4月14日夜に熊本、大分県を中心に発生した地震は各地で大きな被害をもたらしました。また、その後も断続的な余震が続きいまだ大勢の方が避難されています。
被災された方々には心からお見舞い申しあげます。
今回は、震災に際して気になったことについて考えてみたいと思います。
それは、今回の件から、私たちの社会が抱える深い問題が見えてくるのではないかということです。
なぜ私たちは「偽善叩き」にとらわれるのか
先日21日に、10年ぶりにオープンした丸善 京都本店に行ってきました。
京都における丸善は、1872年(明治5年)に「京都支店(丸屋善吉店)」として開設され、その後一度閉店した後、1907年(明治40年)に三条通麩屋町に再開設されました。
http://www.junkudo.co.jp/mj/news/detail.php?news_id=77
丸善は、梶井基次郎の小説にも登場することで有名で、2005年に閉店した時には、小説の内容にちなんでお客さんが”レモン”を置いていったそうです。
是枝裕和監督の映画『誰も知らない』(2004年公開)は27年前の1988年に起きた「巣鴨子供置き去り事件」に取材した作品です。今回はこの作品から「幸いとは何か」について考えてみたいと思います。
*
物語は、ある親子(母けい子と息子の明)がアパートに引っ越してくるところからはじまります。大家には「夫が単身赴任で息子と二人で住む」と伝えるが、じつは4人兄妹で、持ってきたスーツケースには幼い次男と次女が隠れていました。
子供たちはそれぞれ父親が異なり、出生届もなく、学校にも通わせてもらっていません。昼間は母が仕事に出かけ、兄妹の面倒をみるのは長男の明の役目です。他の兄妹は家の中で見つからないように遊びます。そんなある日、けい子は新しい恋人ができたと言ったまま家に帰らなくなってしまう。そこから、子供たちだけの生活がはじまります。 続きを読む
トマ・ピケティ『21世紀の資本』を読了しました。kindle版が安く手に入るのとより原文に近いだろうという理由で英語版を読みました。
内容を各章ごとに忠実にまとめてわかりやすく解説したサイトがあまり見つからなかったので、自分用のメモも兼ねてここに作ってみました。
図表や目次はピケティ『21世紀の資本』オンラインページを参考にさせていただきました。
・方法論ーー小説からの引用と統計的なデータの両方
・先行研究とのつながりーーマルサスの人口論、リカードの古典派経済学(希少性)、マルクスの資本蓄積、クズネッツ曲線(資本主義経済の発展は最初格差を拡大するが後に格差を縮小させる)
・考察対象ーー歴史的・地理的には18世紀以降のヨーロッパを中心としつつ、全歴史、地球全体も考慮に入れる
・国民所得=国内生産高+外国からの純収入
(生産という観点から見た式)
・国民所得=資本所得+労働所得
(資本と労働の分割から見た式)
・資本…所有権の対象となる全ての物
(持ち家の家賃相当や特許なども含むが、奴隷制でない限り人的資本は含まない)
・国富(国家財産、国家資本)=私有財産+国有財産
(財産の所有者から見た式)
・国富(国家財産、国家資本)=国内資本+純外国資本
(資本の居所から見た式)
・α=r×β
α…国富に占める資本収益の割合
r…資本収益率(利子率、地代の率、配当の率…の平均)
β…資本/所得
例)一人当たり資本が2400万円、一人当たり所得が400万円ならβ=2400万/400万=6
例)r=5%、β=6ならα=5%×6=30%
・世界の格差――月2万円から月40万円まで
・生産高と人口の成長率
(それでも累積的な成長は大きくなる、複利のすごさ)
例)年率1%の成長で30年後には全体の規模が約35%増加する(1.01^30=1.3478…)
・人口が増えると相続が分割されるので格差は縮小する
・購買力の上昇については一律に言えない
購買力上昇の平均<工業製品生産
購買力上昇の平均≒食料品
購買力上昇の平均<サービス産業
⇒サービス産業の比率が高まる(生活の多様化)
・18〜19世紀は物価が安定していた(ジェーン・オースティンやバルザックの小説)
・20世紀中頃のインフレ
・国家資本=農地+住宅+他の国内資本+純外国資本
(農地が減って他の国内資本が増えている)
・国家資本=私有財産+国有財産
(国有財産の割合は時代によって変化している)
・国の借金はインフレによって小さくなる
(国債を持っている人がインフレで損をする)
・ドイツの特徴は株主だけではなく多様な利害関係者かいるライン資本主義
・アメリカは新世界なのでヨーロッパより資本の変動が小さかった
・カナダは外国資本を割合が高かった
・奴隷制度のもとでは資本が大きくなる
