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【まとめ】第6回批評鍋 『来るべき民主主義』

第6回目の批評鍋では國分功一郎『来るべき民主主義』を取り上げました。


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参加者:百木漠、浅野直樹、村田智子、大窪善人

話題一覧
○ 10分で本の紹介を紹介
・テーマは学問と社会的実践の架橋

○ 参加者からのコメント、論点
・論壇情報。『社会の抜け道』について(百木)
・参加型民主主義と新しい社会運動(百木)
・行政の肥大化の弊害

○ 社会運動の現在
・SNS、ネットメディアの有効性と限界(浅野)
・「敵をつらない運動」、しかし、旧来の社会運動には批判的?(浅野)
・現状批判/理想像追求タイプの社会運動(大窪)
・現状批判の社会運動は昔からそんなに多かったのか?(浅野)
・社会参加の敷居は下がってきたのか?(浅野)
・中間集団と社会参加の関係(浅野、百木)
・階級闘争的運動から生活形式をめぐる運動への歴史的展開(大窪)
・住民投票のハードルの高さと行政の拒絶性(百木)
・住民投票とは何か(浅野)

○ 政治哲学的な論点
・行政の肥大化問題(浅野)
・伝統的な政治哲学の問題点。行政を適切に扱えない(百木)
・行政の肥大化の日本特有の問題点。許認可行政など(大窪)
・制度と法(by G.ドゥルーズ)の議論(大窪)
・近親相姦と禁止のアナロジー(浅野)
・制度は、いろいろな居場所があること(浅野)
・運動を具体的な成果に結びつけるのは(百木)
・パブリック・コメント制度をより有効にするには

○ ポピュリズム問題と知識人の役割
・ポピュリズムをどう防ぐのか(大窪)
・なぜ民主主義を推すのか(浅野)
・熟議を通じた学びがポピュリズムを抑止する(百木)
・知識人の役割について(大窪)
・知、真理の擁護と自己決定の手助け(浅野)
・政治の専門家が実践に参加する意義(百木)
・國分さん、古市さんのスタンスの違い(浅野)
・京大問題。自治に対するアレルギーがある(百木)
・ある特定の実践への参加の公共的意義はどう評価するのか(大窪)
・それぞれの人が得意分野で働けばいいのでは(百木)
・当事者性とコミュニケーション(浅野)
・偶発的な出会いがきっかけになる(浅野)

今回は3ヶ月ぶりの批評鍋でした。本のテーマである小平市都道の問題は京都からははるか遠い話のようにもみえますが、ある普遍的な問題が含まれているようにも感じました。本書のなかで「政治文化」という言葉が出てきます。政治は、国会や役所や裁判所などの国家機関がきちんと働いてさえいれば問題がない、というわけではありません。政治を支える文化の充実が政治の成熟度合いを条件づける、ということです。著者がかかわった小平市の運動は、まさにこの点を重視した運動でもありました。ところで、政治や民主主義といえば、たびたび、どこかとても縁遠く、日常の暮らしとは関係がないことのように考えられています。たしかに、政治参加の機会は基本的には議会や首長の選挙のときに限られています(人びとが自由なのは投票のときだけで、それ以外は奴隷である、と看破したのはルソーでした)。しかし、政治文化の涵養ということまで視野を広げるなら、さまざまな社会運動や市民的な議論への参加もひとつの政治的参加であると呼ぶことができるでしょう。民主主義について考えるということは、べつに、なにか見たこともないような遠い問題について考えるというのではなく、日常の中にあるごく身近な問題について考えることでもあるのです。今回の読書会を通じてそんなふうに感じました。

【おまけ】

今回の鍋はアンコウ鍋でした。

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批評鍋で取り上げてほしい本があれば、kyotoacademeia@gmail.com までご連絡ください。
次回もお楽しみに。

大窪善人

【関連書籍】

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熟議が壊れるとき: 民主政と憲法解釈の統治理論

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【告知】今週批評鍋を開催します

大窪です。今月はもう1本イベントを開催します。第6回 批評鍋を開催します。

批評鍋は毎回一冊の本を決めて、その本についての感想を実際に鍋をつつきながら、京アカ・メンバーが話し合い、それをust放送するというものです。

今回の課題本は國分功一郎さんの『来るべき民主主義』を取り上げます。
小平市都道328号線をめぐって2013年5月に行なわれた東京都初の住民直接請求による住民投票。著者は住民運動の参加を通して、現在の日本の民主主義の根本的な問題に直面しました。住民の声はなぜ政治に届かないのか。これまでの政治の考え方には決定的な欠陥があったのか。これからの新しい民主主義はどのようにあるべきなのか。いまもっとも注目される若手哲学者の提言です。
批評鍋では論壇の最新事情から、民主主義、哲学・思想と実践の架橋、社会運動のあり方、知識人の役割などについて自由に話し合います。いつもどおり京アカ・アカウントのust、twitterにてコメントも受付けます。

