おすすめの本」カテゴリーアーカイブ

佐藤俊樹『桜が創った「日本」』:「桜」のラビリンス

大窪善人


 

世中に たえてさくらのなかりせば 春の心は のどけからまし(在原業平)

桜が古から日本人のこころを魅了してきたことがよくわかる歌ですね。千年前の人たちもきっと今と同じような桜の風景を愛でてきたんだなと、そんな歴史ロマンすらかき立てられます。

さて、しかしそこで納得して終わらないのが、ものを考えたり学問をするということだったりします。ある常識があるときにの、そこでスルーせずに、あれっと思ってそこで立ち止まってみる。それが学びへの第一歩です。
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宮台真司『いま、幸福について語ろう』:社会学は<世界>に言及する

大窪善人


 
社会学者の宮台真司さんと第一線で活躍する4人のクリエイターとの対談集です。それぞれ領域も話題も異なりますが、共通するテーマは「幸福」です。
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岡本亮輔『聖地巡礼』:なぜかれらは聖地をめざすのか?

大窪善人


聖地巡礼 : 世界遺産からアニメの舞台まで

中央公論新社(2015年04月21日)

 

最近「御朱印ガール」というのがひそかなブームだといいます。御朱印とは、神社や寺で参拝の証としてもらえるスタンプのことです。いわゆる「パワー・スポット」巡りと相まって、いま若い女性を中心にこの御朱印を集めるのが流行しているそうです。彼女彼らを惹きつける魅力は何なのでしょうか?
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カント『啓蒙とは何か』:上から目線ではない、もう一つの「啓蒙」へ

大窪善人


永遠平和のために

光文社(2024年03月01日)

 

先月2月、NPO法人京都アカデメイアの総会を開催しました。今回は2度目の総会で、法人を設立してから約1年半が経ちました。この間、スタッフの皆さん、それに会員の皆さんにはサポートをいただき、ほんとうに有り難いかぎりです。

京都アカデメイアは「市民社会の知的活動を促進すること」を目的に運営・活動をしています。実際の日々の活動は、読書会やカフェでの討論会や書評の発表など、地道なものです。しかし、それぞれの活動を支えているのは、そうした目的や理念にあるわけです。

ところで、社会の知的活動を促進するとは、どのようなものでしょうか? たとえば、学校の先生が生徒に知識を教えるような、そんなイメージでしょうか?
人にちゃんと説明しようとすると意外と難しいものです。迷ったときは過去に遡って考えてみる。あるいは、先人の知恵に学ぶのも有効な方法の一つです。というわけで、そうした動機から、最近読んだ本を紹介します。なお、この内容は大窪個人の解釈にもとづくものです。

啓蒙とは何か

イマヌエル・カントは、18世紀ドイツ(当時はプロイセン)の哲学者です。高校の世界史の教科書にも名前が出てくるような有名な哲学者ですが、とびきり難しいことでも有名です。ただ、この『啓蒙とは何か』は、短くかつ読みやすい本です。内容はタイトルの通りで、「啓蒙」がテーマ。 続きを読む

「現代思想」2月号 反知性主義と向き合う:知性と戦略との対立へ

大窪善人


現代思想 2015年2月号
特集=反知性主義と向き合う
ムック –青土社 (2015/1/26)

 

現代日本の反知性主義化?

去年の春頃に書店に行ってびっくりしたことがあるのですが、店の入り口の一番目立つコーナーに韓国や中国を批判する本がズラリと並べられていて、非常によく売れていました。たしかに、その類の本は今までからもありました。しかし、それはジャンル別のコーナーに置いていただけで、これほどメジャーな扱いになったのには驚きました。
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大澤真幸、木村草太『憲法の条件』:なぜ憲法の話はつまらないのか?

大窪善人




(1970年01月01日)

 

憲法の話は、ほんとうはとてもおもしろい!

昨年は集団的自衛権の解釈改憲をはじめ、いつになく憲法についての問題が取り沙汰されました。しかし、年末の総選挙の結果をみても、世間の反応はいまひとつ盛り上がりに欠けるものでした。憲法は重要な問題であるはずなのに、世論の関心を引きませんでした。

憲法の話はどこか上滑りしているような、つまらない印象を受けてしまう。何故なのでしょうか。この本では、憲法学者の木村草太さんと社会学者の大澤真幸さんが、その理由を明快に解き明かしてくれます。 続きを読む

フランクフルト学派:その通底するテーマとは?

大窪善人

 

本書はフランクフルト学派についての入門書。学派の輪郭を平易な文章で描き出している好著です。これ一冊でフランクフルト学派のおおまかなことは押さえられます。 続きを読む