・β=s/g(貯蓄率/成長率)とも表すことができる
・先進国では1970年代以降にβ(資本/所得比率)が再び高まってきた
・貯蓄率は家計と企業の両方
・資本分配率:労働分配率=α:1−α
α…国富に占める資本収益の割合
例)30%:70%
・r(資本収益率)は19世紀の5%から現在の3〜4%まで少し低下した
・資本が大きくなると資本の限界生産性は低下するが、βの増加を上回る速度で低下するとは限らない
(資本の限界生産性が低下して総体としてのrが小さくなってもそれ以上にβが大きくなればα(=r×β)は大きくなる)
・α(国富に占める資本収益の割合)は不変ではないし、g(成長率)がゼロになることもない
・ヴォートラン(バルザック『ゴリオ爺さん』の登場人物)の教えーー働くよりも結婚して相続するほうが金持ちになれる
・労働よりも資本のほうが格差が大きい
・社会的な階級ではなく度数の階級で考える
・世襲型の中流階級の出現
・2つの世界大戦、世界恐慌、税制が理由で格差が縮小
・不労所得生活者(金利生活者)の社会から経営者の社会へ
・格差拡大が経済危機を招いた(購買力の低下)
・賃金格差は技術を教育が追いかけるという競争から生じるという説
⇒これだけでは説明にならない
・制度の役割(最低賃金など)
・アメリカの最近の格差拡大は高額報酬経営者のせい
・1900年〜1910年にはヨーロッパがアメリカよりも不平等だった
・途上国も同じくらい不平等である
・限界生産性という概念は幻想である(経営者の限界生産性は測定できずお手盛りの危険がある)
・ベル・エポック期のヨーロッパでは格差が大きかったが、20世紀前半に格差が縮小した
・アメリカではその変化が緩やかだった
・r>gなので格差が拡大する
例)r=5%、g=1%であれば、r(利子、配当、地代…)のうち1/5を再投資するだけで資本が維持される
・r>gを説明する一つの理論は時間選好性(一年後の105円より今日の100円)だが、それだけでは説明しきれない
・民法の相続ルールによっても影響を受ける(家督相続か均等相続か)
・現在ではなぜベル・エポック期ほどまでに格差が拡大していないのか
⇒時間がそれほど経っていないから、累進税などがあるから、成長率が高いから
・by=μ×m×β
by…ある年のフローのうちで相続フローが占める割合
μ…死亡時の平均財産(全個人の平均財産を1とする)
m…死亡率
β…資本/所得
例1)μ=1、m=2%、β=6ならb=12%
例2)μ=2、m=2%、β=6ならb=24%(死亡時の財産が多い)
例3)μ=0、m=2%、β=6ならb=0%(死亡時に財産がない)
・mは2000年あたりを境に上昇に転じる
・死亡が遅くなれば財産も多くなる(mが低下してもμが増大する)
・μは1を超えている
・1890年〜1970年を除いて相続のほうが有利
・不労所得生活者(金利生活者)と経営者のどちらが有利かは簡単に計算できる
例)資本所有の上位1%が全体の60%の資本を所有していて、給与所得の上位1%が総所得の6%を取っているなら、資本所得:給与所得が1:3であっても、前者は0.25×0.6=0.15、後者が0.75×0.06=0.045と前者のほうが有利である
・小説などに描かれる理想像が不労所得生活者(金利生活者)から能力主義的な人物に変化してきた
(ただし相続財産がなくなったわけではない)
・資本収益率の格差ーー資本が大きいほどリスクを取れるし投資アドバイスも手に入りやすくなるので収益率も大きくなる
・フォーブス紙に載っているような億万長者が持っている資産の割合が大きくなっている
・億万長者には相続人もいれば経営者もいる
・大学基金の収益は大きい(一流のファンドマネージャーに相談しているから)
・インフレは資本収益をなくすのではなく、資本収益の分布を変える
・政府系ファンドには不確定な部分が多い(政治も入り込む)
・どこかの国が世界を支配するというよりも、各地の金持ちが世界を支配する
(多くの国で資本収支がマイナスである、つまり過少申告である)
・2008年の危機が大恐慌にならなかったのは政府や中央銀行が流動性を高めたおかげ
・20世紀に国家財政が大きくなった(教育、年金、医療など)
・教育制度が社会移動可能性をそれほど促進していない(高い大学の学費など)
・賦課方式年金の問題ーー複雑である、急には変えられない
・新興国は社会国家になっていない
・累進所得税は世界大戦期に考案され、しばらくは格差の縮小に寄与したが、現在では危機に瀕している
・役員報酬が爆発的に増加したのは所得税率が下がったため
・まずは資本の透明性を高めることが大事、銀行情報の自動送信
・資本税で所得税、相続性、固定資産税を補完できる
