの盛況で、窮屈な思いをさせてしまった方々には申し訳なかったのですが、今後の反省材料にしたいと思います。お忙しい中、京都までお越しいただき、素晴らしい講演をしていただいた真山さんにも改めてお礼を申し上げます。

当日の講演内容を簡単にまとめて報告させていただきます。ただ、僕自身の記憶も頼りないものですので、もし不十分な点がありましたらコメントなどで指摘していただけるとありがたいです。一部、僕(百木)の個人的な感想やコメントなども付け加えさせていただきますが、この点についてもなにかお気づきの点や反論などありましたら、遠慮なくコメント下さい。

講演の前半は「なぜ・いかにして私は小説家になったのか」というお話でした。小説家の方から直に小説家になった動機やその経緯などを詳しくお聞きできる機会はなかなかないので、とても面白く聞かせていただきました。真山さんは子どもの頃から何かにつけ、周囲の大人や友人の考えや行動に疑問をもち、その疑問を周囲にぶつけていくような天邪鬼な性格だったそうです。世間や学校で決められたルールとしてみんなが従っていることにも疑問や反発を覚えることが多く、そのような性格が小説家を志すことの大きな動機になったとのこと。

興味深かったのは、真山さんが「小説家になりたいから小説家を志した」のではなく、「世間や周囲の人びとにたいして自分の考えや疑問を伝えたい」という思いがまず先にあり、そのための手段として小説家という職業を選んだ、というお話でした。最近の新卒が「3年以内に3割がやめる」ことが社会問題として話題になったことがありましたが、そのような状況にたいしても、自分が就職したい会社や就きたい職種から志望動機を考えるのではなく、自分が何をしたいのか・将来どのような到達点に達したいのか、という目標から逆算して、希望する会社や職種を考えていくほうが良いのでは、というアドバイスがありました。ちょうど就職活動解禁が数日前のニュースになっていましたが、就職活動を控えた学生や今後のキャリアを考える若者にとっては将来を考えるヒントになるアドバイスだったのではないでしょうか。

また、真山さんは小説家を志すにあたって、いろいろな小説家の経歴を調べてみた結果、多くの小説家がまず新聞記者のキャリアを経てから小説家に転身していることに気づき、自分自身もまず新聞記者を10年続けてから小説家を目指そう、と決意されたそうです。このあたりも自分が抱いていた小説家志望者のイメージとは違い、ユニークかつ実践的な考え方だなぁと感心しました。そして就職活動の結果、実際に中部読売新聞社に入社し、警察取材などを中心に精力的にお仕事をされていたそうです。真山さんは新聞記者としても非常に優秀だったそうですが、いろいろと考えるところがあり、当初10年続けるつもりだった新聞記者を2年7ヶ月で退職し、その後はフリーライターとして仕事をしつつ、小説を書き続けておられたとのこと。このあたりの詳しい経緯はこちらのインタビューでも答えられているので、関心ある方はご覧になってみてください。その後『ハゲタカ』シリーズでの大ヒットを皮切りに、原発問題を扱った『ベイジン』や地熱発電を扱った『マグマ』、初の政治小説にチャレンジされた『コラプティオ』など、現代日本の政治経済問題に鋭く斬り込む作品を発表され続けています。

講演の後半は、3月11日の東日本大震災および福島の原発事故に関するお話が中心でした。真山さんは震災後、twitterやブログなどを通じて、菅内閣の政治対応を厳しく批判するとともに、安易な脱原発運動と原発推進の主張の双方にたいして問題提起を行なっておられます。この点についての真山さんの主張をまとめれば以下のようになります。震災後の菅元総理は自身の政権延命のためだけに場当たり的な政策対応を繰り返し、日本の政治にたいする信頼を決定的に失わせてしまった。さらに現在の脱原発運動は、具体的な代替エネルギー案を考えることなしに、ただ「原発が怖い」という理由だけで感情的に脱原発を唱えるだけで有効性を持ちえない。また、太陽光発電や風力発電は天候や時間帯によって発電量が左右されるがゆえに到底ベースエネルギーにはなりえない。真山さんが考える唯一有効な代替エネルギーは地熱発電だが、その有効性は社会的にまだ十分に理解されているとはいえず、道のりは遠い。そうであるとすれば、現状では(明確な代替エネルギーが見つかるまでは)原発の存続を認めざるをえないのではないか。