<第6回批評鍋>
日時:11月17日(日)19時~20時半
課題本:『来るべき民主主義』、國分功一郎、幻冬舎新書
ustアドレス: http://www.ustream.tv/channel/kyoaca

アカデメイア相談室第2回「労働問題総論」の報告

アカデメイア相談室第2回「労働問題総論」の報告をします。

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うまく見られないときはこちらから。

発表資料

第1部 法律に関する資格、法律の基礎

    • 登記や供託とは何か
    • 労働法は特別法であって一般法である民法よりも優先される
    • 民事訴訟の証拠上は署名も押印も同等である
    • 逮捕されてから起訴されるかどうかが決まるまでは最大23日間である
    • 行政に形式の整った書類を提出すると正式な返事がなされなければならない(受理しないということはできない)
    • 労働組合の正当な活動は刑事上も民事上も免責される
    • 試用期間中の人や失業中の人でも労働組合に加入(結成)できる

 

第2部 労働問題の実践的な知識

    • 正社員、アルバイト、パートの違い
    • 社会保険完備とは
    • 労働組合とユニオン
    • ストライキの意外な使い方
    • アルバイトやパートでも有給休暇を取得できる
    • (職場の)健康保険では病気やケガで働けない時に賃金の3分の2が補償される(傷病手当金)
    • 不注意で事故を起こしたりしても会社が損害賠償をしなければならず、その負担を従業員がしなくてもよい場合がある
    • 解雇と雇い止め
    • 労働者からの退職のしかた
    • 雇用によらない生き方

 

第3部 学問的な考察

    • 家族賃金モデル(賃金は能力や仕事ぶりの反映ではない)
    • メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用
    • 労働と承認
    • 史的唯物論

 

それぞれ専門家からしたら当たり前のことばかりですが、そうした当たり前のことを幅広く知ってもらうのがこのイベントの趣旨です。

「ためになった」、「おかしいと思っていたことにこれからは反論できるようになった」といった感想が聞かれました。そしてここから次回のテーマも見えてきたので、これからもよろしくお願いいたします。

アカデメイア相談室第2回「労働問題総論」開催のお知らせ

アカデメイア相談室第2回「労働問題総論」を下記の要領で開催いたします。前回は参加者が少ないながらも熱を帯びたやり取りが交わされました(アカデメイア相談室 第1回 「くらしの法律相談~消費者 労働問題」の報告)。タブーなしで何でも率直に議論いたします。ぜひ当日お越しください。

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<日時・場所>
日時:2013年11月4日(月・祝)18時30分~20時30分
場所:ひと・まち交流館 京都 第5会議室(京阪電車「清水五条」下車 徒歩8分、市バス「河原町正面」下車スグ)
*参加無料
*相談大歓迎(事前に、あるいは当日寄せられた相談に可能な限り答えます)

<内容>
労働問題について、法律、現場の知恵、学問的な見地から総合的に考えます。前半は担当者が発表を行います。http://www.ustream.tv/channel/kyoacaでUstream中継もする予定です。後半は当日参加者でフリーディスカッションをします。素朴な疑問も大歓迎です。
アカデメイア相談室第2回「労働問題総論」|イベント情報|京都アカデメイアに発表資料を載せました。

<担当者紹介>
浅野直樹(京都アカデメイア)
行政書士、社会保険労務士有資格者。大学院で社会学や哲学・思想系の研究を行い、労働問題の現場経験を積みながら、現在は法律の学習に力を入れています。浅野直樹の学習日記

当日は16時~18時に京都アカデメイアの11月作戦会議も行います。正会員(になるかもしれない人)はどうぞご参加ください。16時にひと・まち交流館 京都1階正面入口に集合です。

アカデメイアカフェ開催しました

先月末、四条・生きている珈琲でアカデメイアカフェを開催しました。今回は6月に「経済成長」をテーマにしたカフェのシリーズ企画・「経済成長と幸せ」を行いました。前回のリピーターの方、今回はじめての方もたくさん来ていただき、充実した内容となりました。前回は、参加者のみなさんと経済成長推進派/脱成長派にわかれて議論しました。対して今回は、あえてあらかじめ主催者側で対立軸は設定せずに、みなさんと論点や対立軸を探していくというスタイルで進めました。