例)100万ユーロ(1億3500万円)以下は0%、100万ユーロ(1億3500万円)〜500万ユーロ(6億7500万円)で1%、500万ユーロ(6億7500万円)以上で2%という資本税で、ヨーロッパのGDPの2%の税収がある
・資本税は、私有財産の否定よりも、協働を妨げないという点で効果的
・保護主義、資本統制、資源収益の分配、移民は資本税よりも効果が限定的
・公的債務を資本税で返済するとしたら、100万ユーロ(1億3500万円)以下は0%、100万ユーロ(1億3500万円)〜500万ユーロ(6億7500万円)で10%、500万ユーロ(6億7500万円)以上で20%という一回の資本税で可能
・インフレで公的債務を帳消しにすることもできるが、インフレをコントロールできないおそれがある
・中央銀行は貸し手の頼みの綱
(そうして企業を救うことがよい結果になるか悪い結果になるかはわからない)
・キプロス危機では資本税が徴収されたが、事前の資本情報が不十分だった
・ユーロについてはヨーロッパ全体で取り組まなければならない
・資本蓄積に関して、理論的にr=gとなり得るが、どのような水準がよいのかは良識に沿って決めるしかない
(現在にどれくらい消費して、将来にどれくらい残しておくか)
・そのためにも透明性を高めて資本を民主的にコントロールすべき
・r>gという矛盾には資本税で対処する
・政治歴史経済学を志向する
もっと詳しく知りたい点があればぜひ本文に当たってみてください。
先日、應典院(おうてんいん)が主催するイベント、1995-2015ニッポン宗教、死と再生の20年~お寺Meeting特別編~に行ってきました。じつは以前から気になっていたのですが、今回はじめて訪ねました。
百木です。
先日、出町柳にできた新しい「知的交流」スペースである、GACCOHに行ってきました。
僕がGACCOHを知ったきっかけは、大学の掲示板に貼られていた、ゲンロンスクールの中継イベントの告知ビラでした。ゲンロンスクールとは、東浩紀さんが始められたゲンロンカフェで行われている連続講座で、これを全国各地のカフェなどで中継するイベントが行われています。そのうち関西での中継が行われているのがGACCOHで、誰でも1500円(友達を連れてくれば1000円!)で参加できます。
僕は第2回目の東浩紀さんの講義「『一般意志2.0』とその後」と、津田大介さんの講義「ウェブで政治を動かす!実践編」に参加してきました。どちらの講義も面白い内容だったのですが、さらに良いなと思ったのは、東京にあるゲンロンスクールと全国各地の中継スペースがウェブ放送で繋がっていて、講義後に中継スペースからも講師に質問ができるということです。これまでの公開講座などは、現地に行かなければその講義を聞いたり講師に質問したりできなかったところが、現在ではインターネットを使って、別の場所にいてもリアルタイムで授業を聞き、質問をすることができる。僕のような地方に住む者にとってはありがたいサービスです。これはまさに新しい「ガッコウ」の仕組みだなと思いました。
GACCOHのスペースはとてもキレイでオシャレでした。管理人さんが自分の手で改装したそうで、カフェのような心地よい空間でした。京都アカデメイアに足りないのは、このオシャレさとポップさだなぁと感じました(笑)京都アカデメイアのustream放送を行っている部屋などは、もっとごちゃごちゃとしていて、いわば「学生寮」や「部室」のようなスペースです。GACCOHは、一階がイベントスペース、二階がustream放送や本置き場のスペース、三階が居住スペース(三名ほどが暮らしている)になっているそうで、イベントスペース+情報発信スペース+シェアハウスという最先端の流行を押さえた素敵空間だなと思いました。ちなみにホームページもオシャレです。
ゲンロンスクール終了後は毎回、参加メンバーで感想を話しあうustream放送をやっているそうで、そういうところもいいなと思いました。ust放送は毎回、関西クラスタのメンバーが視聴しているらしく、和気あいあいとした雰囲気でした(僕もついでに出させて頂きました。京都アカデメイアとはまた違った雰囲気の会話ができて楽しかったです)
GACCOHでは今後もゲンロンスクールの中継イベントを続けていくほか、勉強会・読書会などの開催や、日曜日の英会話レッスン、関西クラスタの集まりなどが定期的に行われているようです。関心のある方はチェックされてみてはいかがでしょうか。GACCOH LIBRARYの試みも良いですね。
お互い近い場所にいて同じような関心を共有しているわけですし、京都アカデメイアとのコラボイベントなども企画してみても良いかもしれません。僕もまた時間のあるときに顔を出させて頂こうと思います。