真山さんは3年前にリーマン・ショックが起こったときに、これで「経済が社会の主導権を握る時代」は終わりを迎え、「政治が社会の主導権を握る時代」がやってくると直感的に感じられたそうです。経済の論理ではなく、政治の論理が社会の進むべき方向性を決定し、議論の中心となる時代がこれからはやってくる(或いはもう訪れている)。しかし現在の民主党政権はその「政治の時代」に対応できているとは到底言えない。多くの国民が政治にたいしての信頼や興味を失っている。本来は政治家が、日本が長期的に目指すべきヴィジョンを掲げ、その目標に向けた現実的な政策運営を行なっていかなければいけないのだが、誰もそのようなことができず、つまらない政局闘争にばかり時間を奪われている。このような状況をいかにして打開できるか。明快な答えはないけれども、まずは我々ひとりひとりが政治的な関心を高め、誤った政治判断を行わないよう意識を高めていくしかない。自分の小説がそのような思考のきっかけになればこれほど嬉しいことはない。

以上がおおまかな講演内容のまとめです。不十分な点が多々あるかと思いますが、僕個人ではこれが限界なので許してください。コメントなどで補足いただければ幸いです。個人的な感想としては、後半部の原発問題や日本の政治状況についてのお話にはいろいろ考えさせられるところが多く、大いに共感させられる点と、いくつか疑問に感じられる点がありました。その点について、人文系の院生である僕が素人ながらに感じた疑問点について書いてみます。(つづく)

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京大NF!真山仁講演企画を再告知

 

こんにちは。ついにNFが始まりましたね。いろいろな企画が催され、盛り上がっているようです。
わが京アカの講演企画も、もう一度告知させていただきますね。26日、お時間のある方はぜひお越しください。
詳しくは特設ページもご覧ください。
↓↓

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京都アカデメイア講演企画(第53回京都大学11月祭)
「だから私は小説家になった― 真山仁が語る、震災後の日本」
web特設ページhttp://kyoto-academeia.sakura.ne.jp/nf_mayama.html

講師:真山仁(小説家)
日時:11月26日(土)14時~16時
場所:京都大学 吉田南総合館 共南21教室
主催:京都アカデメイア
※入場無料、事前予約不要、著書持参の方にはサイン会もあります。

立てカン作り第二弾!!

今日も立てカンを作りました!
(う)さん、(む)さん、ご協力ありがとうございました。

二つ目は正門前に設置してあります。一つ目とは違う雰囲気で、こちらも(な)さんのデザインです。

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写真だと光の関係で分かりにくいですので、ぜひ実際に確認してみてくださいね。

ビラ貼り・立て看・最近の京大の掲示板事情など。

百木です。
先日時間があったので法経館を中心に30~40枚ほどまとめてビラ貼りしてきました。

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この時期、大学の掲示板は学園祭企画のビラが乱立割拠状態です。
数時間前に貼ったビラの上にすぐ別の企画のビラが貼られてしまっていたりします。京大のビラ貼りにルールがないゆえですが、個人的にはそういうアナーキズムなほうが面白いのではないかと思っています(とはいえ、自分が貼ったビラが勝手に剥がされていたり、ひとつのサークルが掲示板全体を占拠していたりするとやはり腹は立つものですが)。
最近の大学ではほとんど、掲示板へのビラ貼りは許可制になっているようですね。京大の掲示板の無秩序状態を見ているとむべなるかなという気もしますが、できれば京大の掲示板はこのまま自由にビラ貼りできる環境であってほしいなぁと個人的には考えています。
ちなみに現在の吉田南キャンパス・グラウンド前の掲示板はこんな感じです↓

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無秩序(笑)あと最近は大学側の意図なのでしょうが、以前に比べてビラを貼るスペース(掲示板)が縮小されつつあります。立て看などもすぐに大学側に撤去されてしまうようで、京大でも他の大学の流れにならって、自由な広報活動は制限されつつあるのかなぁと感じています。あくまで僕(百木)個人の考えではありますが。
あと百万遍のベストポジションに設置された立て看もチェックしてきました。格好いいですね!これでみな来てくれるかしらん。

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ちなみに今年のNFテーマは「年に一度の計画発電」だそうです。

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※京都アカデメイア講演企画(第53回京都大学11月祭)
「だから私は小説家になった― 真山仁が語る、震災後の日本」
web特設ページ

講師:真山仁(小説家)
日時:11月26日(土)14時~16時
場所:京都大学 吉田南総合館 共南21教室
主催:京都アカデメイア
※入場無料、事前予約不要、著書持参の方にはサイン会もあります。