おすすめの本」カテゴリーアーカイブ

野村幸一郎『京アニを読む』


 

 

 
 

 
 
 

京都アニメーションのスタジオ放火事件から3ヶ月が経ち、市内では今週末、亡くなった社員を追悼する「お別れ そして志を繋ぐ式」が開かれ、関係者や多くのファンが訪れました。
あらためて、亡くなられた方々の死を悼むとともに、傷ついたすべての方の傷が癒えることを祈るばかりです。

教養としてのアニメ

今回の事件で多くの人が、とりわけ若い世代が大きなショックを受けた理由は、同社の手掛ける作品が、受け手である彼女/彼ら、あるいは私たちの生活の中で日々感じている葛藤や悩み、苦しみに届き、ヒントを教えてくれるものだったからではないでしょうか。 続きを読む

立川武蔵『仏教原論 ブッディスト・セオロジー』:仏教のアップデートに向けて

 

 

 

 

 

 

 

 

トリヴィシャ(三毒)

激変する現代社会において私たちはどう生きるのか? この本質的な問いにかんして、椎名林檎の近作「鶏と蛇と豚」の回答はじつに鮮烈でした。

タイトルにある三匹の動物は、それぞれ人間の根本的欲望を表すといいます。
MVでは、半獣となった椎名林檎が東京に降り立った三獣(鶏・蛇・豚)を掌握するという筋書。作品のメッセージは、欲望の徹底肯定であり資本主義経済の全面肯定です。★1

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千葉雅也『意味がない無意味』:この世界は無意味なのか?

「現実はなぜこのようなのか」「なぜ世界にはこのような不条理があるのか」

際立って深い悲嘆や喪失を経験したとき、私たちはこのような感情を抱く。この根源的な問いにたいして、人文学は何か手がかりを与えてくれるのだろうか。

現代思想界で注目されている議論、通称「思弁的実在論(SR)」の紹介者である著者は、世界が現にそうであることの理由、”意味”の渇望にたいして、あえて”無意味”、「意味のない無意味」をキーワードに考える。

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名著再見!#02 G・バタイユ『無頭人・アセファル』

「異端の哲学者」、「生と死とエロティシズムの思想家」として語られるバタイユ。その一方で、フランスの哲学者ミシェル・フーコーは、彼をして同時代のもっとも重要な思想家であると評する。

本書は、そんなバタイユが中心となって設立された、秘密結社「アセファル(ACEPHALE)」の同名機関紙の論文をまとめたものだ。雑誌には彼をはじめ、芸術家のアンドレ・マッソンやクロソフスキー、カイヨワらが参加。第1号から5号(1936年〜39年)まで刊行された。

 

アセファルとは何か?

アセファルとは、バタイユが幻視する怪物の名である。 それは両手に短刀と燃えさかる心臓を握りしめ、腹からは腸を露出している。そして最大の特徴は、頭がないこと(無頭=ア・セファル)である。

突如稲妻のように(独断的に?)導入された謎の巨人・アセファル。バタイユは、”これこそ真なる人間のイメージである”と語るのだが、それは一体、どういうことなのだろうか。

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名著再見!#01 G・ジンメル『愛の断想/日々の断想』

いいアイデアが出てこないとき、ふと断片的な文章がヒントになることがあります。

本書は、近代社会学の三巨人ウェーバー、デュルケムと並ぶ、ゲオルグ・ジンメルの遺稿集です。ほかの二人に比べて、ジンメルを一言で語るのはさらに難しいのですが、独特の鋭い感性をもった人だったことはたしかです。

ちなみに、邦題にある「断想」をgoogle翻訳にかけると、なぜか”Delusion”「妄想」と出てくるのですが、でも、あながち間違いでないのかもしれません。しかし、短めの格言調の文章には、独特の力強さがあります。

では、その一部を紹介します。

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ユヴァル・ノア・ハラリ『21世紀のための21のレッスン』

大窪善人

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あけまして おめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
 
一年のはじめには、少し大きな視点で捉えてみるのもいいかもしれません。

本書は『サピエンス全史』『ホモデウス』に続く、ハラリの最新作です。

前作までで人類誕生の歴史〜未来の歴史が描かれましたが、前作まで読んだ方は、「じゃあ、結局どうすればいいの?」と感じたのでしょうか? 今回はいよいよ現在の出来事が語られます。

現代を特徴づける要素、まず挙げられるのはテクノロジーの発展です。最近よく話題になる人工知能(AI)や情報技術、あるいは脳研究や生命工学の発達は、私たちの生活を大きく変えつつあります。
では、その変化は、社会全体や私たち一人ひとりの人生にとって、どのような”意味”があるのか? それはほんとうに幸福なことなのか? というのが著者の問いです。 続きを読む

『インスタグラムと現代視覚文化論』:インスタグラムに崇高はあるか?

大窪善人

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おそらく本邦初となる、インスタグラムについての本格的な研究書が出ました。
本書は、ロシア出身のメディア理論家であるレフ・マノヴィッチの論文パート(左開き・横書き)と、それを踏まえた日本の書き手による論集パート(右開き、縦書き)からなるユニークな構成になっています。
 

インスタグラムの魅力とは

2010年に登場したインスタグラムは、いまや世界中で4億人以上のユーザー数に達し、毎日8000枚の写真がシェアされているといいます。それほどの人気を集めている理由とは、何なのでしょうか。 続きを読む

阿部祐太『バウハウスとはなにか』 :モダニズムの多様性とその挫折

大窪善人

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「バウハウスへの応答」展が、京都国立近代美術館で始まりました。
1919年にドイツ=ワイマールで設立された総合芸術学校・バウハウス。来年の100周年にあわせて開催される「バウハウス100ジャパンプロジェクト」の一環だということです。

「バウハウス」という名前自体は、日本でもよく知られています。しかし、それが何かと問われると、意外と難しいのではないでしょうか。「バウハウスとはなにか」。バウハウスとは「実はよくわからないものだ」というのが、著者の”とりあえずの”答えです。では、なぜバウハウスはわかりにくのでしょうか。
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百木漠「アーレント「政治における嘘」論から考える公文書問題」

大窪善人

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「現代思想」に掲載されている百木漠さんの論考を読んだので、ご紹介したいと思います。

連日ニュースで報じられた森友・加計学園の文書改ざん、南スーダンPKOの日報隠蔽をはじめ、ここ数年、日本の公文書管理がいかにお粗末なものだったかが露呈しました。

民主政治の原則としては、国政が主権者=国民の信託である以上、政府の行動は原則公開され、チェック可能である必要があります。そして、公文書が、その貴重な手がかりとなる”資源”であることは、言うまでもありません。

今後は、民主主義を健全に機能させるためにも、政治家、官僚は勿論、国民レベルでも公文書管理の重要性を再確認し、適切な運用がされるよう監視していかなければならないでしょう。

 
伝統的な嘘と現代的な嘘

ところで、筆者は、この公文書問題が、哲学的に深刻な問題をも含んでいると指摘します。では、その問題とはいったい何なのでしょうか?
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