「幸せ」を定義することは難しい。幸せとは、たとえば、好きな音楽を聞いたり、好きな本を読んでいるとき、好きな人と一緒にいるとき、あるいは、美味しいコーヒーが飲めて嬉しいというような、主観的な感情です。しかし同時に、幸せとは、社会調査の分析や社会政策の目標、あるいは哲学的な思索の対象となるような、客観的なできごとでもあります。最近話題になった古市憲寿さんの本では、いくつかの統計データをもとに、現代の若者の多くが(主観的には)いまの生活に満足していると感じているということを描きだしました。その結果は、2000年代以降の格差の拡大や日本経済の停滞が深刻な問題となっているという現実がある中で、多くの人に驚きをもって受け取られました。また、「世界一幸せな国」として紹介されているブータンでは、GDPとは別にGNH(Gross National Happiness/国民総幸福)という指標を設定し、それをもとに国家の政策を進めてもいます。

ディスカッションでは、幸せをめぐる時代・世代論的な論点で盛り上がりました。戦後の日本社会ではずっと、目の前の抑圧や障害を取り除いていくことで幸せを達成してきたという意識がある、しかし、他方で、現代では昔とくらべて充分に豊かになり、目にみえる障害が少なくなったにもかかわらず、かえって幸せや自由を実感しにくくなっているように感じられる、と。あるいは、逆に、本当に社会や個人は自由になってきたのかという鋭い意見も出ました。たとえば、就職活動での一見個人の選択肢の拡大にみえることが、同時に、就職をしなければならないという選択を自明の前提としている、というように。たしかに、それは、「抑圧的寛容」(H.マルクーゼ)とでもいうような、制限付きの自由であるに過ぎないと言うべきかもしれません。
よりよい幸せはどしたら実現できるのか。また、そのときに経済はどのようなあり方がふさわしいのか。簡単には答えの出ない難しい問いですが、今回、議論を通して、事後的にさまざまな論点や対立軸が見出されたことには公共的な意味があったのではないか、と思います。

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大窪善人

今月 生きている珈琲でイベントします

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アカデメイアカフェ ―経済成長と幸せ

アカデメイアカフェ at 生きている珈琲 第二弾!
今回は「経済成長と幸せ」というテーマについて考えます。前回のアカデメイアカフェは、経済成長についてYes/Noの立場に分かれて議論を交わしました。シリーズ2回目の今回は、参加者みなさんと議論をより深めるために、”幸せ”というテーマをプラスしました。幸せについて普段感じている素朴な感覚や経験から、経済成長がもつ意味について、あらためて考えてみたいと思います。予備知識は必要ありません。美味しい珈琲を飲みながら、みんなで議論しませんか? 前回参加していただいた方も初めての方も、ご都合の合う方はお気軽にご参加ください。

・日時:2013年9月27日(金)午後8時~9時半頃
・会場:生きている珈琲(京都市下京区立売東町 みやの四条ビルB1F,ジュンク堂書店京都店 東側スグ)

・参加方法 ドリンク一杯で参加できます。途中入退出も自由です。当日 直接会場までお越しください。

・主催・協力:NPO法人京都アカデメイア/生きている珈琲
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京アカUstream” カピバクさんに聞いてみよう!”第5回の収録・生配信を行いました

テーマ:就職しない働き方は可能か?


(うまく表示されない場合はコチラから)

出演:
カピバクさん(百木漠)
浅野直樹/ゲスト

話題一覧:
・ゲスト・自己紹介、就職活動経験談
・「就活か進学か」という二項対立―第三の道はないのか?
・自営業という選択肢はなぜなくなったのか
・IT長者、「ホリエモン・スタイル」からつながりと充足の「社会的起業」へ
・欧州の「自営業ルネサンス」と日本での自営業、起業の衰退傾向
・スーパーマーケット化の問題とは何か?
・キーワードは「意思決定への参与」
・「起業か留学か」という選択肢の不毛
・会社に参加するということ―「労働」と「交渉」
・組合と法人はどこがが違うのか―「ブドウ」と「メロン」
・ワーカーズ・コレクティブとは
・起業=IT、シリコン・バレーという幻想
・現代において「職人」的労働はいかにして可能か
・アカデミック・ポスト問題と教養見直しブームとのマッチング
・働く=お金を貰うことなのか?
・まとめ

