Kindleを使ってみて、あらためて紙の本の魅力に気付かされました

大窪善人

kindle


Kindle Unlimitedも始まり、電子書籍が何かと話題になりますが、それに代えがたい利点や魅力が、紙の本には間違いなくあります。

たとえば、電子書籍だとページをめくるには画面をタップするわけすが、ちょっと味気ないと思いませんか? あと、読んでいて「あれ、もう終わり?」ってことも。既読量はパーセンテージで表示されますが、あまり直感的であるとは言えません。

もう少し学問的に説明してみます。

ジュンク堂書店難波店店長の福嶋聡さんは、脳科学者 酒井邦嘉さんの議論を踏まえて次のように書いています。

「紙の本」は、視覚だけでなく、嗅覚や触覚も刺激する。ぼくたちは、実は全身を使って、本を読んでいるのだ

小説でも研究書でもそうですが、私たちは本を読むときに内容・コンテンツだけをそのまま受け取っているのではない、と。

「ザラザラ」とか「ツルツル」してるといった紙の質感や厚みや重さ、いまページのどの辺りを読んでいるかという触感、あるいは、酸化して古くなった臭い、あるいは、いつどこの書店で買ったかとか誰からもらったかなどの、さまざまな情報・コンテクストをも無意識に受け取っているわけです。

普通は、余分な情報やノイズが少ないほどより内容に集中できると思われますが、じつは逆で、そうした様々な刺激によって「文脈化された」かたちで知識を得る方が、脳科学的には効果的なのだといいます。

(ところで、パソコン画面では見つからないのに、プリントアウトしたときに誤字が見つかるのはどうしてなのでしょうか?)

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コミュニケーション・ツールとして

紙の本が優れているのは実利的な面だけではありません。ファッション性も本の重要な要素だと言います。

1980年代に浅田彰『構造と力』を持って街に出ることが一種のステータスになった、というのは業界の語り草ですが、装丁などの視覚表現によって、持っているだけでコミュニケーション・ツールになる「紙の本」という形式は、やはり侮れません。それは、本が”紙”というマテリアルであるが故に生まれる魅力でしょう。

村上春樹の新刊『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』は、発売7日で発行部数100万部となった。[…]もし仮に『多崎つくる』が電子書籍として流通し、配本不足や売り切れの心配がまったくなかったとしたら、即ちその気になればいつでも入手できるとしたら、発売3日で30万部がほぼ売り切れ、1週間で100万部を刷らなければならないような事態が発生しただろうか?

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メディア論の大家であるマクルーハンは「メディアがメッセージ(the medium is message)」という有名な言葉を残しました。

素朴に考えれば、情報とは”何が語られたか”という中身、つまり、「メッセージ」の方が重要だと考えられます。ところが、彼はそれをひっくり返して、メッセージを”伝える”「メディア」という形式こそが重要であると主張しました。

『多崎つくる』の流行現象が起こったのも、マクルーハン的に解釈すれば、それが「紙の本」というメディアをまとっていたからだ、と言えるのかもしれません。

しかし、紙の本の魅力が電子書籍の登場によって確認されるようになった、ということはそれ自体おもしろいことです。どうしても「電子か紙か」といった二者択一の議論になりがちですが、お互いにうまく住み分けができれば、一番よいのではないでしょうか。

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