ブラック企業の話ではありません。
前回は「哲学」が「フィロソフィ」から翻訳されたときに一番重要な要素が抜け落ちてしまったという話をしました。
哲学とは? :「希み」が消えて「哲学」が生れた
では、なぜそんなことになったのでしょうか?
当時の日本はまだ鎖国でしたが、西洋諸国の力に対抗するには一刻もはやく近代化する必要がありました。最先端の工業技術を取り入れると同時に、哲学を賢い国民を育て上げる政治の道具として輸入したわけです。
思考と論理とのちがい
哲学について深く考えた人物にハイデガーがいます。彼は「考える」ことは「感謝する」ことだと語りました。どういうことでしょうか。
じつは「思考」”think, denken”は「感謝」”thank, danken”のように、英・独語ともほぼ同じつづりです。これは偶然ではなくもともとラテン語からの派生語だからです。
この「感謝としての思考」と対になるのは「論理としての学」です。よく学問名の最後は”~logy”となっています。Biology 生物学、Ecology 環境学、Anthropology 人類学、Agrology農学、Sociology 社会学、Thechnology 技術・・・
logos ロゴスの特徴は、抽象的な論理性(ロジック)にあります。1+1が2であるように、正しい答えは誰が解いて同じになります。つまり、論理は私たちの意識や行動とは無関係に成り立つということです。
しかし、ハイデガーは、決して「思考」が「論理」へと回収されてはならないと主張しました。背景には西洋哲学を立て直そうとしたフッサールの影響があります。
日本人は「フィロソフィー」を「役に立つ」技術、論理として取り入れることには非常に成功しました。ですが、翻訳し損ねたコア、言わばそれが「感謝としての思考」だったのです。
では、「感謝」とは一体何なのか、誰に対するものなのでしょうか。
その話はまた次回に。
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