今回は、京アカ・スタッフでもある浅野直樹さんをゲストに、「就職しない働き方」について話しました。いまや就職や雇用についての話題が新聞やテレビなどにのぼらない日はありません。大学や学生一人ひとりにとっても、どの会社で、どうやって働くのかは大きな関心事となっています。しかし、多くの人がもっている「就職」のイメージの中身は、じつは「就社」であって、それは働き方のひとつに過ぎないのではないでしょうか。ほんの50年ほど前の日本では、多くの人が農業や漁業、自営商店などの雇用されない働き方をしていました。なぜ今では「就社」する以外の選択肢は消えてしまったのでしょうか。今回はそうした問題について、浅野さんの個人史、経験を交えながら議論を深めました。キーワードは「意思決定への参与」です。浅野さんによれば、会社で働く場合でも、参加には「労働」のほかにもう一つ「交渉」という方法が重要であるといいます。
また、個人的に印象深かった話は、「身近な場所から良くしていこう」という発想です。インターネットの発達により大量の情報を手軽に入手できる一方で、社会が流動化し不安定になると、ついつい抽象的で極端な発想に結びつきがちです。起業や留学などにチャレンジすることは、もちろん立派かもしれませんが、それは、目の前の現実や問題から逃れるためであってはいけないでしょう。何のために働くのか、その根本を考えておくことの大切さを学びました。

お知らせ:いつも「カピバクさんに聞いてみよう!」をご覧いただき、ありがとうございます。当番組は今回をもちまして終了となりました。次回から番組名を「京アカustream MOチャンネル」に変更してお送りいたします。内容はこれまで以上に充実した番組作りを心がけてまいりますので、ご声援よろしくお願いいたします。

大窪善人

【告知】Ustream番組、「カピバクさんに聞いてみよう!」9月号

京アカUstream ”カピバクさんに聞いてみよう!”
第5回「カピバクさんが聞いてみます!~いま就職しない働き方は可能か?~」

経済、社会からサブカルチャーまで、毎回、注目・話題のトピックについてカピバクさん(百木漠)に話を聞く本番組。
9月号は、京都アカデメイアのメンバーである浅野直樹さんをゲストに、「いま就職しない働き方は可能か?」というテーマで放送します。

・日時:
2013年9月7日(土),午後4時~

・出演:
浅野直樹
カピバクさん(百木漠)
大窪善人

放送はこちらから→ http://www.ustream.tv/channel/kyoaca
(京アカustreamチャンネル)

ぜひご覧ください。

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浅野直樹プロフィール:1982年、大阪府出身。京都大学大学院
人間・環境学研究科修了。大学在籍時より塾、予備校、家庭教
師での教歴多数。京大教育浅野塾塾長。

【まとめ】第5回批評鍋 『ゆとり京大生の大学論』

百木です。第5回目の批評鍋では『ゆとり京大生の大学論』を取り上げました。

この本は、昨年から京大で起こった「大学改革」の流れをうけて、現役京大生(ゆとり京大生)6人が自主的に企画して出来上がった本です。
拙速に進もうとしている「大学改革」(教養制度改革)に対して、一度立ち止まってそもそも大学とは何か、教養とは何か、を学生の立場から考えなおしてみよう、というのがこの本の趣旨になっています。(昨年起こった大学改革騒動の経緯についてはこちらの記事をご覧ください)
本の構成としては、ノーベル賞受賞者の益川敏英さんへのインタビューや、その他京大を中心に著名な先生方からの寄稿文などから構成される第一部と、この本を企画した「ゆとり京大生」たち自身による座談会をまとめた第二部の、大きく二つのパートに分かれています。


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当日は、この本の編集・企画者のひとりである安達千李くんがゲストで参加してくれました。このような本を作ろうと思った経緯から、作る過程での苦労話、作り終えたあとでいろいろ考えたこと、本に盛り込めなかった裏話など、いろいろと興味深い話を聞かせてくれました。
拙速な大学改革の流れにも、それに対する大学教員の反対運動にも、どちらにも違和感を感じていた安達くんたちは、仲間と連日深夜までこの問題について議論し合い、その議論の内容を本というかたちで残そう、と考えたそうです。構想から出版まで約半年間かかったそうですが、学生たちの手で企画・編集をして半年間で出版にまでこぎつけたのは、なかなか大したものだと思います。
周囲からもいろいろと反響があり、出版記念のイベントもいくかの書店や読書会などで行なわれたそうです。

