おすすめの本」カテゴリーアーカイブ

阿部祐太『バウハウスとはなにか』 :モダニズムの多様性とその挫折

大窪善人


バウハウスとはなにか

阿部出版(2018年02月21日)

 
「バウハウスへの応答」展が、京都国立近代美術館で始まりました。
1919年にドイツ=ワイマールで設立された総合芸術学校・バウハウス。来年の100周年にあわせて開催される「バウハウス100ジャパンプロジェクト」の一環だということです。

「バウハウス」という名前自体は、日本でもよく知られています。しかし、それが何かと問われると、意外と難しいのではないでしょうか。「バウハウスとはなにか」。バウハウスとは「実はよくわからないものだ」というのが、著者の”とりあえずの”答えです。では、なぜバウハウスはわかりにくのでしょうか。
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百木漠「アーレント「政治における嘘」論から考える公文書問題」

大窪善人




(1970年01月01日)

 

「現代思想」に掲載されている百木漠さんの論考を読んだので、ご紹介したいと思います。

連日ニュースで報じられた森友・加計学園の文書改ざん、南スーダンPKOの日報隠蔽をはじめ、ここ数年、日本の公文書管理がいかにお粗末なものだったかが露呈しました。

民主政治の原則としては、国政が主権者=国民の信託である以上、政府の行動は原則公開され、チェック可能である必要があります。そして、公文書が、その貴重な手がかりとなる”資源”であることは、言うまでもありません。

今後は、民主主義を健全に機能させるためにも、政治家、官僚は勿論、国民レベルでも公文書管理の重要性を再確認し、適切な運用がされるよう監視していかなければならないでしょう。

 
伝統的な嘘と現代的な嘘

ところで、筆者は、この公文書問題が、哲学的に深刻な問題をも含んでいると指摘します。では、その問題とはいったい何なのでしょうか?
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見田宗介『現代社会はどこに向かうか』:ユートピアは”今ここ”に

大窪善人

 
「社会学(sociologie)」という学問の命名者は、19世紀の思想家、オーギュスト・コントですが、彼の有名なことば、「予見せんがために見る」には、「進歩」や「成長」の名の下に、ダイナミックに変動する”近代”という新しい時代が、一体どこへ向かうのかという切実な問いが込められていました。

それから2世紀後の問いとは、”近代の運動が行き着くところまで行き着いた現代社会が、これからどこへ向かうのか”、ということです。
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堀内進之介『人工知能時代を<善く生きる>技術』

大窪善人




(1970年01月01日)

 
スマートフォン、スマート家電、自動運転など、人工知能(AI)の発展が目覚ましい。だが、これらの新しい技術は、私たちの生き方にどのような影響を与えるのか、それが本書のテーマです。
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平成とはどういう時代だったのか?

大窪善人




(1970年01月01日)

 
平成が終る。今月、政府は平成31年4月に天皇の譲位と改元を行うことを決定しました。
それに伴い、メディアでは平成を振り返る特集を組んでいます。ところで、その年表を見て感じたのは、「平成」という時代が、ひとつのまとまりとしてイメージできにくいということです。30年間のさまざまな事件、出来事を並べても、たんなる羅列というか、なんとなくフラットな印象があるのです。
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ヤマザキコレ『魔法使いの嫁』:聖なる儀礼がむすぶ約束

大窪善人




(1970年01月01日)

 
“儀礼”とは、単なる飾り付けではなく、人と人ととを結びつける連帯の核である。こう主張したのは、フランスの社会学者 E.デュルケームです。
しかし、なぜ儀礼が重要なのでしょうか。

現在、TVアニメ放映中のマンガ『魔法使いの嫁』がヒントになります。
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G・バタイユ『魔法使いの弟子』

大窪善人




(1970年01月01日)

 
「魔法使いの弟子」は、フランスの作曲家 ポール・デュカスの管弦楽曲。
ある日、雑用を言いつけられた魔法使いの弟子が、師匠のいぬまに水汲みの仕事をさせようと、ほうきに魔法をかける。しかし、見習いは魔法を解く呪文を知らなかったので、部屋はみるみる水であふれて大惨事。そこへ魔法使いが戻ってきて、辛くも救い出された。

バタイユは、恋愛について書いたこの本に〈魔法使いの弟子〉と名づけます。でも、どうしてなのでしょうか?
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大澤真幸『憎悪と愛の哲学』:敵が友になるとき

大窪善人




(1970年01月01日)

 

愛と憎悪は別のものではない、むしろ、「憎しみがあるからこそ愛がある」。たびたび小説や映画などで描かれるテーマです。むしろ、陳腐と言ってもよいでしょう。が、なぜそうなのか。なぜ、”愛”が正反対の”憎しみ”でもあるのか、理由はよく分かりません。
このパラドックスへの理論的な解答にチャレンジするのが、本書です。
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ジョセフ・ヒース『啓蒙思想 2.0』:意志の弱さをコントロールする知恵

大窪善人

 
フェイク・ニュースがメディアを席巻し、安直なメッセージやポピュリズムなど、真実よりも信じたいフィクションがまかり通る現代。
理性による社会の発展を説く、18世紀以来の「啓蒙のプロジェクト」は、すっかり時代遅れになってしまったのでしょうか。

本書は「理性的に考えろ」といった、ありがちな啓蒙書ではありません。近年の認知科学の発展をふまえて、啓蒙のバージョンアップを図っています。
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