西尾維新『囮物語』の書評です。
『囮物語』の語り部は千石撫子です。このシリーズは語り部が誰であるかによって趣が大きく異なります。
千石撫子が語る『囮物語』は少女漫画的だと言えるでしょう。西尾維新『化物語(下)』書評 | 京都アカデメイア blogでは西尾維新さんが少女漫画から大きな影響を受けつつも、内面をあまり描かず怪異に委ねていると論じました。『囮物語』では内面や会話が密に描かれています。特にpp.150-183で繰り広げられる撫子と月火の会話は圧倒的です。
この場面は羽海野チカさんのお気に入りでもあります(西尾維新他『本題』(講談社、2014)pp.117-124)。上記の対談で西尾維新さんは、少女漫画では内面と発言のズレを絵で表現することが可能なのが羨ましいという趣旨の発言をしています。
羽川翼の『猫物語(白)』、神原駿河の『花物語』、千石撫子の『囮物語』と、女の子が語り部の作品は、揺れ動く気持ちをいかに整合させるかという側面が強いように思われます。