読売新聞の紹介記事:「ゆとり世代 京大生の大学論…6人で編集・出版」
毎日新聞の紹介記事:「京都・読書之森:ゆとり京大生の大学論 /京都」

批評鍋参加者からの感想としては、

揶揄/自虐にむかいがちな「ゆとり世代」をポジティヴにとらえてるのが新鮮
・ゆとり世代の大学論ということで、ある種の若者論としても読めるのでは
・先生方のパート(第一部)より、ゆとり学生の座談会(第二部)のほうがおもしろかった
・「自由の校風」という京大のノスタルジーに代わる視点はあるのか?
・社会問題への接続、という観点があっても良かった
・研究者になるか・企業につとめるかというふたつの道しか提示されてないのが不満
・いろいろな先生が昔を語っているが、経済的問題についての観点(授業料・生活費など)が抜け落ちている
・高橋先生のいう大講義のよさをつきつめれば、インターネット配信になるのでは

などといった意見・批判・疑問などが出されました。

それに対する安達くんからのレスポンスやその後の議論などが気になる方はYouTubeに残されている動画などを見ていただければと思います。
後半は、京大の理念と現実の乖離、大学改革の現状、大学外での学びの可能性と課題、などにも論点が及びました。
個人的に興味深かったのは、大学外での学び(ラーニング・コミュニティ)について、安達くんから、1)場所、2)人、3)質、の3点をどう確保するのか、という課題が投げかけられたことです。この問題は、まさに「大学の外での学びの可能性」を追求してきた京都アカデメイアが抱える課題でもあります。それに対しても、参加者からいくつかのレスポンスがあったので、こちらも関心ある方は動画をご覧ください(動画後半のほうです)。

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今回の大学改革は京大だけの問題ではなく、日本の大学全体の問題へと発展しつつあります。それが悪い面だけを持っているわけでもないと思うのですが、やはりいろいろと疑問に感じてしまうところがあるのも事実です。もはやこの改革の流れは止めようがないもののようにも思えますが、この『ゆと京』本のように、それぞれの立場からこの問題について考え・議論し、声をあげるべきところで声をあげていくことはとても大切なことだと思います。
これも個人的な感想として、この本で一番印象に残ったのは、「いまこそ大学に〈ゆとり〉が必要なんじゃないか」という座談会でのゆとり大学生の発言でした。本当にその通りだなぁ、と感じました。「ゆとり乙」と揶揄されがちなゆとり世代ですが、むしろその強みを活かして、ゆるい立場から・しかし本質的な問題に切り込んでいる彼・彼女らの姿にこそ、いまの大学の希望があるのかなぁと思ったり、自分もそれに負けずに頑張らねばなぁと思った次第です。

大学のあり方、大学で学ぶ意味、大学の外で学ぶ可能性、教養とはなにか、なぜ学問するのか、などのテーマは、これまでも京都アカデメイアのイベントの中でたびたび議論されてきたことですが、今回の批評鍋でまた少しその議論を前に進めることができたかなと思っています。今後もこれらのテーマについてはいろんな機会に考え続けていくつもりです。

参考:大窪くんによる書評:吉見俊哉『大学とは何か』(岩波新書)

【告知】第5回批評鍋『ゆとり京大生の大学論』

百木です。
次回イベントのお知らせです。
今月は批評鍋ustを行ないます。

批評鍋は毎回一冊の本を決めて、その本についての感想を京アカメンバーが話し合い、それをust放送するというものです。
今回の課題本は『ゆとり京大生の大学論』です。

この本は昨年からの京都大学での「大学教養改革」の流れを受けて、
現役京大生(ゆとり京大生)たちが自ら企画・編集して出来た本です。
ノーベル賞を受賞した益川敏英先生など、著名な先生方へのインタビューや
「教養とは何か?」についての寄稿文を集めているほか、
現役京大生の座談会なども収録されており、なかなか興味深い内容になっています。
新聞記事でも取り上げられるなど、京大周辺では好評を博しているようです。

今回はこの本の編集者のひとりでもある安達千李くんをゲストに招いて、
京アカメンバーで本の感想や、いまの大学や「教養とは何か」について
皆で語ってみたいなと考えています。
時間帯は以下のとおりですので、関心ある方はぜひご覧ください。
よろしくお願いします。

<第5回批評鍋>
日時:8月16日(金)15時~17時半
課題本:『ゆとり京大生の大学論』
ustアドレス:http://www.ustream.tv/channel/kyoaca