カントと言えば、『純粋理性批判』をはじめとした重厚な仕事をはじめ、科学論、美学、政治哲学、宗教論など、今なお影響力のある知の巨人です。
しかし、そんな彼も、はじめから偉大な哲学者であったわけではありません。
本書はカントの伝記。この本を読めば、激動の歴史との格闘から紡ぎ出されるスリリングな思索、権威化される以前の、新鮮なカント像が浮かび上がってきます。
都会的な洗練
カントは、18世紀プロイセンを生きた哲学者。出身地はケーニヒスベルク(現ロシア・カリーニングラード)で、生涯のほとんどをこの地で過ごしました。
ケーニヒスベルクは、たびたび「寂れた旧都」と言われますが、じつは、経済的にも政治的にも交流ゆたかな国際都市でした。
この地で、あの『純粋理性』や『永遠平和のために』も執筆されたのでした。
あと、意外だったのは、じつは彼が、オシャレに気を使っていたということです。
貴族や商人などの上流階級とも交流があったカントは、「かなり浪費する傾向があり、金縁の上着と儀式の剣を身につけていた」「髪の毛は金髪であった」「同僚たちとは全くちがって、カントは人目を引いた」。
それは伝統や貴族風というのとは別の都会的な洗練でした。
本では、つねに節制や倹約、忍耐を説いているイメージがあったので、ちょっと意外なエピソードでした。
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